2006年06月18日

勝つ「しかない」の発想

今夜は日本代表のW杯2戦目。
しかしすでに、それが実質最後の試合になりかねない状態に
なっている。

選手も、サポも、そして一般の人々も、
「勝つしかない」の大合唱。テレビのサッカー番組でも、
番組の締めはどこも判で押したようにこの言葉だ。
新聞の記事もご同様。

だが、どうにもオイラは違和感を感じずにいられない。

そもそも、この「~しかない」という、他に選択肢のない
状況を当事者に押しつけるのは、極めて無責任な外野の
勝手な言い草であり、そこまで当事者を崖っぷちまで
追い込んで恬としている心理が、非常に醜く感じる。
苦しさつらさを当事者に押しつけ、自分たちは美味しくて
楽しい思いをしたいというわがまま、その責任は一切
自分たちは負わないけど、負けたら文句は言うよ、という
さもしさを感じてしまうのだ。

まあ、それを突き詰めてしまえば、札幌の勝敗に一喜一憂
しているサポの自分自身の心理にも突き刺さる諸刃の剣で
あるから、そこはなかなか厳しい(汗)

ただ、オイラはこの期に及んで「勝つしかない」という
言い回しを代表にも、そして(できれば、になるのが我ながら
情けないが)札幌にも声高に言いつのりたくはないな、と
いう気がしている。

逆に言えば「勝つしかなかった」のはオーストラリア戦とて
同じだったはずであり、今さらクロアチアを目の前にして
言い出すことでもないだろう。
その「勝つしかなかった試合」を代表は落としたわけだから、
今さら念仏のように勝つしかないといったところで、結果は
実力が反映されたとおりになる、としか言えないだろう。
そして、今の日本代表に、決勝トーナメントに参加できる実力が
醸成されてきたかといえば、素人目にも「足りないだろ」としか
思えない。

悪いが、代表に招集された「海外組」(呼ばれなかった選手も含め)
のうち、トップチームのレギュラーとして、この人物がいなくては
チームが成り立たない、というほどの選手は一人もいないわけだ。
それどころかほぼ全員が控えに甘んじ、ろくに試合にも出られず、
冷や飯を食っている。
WBCのイチローがMLBの歴史に残るべき記録を持った
スーパースターとして、押しも押されもせぬ日本代表の精神的支柱に
なっていたのと比べれば、月とスッポンとしか言えない。
日本代表の選手のレベルとは、せいぜいその程度しかないのだ。

ならばその分をきちんと鍛えられたかといえば、これも素人目には
さっぱりだ。Jリーグとの連携もとれているようには見えず、
日程の目をかいくぐるようにして設定される代表の試合は、毎度
ぶっつけ本番同然で、しかも強化にふさわしい海外チームを
呼び寄せるどころか、遠征した先でも手配することができていた
ようには見えない。
W杯直前の対外試合ではボロばかり出ていたような記憶しかない。
これで世界のトップチームと渡り合おうなどと、どの口で言えるのか
と思ったものだ。

つまりは、「勝つしかない」と煽っているほどには、
我々チームを支える側(それは協会であったり機構であったり
さらには国家のバックアップ体制であったりするわけで、ひいては
国民自身というわけだが)が、日本代表を世界に対抗できるだけの
実力を持てるように「育ててこなかった」ことばかりが
浮き彫りになったのではないか、としか思えないのだ。

W杯で勝ち残りたければ、明らかに、Jリーグも何もかもよりも
最優先して強化の日程を組み、選手をW杯にのみ完全に的を絞った
鍛錬を課していくべきなのだ。
W杯よりもJリーグで勝つのが大切だ、というのも一つの見識
だが、それならばW杯で「勝つしかない」などと言ってはいけない。

今の代表が「弱い」ことの根本は、すべてここにある。
美味しい果実だけを食べたがる外野の身勝手さに。

(景気が悪いが、クロアチア戦前に書いておく。
 後出しジャンケンにならないように。
 もちろん、クロアチア、ブラジルを撃破して決勝トーナメント
 に行く可能性もある。その場合は、何よりも現場の選手達の
 功績以外のなにものでもない)

posted by FT |13:41 | サッカーから見えること | コメント(1) | トラックバック(0)

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この記事に対するコメント一覧
Re:勝つ「しかない」の発想

お休みの所、失礼します。

~W杯で勝ち残りたければ、明らかに、Jリーグも何もかもよりも最優先して強化の日程を組み、選手をW杯にのみ完全に的を絞った鍛錬を課していくべきなのだ~

韓国はそれをやりました。オランダ人監督のことが話題になっていますが、強化のための長期合宿は絶対必要だと思います。

分野は違いますが、冬季オリンピックのスピードスケートやジャンプなども早くからメンバーを絞り込んで、長期の合宿をしていました。そうやって結果が出ていたんでしたね。

私は別に今日のクロアチア戦に負けたとしても、何とも思いませんよ。
出た結果は「必然」であると思うようにしています。
それはコンサに対しても同様ですが…

posted by equip| 2006-06-18 14:31

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