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北海道知事へ

2008年01月26日

 北海道は、出資した資本金の8割減資に難色を示し、融資金に関しては返済計画を明確にすることを求め、補助金に関しては来年度から打ち切ることを決め、HFCに対しては、経営責任を明らかにするよう求めたそうです。道の根底にある考えは、これらのお金は「税金」だから、ということのようです。

 この問題を考えてみたいと思います。しかし、「出資金」と「融資金」と「補助金」は、それぞれ性格が異なるお金なので、分けて考える必要があります。


 まず「出資金」ですが、1億5千万円出資したとき道は、誰かに脅されたり騙されたりして出資したのではなく、当時、HFCに出資することが北海道と道民のためになるという自らの判断の上で予算(案)に計上し、選挙を通じ道民の付託を受けた道議会議員が議論の上、道議会で可決されてHFCに出資したものです。道は、その経緯と事実をしっかり思い出してください。また、HFCへの出資が計上されている予算案が道議会で可決されたということは、理論上、道民の多数の賛同を得ている出資であるということも認識してください。議会制民主主義とは、そういうことです。行政のトップに立つ知事は、そのことをご存じのはずです。

 ここで、株主について整理しておきます。
 道がHFCに出資して株主になったということは、株式会社の意思決定機関である株主総会において、原則として株式の保有数に応じた議決権を持つという形でHFCの経営に関与する権利を持ったということです。ただし、それは、オーナーの一人としてHFCと運命共同体にあるということも意味します。株主には、株主平等の原則というものがあって、出資金の出所が税金だからといって、道が特別の権限を有しているわけではないことは、ご承知のことと思います。

 道が「8割減資は困る」と、株主の立場として発言することは自由です。せっかく出資したお金が8割も消えて無くなるのは、道だけじゃなく出資している誰だって嫌なことだし、困ることです。しかし、その理由として道が「税金だから」という理由を持ち出すのは、ちょっと態度が不遜なのじゃないでしょうか。ご存じのとおり、HFCの筆頭株主の実質的な出資者はサポーターですが、サポーターだって苦しい家計をやりくりして出資しているのです。お金に貴賤はありません。税金が尊いお金で、苦しい家計から捻出されたお金は尊くない、ということは断固としてありません。株主の権利・義務が平等であるのと同様、出資金も平等です。

 道の発言が、行政を預かる身としては、税金が消えて無くなるのは困る、という素直な気持ちを表したものであれば、それは、それで理解できます。しかし、前述したとおり、現在、道がHFCの株主であるということは、誰に強制されたことでもなく、北海道と道民のためになるという自らの判断に基づいて出資し、株主になっているのだという事実を改めて認識していただきたいと思います。

 道にとって減資がそんなに困ることなら、このような事態に陥ることを見通せなかった道自信の不明と責任もお感じになってもよろしいのではないでしょうか。また、そのような道自身の見通しの甘さと責任を横に置いて、今になって急にHFC経営陣の経営責任のみを云々されるのも、ちょっと滑稽な気がします。毎年度開催される株主総会に大株主として出席し、HFCの財務内容を承知できる立場にありながら、これまでは、経営陣と経営方針に異を唱えてこなかったのではありませんか。前述しましたが、株主は、出資したHFCと運命共同体にあるのです。

 道が経営に関与する株主の立場として減資に反対しているのなら、当然、減資を行わなくても財務内容を改善できる方策を持っているのだと推察いたしますが、是非とも、その方策をお示しいただきたいと思います。もし、そのような方策を持たずに、ただ「嫌だ」「困る」と感情論で発言されているのなら、株主の立場というものを理解しない、まるで小学生レベルの駄々っ子的発言と言わざるを得ませんし、見苦しいことです。

 また、道は、現状の財務内容が改善されなければJリーグ第23条(Jクラブの健全経営)の規定に抵触し、たとえ今季コンサドーレの成績が良くても、来季は再びJ2に降格させられるおそれがあることもご存じのはずです。
 減資以外の財務内容改善の方策も提言せず、ただ税金が消えて無くなるのは困る、という立場で減資に反対されるのであれば、それはHFCの大株主の意志として、コンサドーレが来季、J2に降格してもやむを得ない、という意思表示に他なりません。知事はコンサドーレの優勝とJ1昇格が決まった直後、道民の一人として喜び、歓迎するとおっしゃいませんでしたか。

