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2008年05月08日

純の父

大宮サッカー場に行ったのは、大宮アルディージャがJ1昇格を決めた日が最後だ。その後も大宮のホームゲームは何試合か見たが、駒場や埼スタだった。

その日の試合内容は、ほとんど記憶にない。試合終了直後、バレーとツゥットが抱き合っていた光景にしても、頭の中に残っているというよりは、自分が撮った写真を後日になって何度も見ているから見たような気になっているに過ぎない。

そんな中、はっきりと記憶しているのは、試合後、大宮の選手たちが場内を一周していたとき、突然、一人の大男が、僕のいたバックスタンドに上がってきた場面。バックスタンド中央には、スタンディングオベーションを送る人々が密集していたのだが、彼=ディビッドソン純マーカス=が、ピッチからバックスタンドへ逆乱入してくると、彼の前には道ができた。プロレスで、入場シーンでは観客が選手の体を叩いたりしても、試合中の乱闘が起きると人の波が引いていくのと同じで、人間には、想定外の出来事に対しては、その場から離れる、という本能が備わっているらしい。

スパイク履いたまま座席の上を歩くのはどうなのよと考える余裕すら与えずに、マーカスはドタドタとものすごい迫力でバックスタンドの上へと進み、野球帽をかぶった白人男性に抱きついた。そのとき初めて、ぼくらは、自分たちのすぐ後ろに一人でじっと座っていた外国人男性が、純パパであったことを知った。

手を伸ばせば届きそうなところに、いま昇格を決めたばかりの選手がいるというのに、誰も声をかけることもなく、みんな、遠巻きに、彼らの姿を見守っていた(ような気がするのだが、もしかすると自分の脳内で作られた記憶かも)。僕は、そのとき、なるほど、この行動は日本人の感覚ではないかもしれないなあと考えていた。

いまやコンササポから戦犯扱いされつつある(?)彼ではあるが、大宮が初めてJ1で戦った年には「日本代表入りか?」と注目を集めたこともあった(たとえばこれとかこれ)。

試合に出るのかどうかわからんが、出たら吉原宏太に負けずにがんばれ。

posted by issey11 |18:35 | 今は昔 |