コンサドーレ札幌サポーターズブログ

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2009年11月19日

第10回全国ホームタウンサミットin新潟 ご報告その2

◆講演◆
演題:『地域密着とクラブ経営優先順位』
講師:Jリーグ監事 ㈱湘南ベルマーレ代表取締役 真壁 潔 氏

議事録は主催者をお任せするとして、ここでは私の主観をもとに大体の流れを留めておこうと思います。テープに録音したわけではないので不正確な部分もあるかもしれませんがご容赦願います。


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ホームタウンサミットの記念すべき第1回目は平塚で開催されたのですが、講演の始めはそのホームタウンサミットの生い立ちが話題となりました。

その頃の湘南(平塚)といえば日本代表に中田英寿やロペスらを輩出し、名門と呼ばれるにふさわしいチームだった。ところが当時の親会社フジタの撤退により、急転直下で存亡の危機に立たされた。このままでは消滅は間違いない。ではなぜ今ベルマーレが存在しているか。真壁氏によれば、経営危機を迎えた2チーム目だったことが幸いしたようである(1チーム目は横浜フリューゲルス)。一気に2チーム消滅というのはバツが悪いとリーグが思ったかどうかは分かりませんが、ともかくベルマーレは約1年の猶予を貰った。

さて、猶予を貰ったは良いが、その1年間でチームの存廃を決めなくてはならない。仮に存続させるとすれば従前の親会社はもう無い。一方で当時は中田らの代表人気を頼りにしていた部分があり、例えばクラブが選手とサポーターの交流のような企画を持っていっても親会社の反応は「・・・」。しかし事情が一転し、これまで重視されてこなかった「地域密着」無しには存続できない状況に追い込まれた。じゃあ今後に向けてベルマーレをどうしていくのか。地域密着のノウハウなんて無い。そうだ他県には参考になる良い例を持っている所もあるはず。じゃあ皆さんに集まっていただきましょうと、これがホームタウンサミット誕生の大まかな流れのようです(あくまで「大まか」です)。そしていざ集まってみると、遠方のチームはおろか同県隣県のチームであっても互いの活動が全然分からないものだということになった。これは良い機会ですねということになって、現在に続いているという感じのようです。



「生き残るために」
経営危機の修羅場に直面した経験から、真壁氏がチーム生き残りのために必要なこととして挙げたのは、

「こういうチームだ」と外に向かって言える理念の確立 ~「百年構想」に対する湘南なりの答えを出そう。

ということ。確かに時間も手間もかかるが、大きなチームには真似できないことを地道にやっていこうということだった。

現在湘南が取り組んでいる事業を頂いた資料から抜粋しました。
・ 小学校体育巡回事業
・ ビーチバレーチーム
・ トライアスロンチーム
・ ソフトボールチーム
・ Fリーグフットサルチーム
・ ビーチサッカー
・ NIKKEI BELLMARE
(南米パラグアイに設立したサッカーチームで、資料によれば現在4部所属。だから ”NIKKEI” は「日系」であって、どうやら日本経済新聞とは関係無いらしい)
・ 健康づくり教室
・ 産業能率大学講座と選手人材育成支援

なおサッカーのユースについては、U-15から下はNPO法人化し、㈱湘南ベルマーレとしてはトップとU-18のみを傘下に置く形です。上記のサッカー以外の競技についても基本的に全てNPO法人の管理下としている。これには経営や成績とは一線を画した所から地域スポーツの振興を目指す狙いがある。

この他にも、講演の中で取り上げられたのが、子供を対象にした海でのスイミング教室。海で泳ぐのは危ないからと、この手の教室は意外に無いのだそうで、毎年800人くらいの参加者があり、わざわざ千葉から交通費かけて来る子もいるとのこと。

もう一つ印象に残ったのが、地元陸連との子供駅伝大会の共催。予算等の問題で開催が難しくなっていたこの大会に、自分らも予算が無い中あえて「一緒にやりましょう」と名乗りを上げた。今では「ベルマーレカップ小学生駅伝競走大会」として、Jリーグとベルマーレの旗を掲げて堂々開催されているようですが、これが契機となって陸連との関係に変化が起こった。平塚競技場はトラック付きですから、これは厚別でもそうですし他のどこでもそうでしょうが、場所の取り合いがあります。それまではいわば「競争相手」だったのが、今では相手方の深い理解のもとに湘南が優先的に使えるコンセンサスが出来上がった。



指定管理業務
湘南には資産は無い。しかし普段の練習からイベントまで、とにかく「何かをやる」ためには拠点が必要。ではその拠点をどう確保するか。まず考えられるのが公共施設の利用であるが、何も実績が無い中で自由に使えるわけが無い。自分たちから市民の中に入っていって実績を重ね、市民の理解を深めることで先方(行政)との距離を少しずつ縮めていくしか無い。

取り組み例の一つが「オープンフィールド」。要は練習場の芝生を地元の幼稚園など向けに無料開放し、好きなだけ遊ばせる。天然芝だし滅多なことでは怪我をしない。幼稚園児や小学校低学年くらいであれば、いくら走り回っても芝生への影響はほとんど無い。

そのような活動から市民の理解を得る努力を重ね、ゆくゆくは「管理を任せられる組織」と認められるとのこと。現に資料によれば湘南は平塚市、大磯町、小田原市で4施設の指定管理業務を担っています。
(講演の中で、その後1施設増えて現在5施設だという話があったと記憶していますが、もし記憶違いだったらごめんなさい)



