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2008年08月03日

スポーツのノーマライゼーション

 Jリーグを秋春制にシーズンを変えることが話題になっています。ここはコンサドーレ札幌のブログですから、このことで議論するまでもないと思って、コメントは抑えていました。
 
 ところが、ここではない某所のブログをたまたま見ていて、北国の立場からはあんまりな意見があったので、コメントをしたのですね。頑張って書いたので、もったいないからここに私のコメントだけ、加筆の上、再録しました。

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 ご返答ありがとうございます。
 せっかくですから、北国に住むものとして再度言わせていただきましょう。
 
 まずは人工芝ですが、怪我しやすし、特に滑ったときの摩擦で火傷をしやすい、という欠点があり、未だに克服されていません。芝は生き物ですから、すり減っても、自然に再生しますが、無生物である人工芝は自然に再生はしません。

 さて○○さんの主張は、「雪国は人工芝を使えばいい」ということかと思いますが、日々の練習環境が人工芝しかないようなクラブに、将来有望な選手が入団してくれるでしょうか。ここでも、雪国は決定的なハンディを背負ってしまうのですね。

 さらに札幌の場合は1月、2月には一晩に数十センチの雪が降ることも稀じゃないですね。そうした雪を水で溶かそうと思えば、溶かした後のピッチは、水浸しでまともな状態ではないでしょうね。またこれだけの面積の除雪には莫大な熱量が必要とされます。ごくわずかな降雪のあるところでは有効なのでしょうが、ヨーロッパでも、積雪寒冷地では春秋制である、ということを忘れてはなりません。

 「強くするなら金を惜しまずに投資するのは当たり前」おっしゃいますが、雪の克服は、強くするための投資ではないんですよ。スタートラインに並ぶための投資なんです。雪のないところのチームが、次のゲームに備えて、練習でフォーメーションのチェックをする、というのは何でもないことでしょう。

 でも、雪国では、たかだかかこのために、何十億、数百億の投資が必要だったりするのですね。サッカークラブの経営努力で跳ね除けられるほど、自然は甘いものではありません。
 
 そしてその上に、ようやく「強くするための投資」があるんです。そこまでしてサッカーに金を出すところが、雪国にありますか?。つまり、秋春制というのは、事実上、サッカーのトップヒエラルキーから、日本の総人口の20%、約2800万人が暮らす積雪寒冷地を排除することなんです。

 どうも秋春制の支持者の方は、今現存する雪国クラブ(札幌、山形、仙台など)だけが、何とかなれば良い、というような視野の狭いお考えのようですね。

 Jクラブというのは、日本のサッカーヒエラルキーの頂点で、Jクラブの下には何百、何千というサッカークラブがあるんです。たまたたま頂点の恵まれたクラブだけが、奇跡的に雪を克服する投資を受けられたとしても、その下にある多くのクラブ・チームは、雪の中に閉じこめられたままなのです。

 社会福祉ではノーマライゼーションという考え方があります。ハンディを持つ人と持たない人が、お互いが特別に区別されることなく、社会生活を共にするのが正常なことであり、本来の望ましい姿であるとする考え方です。そして世界の社会福祉は、少しづつこの方向に向かっています。

 サッカーにおいて、雪というのは著しいハンディです。Jリーグが、雪国のことを考慮して、春秋制を導入しているのは、スポーツのノーマライゼーションという観点から見て、先進的であると思います。ノーマライゼーションが、社会福祉を超え、スポーツの分野に広がるのならば、サッカーはむしろ春秋制に進んでいくこの方が進歩だと思います。

 FIFAの世界統一カレンダーが春秋制を念頭に置いているというのに、100年構想というすばらしい理念を掲げた日本サッカー協会はなぜにスポーツのノーマライゼーションから後退する道を選ぶのでしょうか。
 
 日本サッカー協会が、本当になすべきは春秋制による世界統一カレンダーの推進ではないのですか。




posted by hibari |21:23 | コンサドーレあれこれ | コメント(2) | トラックバック(0)

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この記事に対するコメント一覧
表日本の住民は酷暑でどうにかなった?

