2006年09月20日

電影有声・『ZIDANE:ジダン 神が愛した男』

『ZIDANE:ジダン 神が愛した男』(2006フランス・アイスランド/監督:ダグラス・ゴードン/95分)

公式サイト

 ワールドカップ2006を最後に現役を引退したジネディーヌ・ジダンを追ったドキュメンタリー。

 2005年4月23日、リーガエスパニョーラ第33節・レアル・マドリー-ビジャレアル、この試合で17台のカメラを使ってジダン一人を追い続けた映像がひたすら流れつづける。試合展開そっちのけでジダンばかり追っているので、ゴールの瞬間が映っていなかったり、マドリーの出来が悪い前半はほとんど歩いているジダンしか映っていないなど、「ジダンの華麗なプレーとマドリーのスター達を見たい」という向きには全くお薦めできない作品です。「サッカーとロックとモダンアートを融合させた」斬新な映像感覚も、正直あまり伝わってこなかったばかりか、開始直後の映像処理には少々具合が悪くなってしまいました。が、それを差し引いても興味深い点がいくつかありました。


(ドキュメンタリーでこんなこと言うのも何ですが、ここから先は内容に触れています)

 まず、撮影がピッチレベルで行われたため、ジダンの息づかいから選手が芝生を踏みしめる音、ボールを蹴るときのインパクトの音、はては観客席のたった一人の手拍子まで拾っており(背景にぼんやり映っていた観客の手と音がシンクロしていたから間違いありません)、スタンドでは感じられない臨場感があったと思います。

 さっきも書いた通り、カメラはジダンだけしか追っていないので試合展開は全く分かりません。審判が笛を吹いても何が起こったのか分からない(笑)。ただ、おかげで「ジダンでもボールを触っている時間はこんなものなのだな」というのがよく分かりました。90分の試合の中で一人の選手がボールを保持する時間はほんのわずかです。この試合、ジダンは本当にプレー機会が少なかったのはマドリーのサッカーの質が低いせいもあると思うのですが、後半、見事にロナウドの同点ゴールをアシストして見せました。いくらジダンといえども限られたプレー機会で決定的な仕事をしなければならない。そのことを実感するとともに、逆に言えばあれだけボールに触る機会が少なかったにもかかわらず仕事をしてしまうあたりはさすがだなと思いました。

 この映画は日本では7月以降に公開されているようなのですが、本国フランスではどうだったのでしょう?このことはどこかで誰かが書いていた気がしますが、ワールドカップ前だとすると、映画のラストは非常に暗示的です。この試合、相手ゴール前で起こったもめ事でジダンは退場になります。本人が絡んだプレーではなかった気がしますが、小競り合いにあとから入っていってレッドカードを受けてしまうのです。
 ドイツでの決勝のことを思うと、映画のラストの言葉、正確には覚えていませんが、「魔法はいつか解ける。それも不意に」という意味の言葉がまるで予言のように思えてきます。

 華麗なプレー集、とはいきませんが、思わず笑ってしまうぐらい素晴らしいとラップをはじめとした彼の高い技術は堪能できます。シアターキノ、明後日で終わっちゃいますけど。

posted by tottomi |22:13 | 電影有声 | コメント(2) | トラックバック(0)

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この記事に対するコメント一覧
Re:電影有声・『ZIDANE:ジダン 神が愛した男』

こんばんはジズーマニアの拝田です。
私もこの映画みました。
ホントにプレー機会が少なかったですよね。
でもキッチリ仕事をこなすところはさすがです。
仰る通り決勝で退場になった時この映画はもう出来ていてそのラストが非常に暗示的だという事でヨーロッパでも話題になってました。
頭突きはしてませんでしたけどね(笑)

posted by noboru | 2006-09-20 22:04

Re:電影有声・『ZIDANE:ジダン 神が愛した男』

>拝田さん
>ホントにプレー機会が少なかった…
ドイツでのプレー、特にブラジル戦のイメージが今も強烈に残っているので、何だか別人みたいでした。

後半、同点にしてからはチームもジダンも乗ってきて、こちらも映像に入り込んできた最中での退場…。偶然とはいえ良くできたストーリーです。

posted by tottomi| 2006-09-20 23:00

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