 確かに道は四番目の大株主で、公的機関からの出資者という特別な立場にいることは認めます。しかし、前述したとおり、株主平等の原則があるのですから、主張は主張として、最後は、民主的手続きで開催される3月21日の株主総会における株主の多数意見に従っていただきたいと思います。議会制民主主義のルールの下で道政を運営している知事なら分かっていただけると思いますが、それが法治国家におけるルールというものです。


 次に「融資金」の問題です。
 この問題は長々と書くような問題ではありません。道からの融資とは、HFCにとって純粋に借金です。貸し方北海道(甲)が借り方HFC(乙)に対し幾ら融資する、その返済期限は何時である、という内容を双方で合意した双務契約です。約束事ですから、その約束を守るのはHFCの義務です。

 契約というものは、当事者同士が合意すれば、その契約内容を変更することが可能で、現にこれまで道とHFCは返済期限の実質延長を合意してきました。それは、それで新たな双務契約の成立ですが、しかし、ここに至って道が、もう見通しの立たない返済期限延長は認めない、という態度に出てきました。それに対してHFCは反論する術がありません。道の主張するとおり返済するしかないのです。

 HFCの2007年度の収支が、わずかながら黒字になりそうだと聞いています。今季からJ1に昇格し、新たなスポンサーの獲得やホームスタジアムの入場者増が見込まれています。そのような状況においてHFCは、この状況を遷宮一隅のチャンスと捉え、これまで以上に一層、効率的な経営に努め、道からの借金を約束期限内に返済することを最優先するしかないでしょう。たとえ、そのことでHFCが窮地に堕ちいたとしても、そのときこそサポーターが手を携えて底辺から絞り出すような支援を行う覚悟があります。

 ただ、北海道という地域の自治を担う道に、このことだけは理解していただきたいと思います。コンサドーレという、北海道という地域に根ざしつつあるプロスポーツチームは、既存の生産性を伴う一般企業とは異なりますが、道民の心を充たし、心に潤いを与える公共財産だということを。


 次に「補助金」の問題です。
 道は、北海道を本拠地とした初めてのプロスポーツが地域に根付くことが、地域活性化やスポーツ振興、さらには地域経済や道民の精神生活の向上にも寄与するものと判断して、これまで補助金を交付してきたはずです。
 実は、地方自治体がスポーツなど広い意味での地域文化に補助金を交付するということは、人が人として生きるためには何が必要かという、根元的な問題に関係してきます。

 道路や橋や港湾などは一般的に公共的財産と言われ、それらは、現代に生きる人々の生活に利便を与えてくれたり、不可欠であったりするものです。しかし、人々の生活は、そのようなハード面が充実していれば、それで幸せというものではなく、併せてソフト面が充実していて初めて豊かさを実感できるものです。これは、贅沢と言えば贅沢ですが、後戻りできない文明社会に突き進んでしまった現代人にとって、それは、やむを得ない現状なのです。

 公共財産と称してもよいソフト面の代表的なものはスポーツと伝統文化でしょう。
 従来からある古典的な伝統文化などが衰退しないよう維持することも大事なことですが、攻めの姿勢として、地域が一体となって新しいソフト(文化)を作り上げていくことは、同じ目的を志向する人々の精神的なつながりが強固になり、その取り組み自体が地域の活性化に寄与することになるので、あらゆる面で冷え込んでいる北海道においては、今こそ必要な活動と言えるでしょう。

 コンサドーレ札幌は、まぎれもなく北海道に根ざした(しつつある)プロスポーツです。地域に根ざしたプロスポーツというものは、どれだけ厳しい経済状況になっても、生活に精神的な豊かさを求める現代人にとって、一服の清涼剤、心に潤いを与える潤滑油のような存在です。
 また、地域経済という面から見ても、コンサドーレは現状でも存在そのものが経済的に地域に貢献しています。その代表例は、ホーム試合の都度、多くのサポーターがスタジアムに足を運ぶとき利用する地下鉄などの公共交通機関の営業に寄与していることでしょう。しかも、今後、コンサドーレの基盤が安定したなら、札幌以外の地域にも経済波及効果が広がることが期待できます。

 ご飯を食べれば腹が満たされ、それで生物としての命は継続されます。しかし、人が人として豊かに生きるということは、腹が満たされれば、それで良いというものではありません。腹が満たされると同時に心も充たされなければ、人間らしい生活とは言えません。
 地域経済と地域に生きる人々の生活のための自治を担う道にとって、人が人として心豊かに生きていける環境を整備することも大事な仕事です。HFCへの補助金を打ち切るということは、道民が心豊かに暮らすための心の潤いの素が一つ絶たれてもよい、という判断をされたということです。

