スポンサーリンク

2007年04月10日

兵は拙速を聞くも、未だ功久を賭(見)ざるなり

前回の仙台戦は、孫子の兵法的には下策だった。
苦労してもぎとった前半の1点は、虎の子だった。
この貴重な勝利の美珠を決して壊してはならなかった。

しかし、後半の半ばを越えたばかり、まだまだ両者拮抗した
状態で、札幌の方が力尽きた。あまりにも高い負担を中山に
課したために、前線での抑えが効かなくなった。
これを他の選手ではフォローしきれず、三浦監督はまだ
後半の後半がまだまるまる20分以上残っていたのに
「守って逃げ切る」オプションしか選べなくなってしまった。

カウンター攻撃の選択肢がないまま、全員で自陣を固める
札幌は、しかし長い長い二十数分を守備、いわば消耗戦を強いられた。

タイトルの孫子の兵法は、有名だからおわかりだろう。
多少荒削りでミスがあっても、戦いはスピードが命。
テクニックがあったとしても、上手に長期戦をやりおおすこと
はムリなのだ。出来たとしてもその消耗は計り知れない。

この過酷な三連戦の初戦、仙台戦は首位攻防戦の位置づけもあって
ただでさえ過酷なものになることは運命づけられていた。
しかし残念ながら札幌は、予想をはるかに超えた消耗を強いられて
しまった。そして得られたのが勝ち点1は、正直、報酬としては
割に合わなかったと言える。

選手や監督も言っていたとおり、札幌がこの過酷な試合に勝ち、
しかも消耗を最大限に抑え込む唯一の手段は、前半で追加点を加え、
仙台をプレッシャーに追い込み自滅させることだけだった。
2点目があれば、大観衆の元、ホーム未勝利の仙台が焦りから
プレイ精度を狂わせてさらに傷口を広げる可能性は高かったはずだ。
(スカパ観戦中、どれだけ仙台のミスに場内が嘆声に満ちたか(汗)

しかし、札幌は追加点を奪えなかった。
結果論ではあるが、それは同時に最低得点を守りきるという
戦術の宿痾でもある。事実、中山を下げた後の札幌の戦術は
カテナチオをかけることだったわけだから。しかしカウンターアタック
のオプションがない札幌は、いくら前がかりになっても反撃を
喰らう心配がない。仙台はあっというまに総力で襲いかかり、
クリアボールやセカンドボールを失ってゴールに迫られる心配も
なく、怒濤の攻撃で同点にした。虎の子は砕けた。
そして、札幌には再度勝ち越す得点をする攻撃力は残っていなかった。

ホームでまたも勝ちきれなかった仙台は、消耗はしたが面目を保って
試合を終え、次に気持ちを向けられた。
勝利を失った札幌は、逆に戦い方が手詰まりだということを思い知った
上に、予想以上の疲労と消耗を蓄積してしまった。

長い前ふりだったが、明日である。

おそらく現在の時点で最も強力なチーム力を持つ福岡に、
三日前にさんざん消耗した状態で対戦を強いられることに
なった札幌。
西が丘という場所、札幌のホームというタテマエだが、正直
両チームにとって準アウェイ状態だろう。地元での大観衆のよう
なパワーにもプレッシャーにもならない。比較的静かな会場で
選手のメンタルがどうなるか、が鍵になると思う。
福岡も一日余裕があるとはいえ、試合を土曜にやっている。
しかもあの東京Vを圧倒して、だ。
しかし札幌は一日厳しく、しかも過酷さは比較にならない試合を
やってきている。疲弊した身体がどこまでのパフォーマンスを発揮
できるか。西が丘の環境は札幌の選手に大きく影響するような気が
する。

仙台戦と同じ戦い方をしたら、後半に怒濤の攻めにあって追い込まれる
のは必定。(室蘭のC大阪戦も同様だった)
福岡を破るのは容易ではない。東京V戦を見たが、ボールポゼッション
能力が桁外れだ。もたもたしたプレイをすれば、あっという間に
保持していたはずの球をかっさらわれ、前線まで持って行かれる。
ドリブルも、パスカットも札幌より上だ。
何らかの方法で崩すしかない。

おそらく、後半のどこかで中山がアウトする。
その後に相手にプレッシャがかからなくなるのが苦戦の原因だ。
安心して前がかりに攻め込んでくる相手の肝を冷やす、
カウンター攻撃のオプションがあることを思い知らせる
動きを示す必要があるのではないかと思う。
トップ下に砂川、ワントップに相川か石井を残し、芳賀・西谷が
基点になって、押し込まれているときにもすかさず相手陣内に
襲いかかるラインを一本活かしておけるかどうか。

明日は交代のタイミングも肝要だろう。なんだか
恐ろしさも感じてしまっている、水曜夜を控えた前日である。

posted by FT |21:11 | 070411vs福岡in西が丘 | コメント(0) | トラックバック(1)