相手方のブログが不明ですがhibariさんの記述から推測できますので、北海道でも有数
の豪雪地帯の岩見沢で育ち、現在は無積雪地の大阪に住む私の経験から一言失礼します。
(○たさんトコでも少し書きましたが・・・)

>サッカークラブの経営努力で跳ね除けられるほど、自然は甘いものではありません。

厳冬期に帰省した時などは、帰阪するのにレンタカーを雪の中から掘り出し(岩見沢!)
地吹雪の中をヘトヘトに神経を使い運転して、千歳から滑走路の除雪でダイヤの乱れた
飛行機で大阪に帰ると「ウソッ!」と言うくらい穏やかな冬晴れの大阪で、タクシーの
車窓から淀川河川敷のサッカー場で少年達がボールを追いかけてる姿を見て、3時間前
との落差に愕然とします。

これがスタンダードだとこちらの方は思っています!!東北・北海道の出身の方が関東
より更に少ない関西では普段雪国のコトは話題にもなりません。
かつて春のセンバツ高校野球で「北国のハンディ」と言われましたが、最近ではマスコミ
も言わなくなりました。一般の方も「アラッ室内練習場とかが完備しているのでしょう」
との意見です。でも現実は資金力のある私立高校が莫大な投資(OBの多額寄付金を含む)
で室内練習場(それでも内野守備練習が精いっぱいですが)を確保しているに過ぎません。

駒大苫小牧が強いのはグラウンドの使用できる期間が道内では比較的長いのも少なからず
寄与していると思いますし、高校サッカー名門の室蘭大谷も同様でしょう。
でもそれではますます多くの公立高校が、サッカーや野球で全国大会に出場する機会が
閉ざされてしまいます。

何年か前の高校サッカーで北海高校が珍しく豪雪の東京のピッチで無積雪の徳島のチーム
に快勝したのに、テレビ中継に喝采を贈った雪国の人は多かったと思います。
僕も高校サッカーや高校野球ではとりあえず道内のチームを応援し、敗退すると別の雪国
のチームを応援するようにしています。やはりハンディは多々ありますので。

>現存する雪国クラブが何とかなれば良い、というような視野の狭いお考えのようですね。

暫く前から放送禁止になった「裏日本」と言う文言は太平洋ベルト地帯の住民の意識に
現在も生きています。彼らも雪国に旅行に行きますが、旅館やホテルは除雪が行き届き
また融雪装置のお陰で転ばないし快適です。旅行者は雪国で生活する煩わしさに気付かず
に雪景色を堪能し帰宅します。中には「こんなトコよう住まんワッ」と正直にコメント
する方もいらっしゃいますが・・・。

東北・北陸には冬場に取材に良く行きましたが(旅行と違い現地の冬場の生活を垣間見る
事が出来ます)雪質が重くて北海道より排雪が困難です(排雪と言う文言もパソコンでは
一発変換出来ませんでした)JFAの会長以下のお偉方には津軽の地吹雪ツアーでもして
貰いましょう。そして夏の酷暑に対しては「冷房完備の開閉屋根式のサッカー場を大量に
お造りになったら?」とでも言いましょうか??!!(神戸ホムスタは冷房がやや弱いが
・・・省エネで抑えているのかも?・・・マアマア良く出来てます)

※以下の記載は全て架空のものです、実在する団体・個人等とは何の関係もありません。

クライトン「ナァ!札幌ノ冬ハメチャメチャ寒イッテ本当カイ?」
ダヴィ  「アアッ鼻毛ガ凍ルゼ・・・ブラジル人ニハ厳シイゼ」
クライトン「オレハ名古屋二居タケド、名古屋ノハ冬ハ愉快ダッタゼ」
ダヴィ  「ソレハ冬カイダナッ!」

posted by 大阪の道産子| 2008-08-04 12:03

Re:スポーツのノーマライゼーション

オオドサさま ありがとうございます。

岩見沢の冬は厳しいすね。
札幌あたりが晴れていても、あのへんだけに雪が降っていたり。
また、地吹雪がひどいんですよね。
石狩川の川筋に沿って風が吹くというか。

前に青森で地吹雪体験ツアーというのが出来て話題になったとき、
ウチらは、あれは青森だから出来るんだ、
北海道だったら間違いなく死んでいる、と話しましたもん。

実際に、275号線では何年かに1回、地吹雪に立ち往生した車の中で、
排ガスが逆流して、人が死んでしまうことがありますよね。

こんなことは、この島に住んでいないとわかんないですね。
それなのに、人工芝をひけばいいだろうとか、
水で雪を溶かせばいいだろうとか、
クラブの経営努力でなんとかしろだとか、
訳知り顔で言われると、ホント、頭来ちゃいますよ。

ほんとうに冬カイだ! (パクッてしまってすみません)

posted by hibari | 2008-08-04 23:50

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