 現在の道財政の厳しさは十分承知しています。全予算に占める公債比率が高く、このままでは財政再建団体に陥るおそれがあることも承知しています。財政再建のため、地域消費に直接影響する職員の給与を9パーセント削減することや、北海道の基幹産業である建設業の衰退を招きかねない継続的な公共事業費削減の方針を打ち出していることも承知しています。そのような財政状況の中で例外なき見直しを図り、削減できるものは削減しよう、ということでHFCへの補助金を打ち切ることにしたのだと思います。

 一言、老婆心ながら言わせてください。人が負う傷は、肉体に受ける傷よりも、心に受ける傷の方が深く、治りにくいものなのです。貧しくても、心の潤いを無くさない生活が出来るような施策を行うことこそ、優秀な為政者の執るべき道だと思います。
 補助金に関しては、補正予算を組むときに計上することも可能です。来年度打ち切っても再来年度に復活させることも可能です。今後のHFCの健全経営の姿勢とコンサドーレの活躍を見守って、コンサドーレの存在が北海道経済に寄与し道民の生活に必要だと思い直していただけたら、その時は、補助金の復活をどうぞよろしくお願いします。


 総体的な感想です。
 これらの問題に関する道の一連の発言を聞いていると、そこに建設的な提言がまったく見いだせません。あるのは、道だけの立場を声高に主張する姿勢とHFCに対する批判だけです。結果を見てからの批判なら猿でもできます。
 道は、四番目の大株主という立場で、HFCに対し経営責任を明らかにするよう求めていますが、経営責任を追及するということは、ここが間違っていた、このように経営していれば現在のような債務超過を招かなかったはずだ、という基本的な考えを持っているはずです。よもや、そのような考えもなく経営責任を云々しているとは思えませんので、仮に児玉社長が引責辞任した場合は、健全な経営に自信がある道から道職員か道職員OBを送り込むぐらいの気概をお持ちなんですよね。そうでなければ、道の発言は、マルチ商法に手を出したのは自分自身なのに、損害を被りそうになったとたん、100パーセント被害者面して救済を叫ぶ人のように見えます。
 ちょっと感情的になってしまいました。失礼いたしました。


 最後に一言。
 北海道が出資した資本金の減資に反対し、融資の早期返還を求め、補助金の交付を打ち切るという姿勢を現実的な言葉を変えて言うと、次のような意味にもなります。
 北海道としては、コンサドーレがJ2に降格してもかまわないと考えている(出資した資本金の減資に反対)。HFCの経営がどうなってもかまわない(融資の早期返還)。コンサドーレの存在が道民のためになっているとは思えない(補助金の交付打ち切り)。
 そんな考えではないですよね? もしそうなら、それは、あまりにも、あまりにも心が狭い考え方です。

 しかし、何だかんだ言っても、道は頼りになる大きな後ろ盾です。
 来年度予算案を今月中に取りまとめることになると思いますが、同じプロスポーツチームの日本ハムの活躍が、どれだけ北海道を明るくし、地域活性化の面でも金額では表しきれない有形無形の効果があったのかに思いをはせ、最終決断をお願いします。
 HFCもコンサドーレも我々サポーターも精一杯、頑張ります。


 ふ~う、書いた書いた。
 さあっ、日本×チリ戦をテレビ観戦するぞ。
 岡田ジャパン、がんばれ!

 と、おじさんは、思うわけです。


post by masa2007

18:53

コメント(3)

この記事に対するコメント一覧

青空百景

Re:北海道知事へ

2008/01/26 20:26

とても理路整然かつ過不足ない文章ですね! 実際に、道庁宛てに送ってもいいのではないかと思いました。

元多摩

Re:北海道知事へ

2008/01/26 21:03

初めまして、元多摩と申します。 まさに僕の胸の内を代弁してくれた内容で、読んでいてスッキリしました。 去年の今頃まで大学院生でしたが、論文ってのはこうやって書くものかと、 今さらながら勉強になりました。 青空百景さんもおっしゃるように、道庁に宛てて送ってもいいと思います!

sure_kusa

Re:北海道知事へ

2008/01/27 07:12

読んでるうちに、ジ~ンとして来ました(笑) ”次の一手”の解説を見て疑問が晴れたような、サワヤカな感触です。

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