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2007年06月11日

コンサレーレへの道・第2回『マラドーナを見た(2)』

 彼は、バックスタンド側のセンターライン付近、ほんのちょっと相手ゴールより、で何気なくボールを受けた。
 「神の手」から10分も経っていなかったんじゃないかと思う。始まりは何気ない、J2でも、プリンスリーグにも、カブスリーグにだってありそうな、きわめて日常的な、どこにでもあるサッカーのいち場面。その日常性がマラドーナのドリブルによって木っ端みじんに打ち破られた。

 アナウンサーの声だけははっきりと記憶していて、NHKの有名なアナで、ジョホールバルの時に、「絶対に負けられない戦いがある」とのキメ台詞を吐いて、その後の「負けられない戦い」インフレをつくったアナウンサーだと思うんです。

 彼は、マラドーナが一人抜くごとに「マラドーナ・・・マラドーナ・・・マラドーナ・・・・マラドーナ」と名前だけを連呼したんですね。はじめは普通の実況の声でしたけど、連呼を繰り返す度に、だんだんとトーンが絶叫調に変わっていきました。
  
 ブラジルのドリブルが、『体が動いてボールが動かない』ことに特徴があると言われるのに対して、アルゼンチンのドリブルは『ボールが動いて体が動かない』と言われます。その通りで、マラドーナはゴールにむかって一直線に向かい、一瞬のブレもない。しかしボールは右に左に動き、相手ディフェンダーは次から次へ交わされる。

 マラドーナの5人抜きのシーンの中で、今でもはっきり脳裏に浮かぶのは、ミッドフィールドの二人を抜いて、最終ラインの二人に襲いかかるわずかな合間のマラドーナ。そのとき、

 彼は空を飛んだんです。

 人間は跳べるけれど飛べないじゃないですか。でも、あの瞬間、確かにマラドーナは飛んだ。跳ぶと飛ぶの違いは、距離や時間や高さじゃない。トビウオが何十メートルも跳んでも、あれは跳んだであって、飛んだんじゃない。というのと同じように、
マラドーナは、コンマ何秒、地上数十センチの大空を飛びました。この感覚、リアルタイムで見ていたい人なら、みんなうなずいてくれると思う。
 
 あの試合から20年、試合がどう始まって、どう終わったのかは今となってはまったく記憶にありません。イングランドなので、リネカーがいたはずなのにまったく覚えていない。それでも、神の手ゴールと5人抜きの場面だけは鮮明に覚えているんですね。

 ちょうど、札幌オリンピックでの笠谷の金メダルジャンプの映像と「飛んだ、決まった」のアナウンサーの声を、昨日のことのように覚えているように。

posted by hibari |21:52 | コンサドーレへの道 | コメント(3) | トラックバック(0)

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この記事に対するコメント一覧
Re:マラドーナを見た(2)

アステカの空の下カモシカのように跳ねてましたね。
バルサのメッシのヘタフェ戦での5人抜きが、同じ様な位置から殆ど同じ時間でゴールに行き着いているとTVで見ました。メッシのゴールの方がスピード感あるのにね。。。
きっとあの時マラドーナはマジで飛んでいたんだって事ですよね。

posted by 神奈川サポ | 2007-06-13 02:36

Re:マラドーナを見た(2)

あの時のNHKの実況アナウンサーは後にW杯で数々の名実況された山本浩氏ですね。後年ご本人が語られてましたが、5人抜き始まった時点では正直あまり注目していなくて、それだけ意表つかれた出来事だったようです。もっとも相手がイングランドでなくイタリアやドイツだったら1対1で全員かわされる事なかったでしょうが。

posted by EBT| 2007-06-13 05:02

Re:マラドーナを見た(2)

神奈川サポさん、コメントありがとうざいます。
メッシは「神の手」もやったようですね。いずれもまだ見ていませんが。この連載? では、いずれもう一人のマラドーナの“人の手”が登場します。これ、古い方は、おわかりでしょ。

EBTさん、ありがとうございます。
やはり山本さんでしたか。古いんですね。あの方も。

posted by hibari| 2007-06-13 18:54

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