2006年09月26日

コンビニバイトの悲しい性

僕は現在、社会保険労務士の資格を目指して勉強しています。

基本的には教員を目指しているわけですけれども、詳しいことは別の機会にお話ししますが、資格を持っていて損になるということはありませんし、元々適正な労働のあり方については僕も興味を持っていたので、社会保険労務士の資格を取ろうと、勉強を始めました。
今、労働基準法の勉強が半分を超えるところまで進んだところ。社労士の勉強としては、まだまだ序の口ですね。

しかし、労働基準法は労働について基本的なことを定めた重要な法律。実際、バイトを始めるとなると、やはりこの法律がいろいろと絡んできます。
そこで、すでに学んだ労働基準法の決まり他と、今回のコンビニバイトの労働契約について少しお話ししたいと思います。

まず言いたい。
労働条件を書いた紙を持っていくな!!

労働条件は、契約を結ぶに当たって明示しなくてはなりません。
その明示すべき労働条件のうち、「絶対的明示事項」というのがあり(具体的には、契約期間、就業場所、就業時間、賃金など)、これらについては「書面の交付」により明示しなくてはなりません(厚生労働省令で定められている)。
で、確かに、労働条件の書かれた書面は渡されたんですが、それが労働契約書の裏に書かれていたものですから、昨日研修の際に契約書を提出したのと同時に店に回収されてしまった! おいおい!
回収しちゃったら「交付」って言わないんじゃないか? まあ、言葉の定義はともかく、「交付」する目的は、労働者がいつでも、労働条件のうち特に重要なものをはっきりと確認できるように、ではないだろうか。回収しちゃったらその目的に反するんじゃないだろうか。
まあ、自宅に帰り着くまでそのことに気付かなかった僕も僕ですが…。
今度店に行ったら、「労働条件を書いた紙をくれ」と言ってみようかな。

そして、賃金について。
前のエントリーでも書いた通り、北海道の最低賃金は時給641円。このコンビニのバイト料も、最低賃金ギリギリの時給641円。
でも、計算してみてください。
1ヶ月を30日間とすると、1ヶ月はおよそ4.28週間。一週間の法定労働時間は40時間が限度ですから、それぞれ掛け合わせると…、
641円×40時間×4.28週間≒月給110000円
ということになります。
月11万円。こんなんじゃ、本当に最低限度の生活しか送れないですよ。まさに最近流行の「ワーキングプア」です。
まあでも、こういう状況を作り出しているのは、その程度の賃金でも働こうとしてしまう、僕のような学生アルバイトがいるせいかもしれませんが。働き手がいなければ、賃金を上げて募集しようとするはずですからね。ちょっと責任感じちゃうな。

次、契約期間について。
労働契約の契約期間は、2ヶ月で、時期が来たらこれを更新していく、ということだそうです。
この、「2ヶ月」という数字がちょっとくせ者。
それは、「解雇予告」に関してです。
普通、労働者を解雇する場合は、「解雇予告」といって、解雇する30日以上前に予告しなくてはいけません。しかし、「2ヶ月以内の期間を定めて使用される者」については、解雇予告の必要がありません。
これは、解雇予告は労働者が突然失業して生活に困ることを防ぐ目的で設けられていますが、そもそも、このような短期労働者の場合、近い将来に契約が満了して職がなくなることを前提としているのだから、この制度を適用することはないだろう、ということです。
但し、「所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合」は、解雇予告をしなければなりません。つまり、1回でも契約を更新すれば、解雇予告が必要になる、ということ…だと思います。
なので、1回でも契約を更新すればもう問題ないんですが、更新するまでは、いつ解雇されてもおかしくない状態にあると言えます。
この契約がもし、2ヶ月を超えた期間の契約だった場合、解雇予告が必要ない期間は14日間です。「試みの使用期間中の者」は解雇予告の必要がありませんが、「14日を超えて引き続き使用されるに至った場合」は解雇予告が必要、との規定に基づきます。
つまり、比較すると、2ヶ月の労働契約だと、2ヶ月を超えた期間の労働契約の場合と比べて、いつでもクビにできる期間がひと月半ほど長いのです。ひでぇことするなぁ。

労働契約の期間が短いことは、他の方面にもいろいろ影響が出ます。
例えば、仕事をしていてケガをしたり、病気になったりして休む場合。
普通は、労働者がケガや病気で休んでいる間と、治して出勤してきて、30日を経過するまでは、解雇することはできません。
しかし、労働契約の期間が短ければ、労働契約の期間満了と共に、更新しません、といえば、はい、サヨナラ。
これは、女性が妊娠して出産する場合も同様。産前は6週間、産後は8週間、休業させることが、労働基準法65条で定められており、この期間と、その期間の後30日間は、解雇ができません。しかし、労働契約の期間が短ければ(ry。
先述の解雇予告にしても、契約期間の途中で解雇するなら必要ですが、契約期間満了と共に、契約を更新しません、といわれたら、やっぱりそれまでですからね。
ああ、ただ、1年を超えて継続勤務している者の契約を更新しない場合には、30日前までに予告することが、厚生労働大臣が定める基準で義務づけられていますね。1年以上働けば、そこそこ守られるわけですね。

よく「バイトやパートはいつでも簡単に切り捨てられる」と聞きますが、ははぁ、なるほどなぁ、と身を以て実感した次第です。

<追記>
以前、家庭教師の登録をした際、契約書に、他の業者を通したり、自分で探して家庭教師をしたりした場合、損害賠償として20万円支払う、みたいなことが書いてあったんです。
その当時から、この条項はおかしい、と思っていたんですが、労働基準法を学んで、やはりこの条項は無効だとわかりました。

労働基準法第16条
「使用者は、労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない」

上記、家庭教師登録の契約の場合、あらかじめ「損害賠償として20万円」と、「損害賠償額を予定する」内容になっています。従って、この条項は無効です。
但し、他の業者を通じて、または自己開拓して家庭教師をしたことで、その家庭教師派遣会社が実際に損害を被った場合は、その損害を被った額だけ請求することができます。もっとも、その額をどうやって根拠を持ってはじき出すのかは知りませんがw。これはよっぽど悪質な場合だけですね。

こうして労働基準法を学びつつ実際の現場に出てみると、結構面白いですね。

posted by 元多摩 |18:11 | 自分のこと |

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この記事に対するコメント一覧
Re:コンビニバイトの悲しい性

こんばんは、だいごろうです。

凄く労基法を勉強されてますね
今の知識に、労働安全衛生法の知識があれば、
”第1種衛生管理者”の資格が取れます。
社会保険労務士の前のステップと考えて、
挑戦してみてはいかがですか??

posted by だいごろう | 2006-09-26 20:00

Re:コンビニバイトの悲しい性

だいごろうさん
ありがとうございます! いやぁ、でも、まだまだ、テキストを見ながら、って感じです…。
第一種衛生管理者、調べてみましたが、実務経験1年が必要みたいですが…。
実務経験を証明する書類自体は、事業者に一筆書いてもらうだけって感じで、
ねつ造しようと思えばできそうですけど(爆)。
しかも、労働生理とか、労基法以外の関係法令とかも難しそう…。
でも、いずれにせよ労働安全衛生法は社労士取得のために勉強しなければいけないので、
第一種衛生管理者も視野には入れておこうと思います。

posted by 元多摩| 2006-09-26 22:00