2006年01月02日

電影有声・『皇帝ペンギン』

『皇帝ペンギン』(2005年フランス/監督リュック・ジャケ/ 86分)

 皇帝ペンギンの暮らしを、南極の美しくも厳しい自然の映像と共にドキュメンタリータッチに綴った作品。日本語吹き替え版もあるようですが、蠍座で掛かっていたのは字幕版。やはり愛を囁くにはフランス語が一番だなぁ、と(笑

 ひょっとしたら外れているかもしれませんが、移動する生き物としての「皇帝ペンギン」を描くというのが監督の意図の一つだったのではないでしょうか。


 ご存じの通り、皇帝ペンギンは冬の始まりに冬営地=子育ての場に集まり、パートナーを見つけ、産まれた卵をオスが暖める間にメスは餌を求めて海に潜り、孵化した後はメスがその餌で子供を育て、オスは弱った体を回復させることと子供のさらなる成長のために餌を求めに行く、というサイクルで子孫を増やします。ここまでは知っていたのですが、今回この映画では、一連の行動を「行進」という語で綴っています。
 各々が冬営地に向かう「行進」。卵を産んだ後のメスが餌を求め、厚い氷に閉ざされた地帯を乗り越え、海に戻れる場所を目指す「行進」。子供がはじめて氷を踏みしめる「行進」。そして夫婦の別れと子供の独り立ちに向けた「行進」…。
 ある種のペンギンは何千キロもの距離を移動するということを『渡り鳥』という別の映画で知ったのですが、皇帝ペンギンにおいても移動は生きることと不可分なものだったのです。
 歩く姿がユーモラスと人気を集めるペンギンですが、この映画での歩く姿はまるで「求道者」のよう。陽炎の彼方を歩く彼らの姿は、まさに何かを求めて一心に歩く「求道者」のそれに思えてなりませんでした。

 一方で忘れがちですが、彼らは「鳥」であり、他の鳥にとっての飛ぶことに相当するのが「泳ぐ」という行為。餌を求め、また独り立ちしてはじめて海に入った時の彼らの何と素早く、活き活きとして、そして優雅なことか。

 自然の厳しさ、美しさを描いた、とても良い映画だったと思います。


 余談その1。ブログ設立当初から「映画」というカテゴリーを設け、映画好きを装っていた私ですが、実は今回が蠍座デビューでした。何となく敷居が高い感じがしたので、今まで行くことができませんでした。実際行ってみると、エントランスが広く、喫茶スペースが十分にあり、映画の前に集中・予習するにはうってつけの環境。
 狭いスペースに人がひしめくシアターキノでは、「見ず知らずの人だけど間違いなく映画好きの人々」と空間を共有できている実感を得ることができますが、それとは違う良さがあるなぁ、と感じた次第です。

 余談その2。人間もアフリカ大陸を起源とする種であり、移動を繰り返すことでこの地球を覆い尽くす生息地域を持つ生き物になりました(とされています、現在最も有力な説では)。移動する先の無くなった人類が次にどこへ向かうのかはわかりませんが、少なくとも個人レベルでは移動に対するモチベーションが遺伝子レベルで根付いているように思います。そして他の動物と決定的に違うのは、人間は移動することで自らの知る世界を広げることができるという点です。どこか知らない世界へ行くことで、知らないことが見えてくる、そして気づかなかった自分も見えてくるのではないか…

 つまり何がいいたいかというと、ハイ、旅がしたくなってきたのです。時間も金もないくせにw


posted by tottomi |02:09 | 電影有声 | コメント(2) | トラックバック(1)

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Re:電影有声・『皇帝ペンギン』

はじめまして。
この映画、DVDを借りてきて家族で見ました。
面白かったです。

しかし、さすが、おフランス映画!
ペンギンのラブシーンをあれほどエロチックに描写するとは・・・

子供と見ていてなんだか恥ずかしくなってきました。
って、親が意識しすぎ?

posted by kenji | 2006-01-02 08:38

Re:電影有声・『皇帝ペンギン』

はじめまして。

>親が意識しすぎ?

いえいえ、私もエロかったと思います(苦笑
日本語吹き替え版で大沢たかおと石田ひかりがどう演じているのかがちょっと気になりますw

posted by tottomi| 2006-01-02 10:08

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