経営の優先順位は?
よく「身の丈に合った経営」という言葉を聞くが、じゃあ自分らにとっての「身の丈」は果たしていかほどなのか? 自分はチームを代表する立場だが、その答えは正直言って分からない。ただ、日々の仕事の中で、チームには無数の「穴」(=ヒト・モノの至らない部分)がある。その穴を少しずつ埋めていく作業が「経営」ではないかと思う。

何を優先すべきなのかはチームによって異なる。チームの生い立ち、置かれた環境、方針、手法その他数々の要素によって決まってくる。だから自分が「これが答えだ」と示すことなどできない。経営者にとって、チームにとって永遠の課題であろう。



結び
Jリーグは大きな曲がり角に来ている。Jリーグの、サッカーの地位が低下してきているのではないか。地上波のテレビを見ても、サッカーに割かれている時間が最近少なくないか? 私たちの日常生活の中にサッカーの話題はあるか? 例えばドラマの中で、有名俳優がサッカーをやっているシーンを見るか?

代表ですら集客・視聴率で苦戦している。そして近い将来、J2とJFLの入れ替え制が始まる。

これからは新時代であり、淘汰の時代である。生き残れないクラブもあるのではないか。

苦しい時代の中で長く続いていくためには、企業依存・行政依存からの脱却は必須。それができないクラブは、誠に残念ながら悲劇的な結末を迎えるのではないか。

満員のスタジアムがクラブを成功させる。湘南も中々満員にはできていないが、地道な努力を重ねる以外に道は無い。

勝てていれば観客も少しは増えるだろう。でも勝てばそれで良いのかといえば決してそれだけではない。
勝敗を超えた部分に価値を見出す人を増やさないと、経営は決して安定しない。



サポーターに向けて
勝てないからシーズンチケット買わなくなるの? それはおかしい。チームのことを大切に思うなら、ツラい時こそ「チケット買おうよ!」と声を上げよう。




非常に感銘を受けた講演でした。天皇杯優勝から僅か5年で存亡の危機に見舞われ、そこからチームの先頭に立って這い上がってこられた方のお話ということで、上辺だけではない実感のこもった話を伺えたと思っています。NPO法人の話については、これが札幌に導入できるかどうか、仮に導入できるとしてもその形が札幌にとって良いのかどうか私には判断しかねるので簡単に触れる程度としましたが、地域に根ざすという理念が広く理解され易くなるだろうとは思います。一方で最近は変なNPOもあるやに聞きますから、仮にやるとすればある意味運営会社以上に経営の透明化が求められる気もします。

行政の理解を得るための努力云々という部分は、私は非常に耳の痛い話と感じました。よく我々は「サッカー専用スタジアムが欲しい」と言います。言ってしまいます。札幌ドームはピッチが遠いし、そもそも野球その他のイベントとの兼ね合いがある。厚別は大切な聖地であるけれども、宮の沢に比べればピッチが遠いし、地下鉄駅から歩けば20分もかかるし施設も老朽化が目立つ。だからゆくゆくは我々だけのスタジアムが欲しい、と。

しかし、わが身を省みて、果たしてコンサドーレは市民の理解を得られているのでしょうか? 億単位の建設費用が要るだろう専用スタジアムが欲しいと言えるだけの地域貢献を普段ちゃんとやっているのでしょうか? 今回の講演を聞いて、当分は専用スタジアムなど口が裂けても言えないと私は思いました。

専用スタジアムは単なるサポーターのワガママか、それとも地域に必要なものなのか、それは札幌市民(仮に北海道から予算が出るとすれば道民全部)の多数が決めることであり、我々が決めるのではありません。必要なものと認めてほしいならば、クラブは多数の市民に建設を認めさせるだけの「何か」を先ず提供しなければなりません。コンサドーレも確かに何もしていない訳ではありません。スキースクールやら環境への取り組み云々。しかし、このご時世に何億ものお金を引き出すには、クラブの働きがまだまだ不足と認めるほか無いと私は思います。あまり広げ過ぎて管理しきれなくなるのも問題だけど、その存在を多数に認めさせようと思うならば、様々な取り組みを、地道に、継続していくほかに道は無いと思います。

湘南の陸連の例が非常に印象に残りました。金で解決するわけではなくゴリ押しするわけでもなく、また影でコソコソ工作するでもなく、ギブアンドテークの関係の中で相手方の深い理解を得られれば、妬み恨みを買わず無理のない形でスタジアムが手に入る・・・かどうかは分かりませんが、練習場(特に秋冬)の確保やその他諸々、これまで苦労してきた様々な問題の一部分だけでもそれで解決できるなら、我々は、チームは、一肌も二肌も脱ぐべきではないでしょうか。また札幌の場合は宮の沢に立派な施設があるのですから、チーム優先は当然としても、自分たちだけで使っていて本当に良いのか、これもよく考えてみるべきです。現状の1面だけでは芝の管理が難しいと思いますが、2面に増やそうと思ったら当然タダでは増えないわけです。

「これからは淘汰の時代」という言葉は衝撃的でした。他クラブに比べればマスコミ露出や入場者数など、札幌は恵まれた方なのでしょう。しかしそれだけに「企業依存」とか「行政依存」という言葉にも残念ながら後ろめたいものを感じます。過去は過去として、これからは北海道の企業や行政に対して公平・冷静に対応できるチーム体制を可能な限り早期に築いてほしいと、その点を一番強く感じました。

そして、苦しい時こそ、サポーターが強い意気込みを見せてやること。これは忘れてはいけませんね。

(続く)


posted by Gekitei |21:40 | 第10回全国ホームタウンサミットin新潟(11月14日、15日開催) | コメント(2) |