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2008年02月17日

コンサドーレへの道・第10回『Jバブルの崩壊(3)ー『Jリーグ崩壊』

 95年を境に、Jリーグバブルははじけました。
 前年まで、Jリーグを囃したててきたスポーツマスコミはこの年を境に手のひらを返したように態度を変えます。たとえば、「Jリーグ崩壊」という95年に出版された本。

 これは工藤健策さんというスポーツジャーナリストが書いたフィクションで、Jクラブへの出資企業の利益を省みず、理想ばかりを追う川渕(川淵ではありません)チェアマンに、危機感を抱いたj(小文字のj)リーグの人気5球団が、川崎ヴィルディ(笑)を先頭にして日本トップリーグという新リーグを結成する、というストーリーです。

 この本で展開されている論調は、その後のJリーグ叩きのマスコミ論調に共通するものなので、すこし紹介しておきましょう。

 工藤さんは、Jリーグ崩壊の原因にチーム数が多すぎることを挙げ、次のような弊害があるとしています。

 (1)試合のレベルの低下
 (2)チーム数が多すぎてファンがチームを覚えきれないという問題
 (3)チームが増える度に1チーム当たりの露出が減ること

 チーム数が多すぎることでリーム間の格差が広がり、首位の勝率が0.7を超え、最下位の(浦和レッズです)勝率が0.3というのでは、プロスポーツの興業として失格だというのです。そしてチーム数を絞りリーグ戦の後に上位チームがプレイオフを戦うメリカメジャーリーグの方式を導入するように提言しています。こうすることで、リーグ戦での優勝争い、プレイオフでの優勝争いと、ファンは何度でも緊迫したゲームを楽しむことができると言うのですね。

 チーム数が多くなることで試合のレベルが低下するという主張は、当時は頷けるものがあると思っていましたが、しかし今となっては、チーム数を絞り同じチームと何度も何度も対戦することで、試合のレベルが向上するのかは、はなはだ疑問です。

 また試合のレベルが下がるとファンがそっぽを向くと、工藤さんはこの本の中で何度も言っていますが、95年当時、どれほどの日本人がサッカー試合のレベルを判断できたのでしょうか。私自身にしてから、試合のレベルが何となくわかり始めてきたのは生観戦を100試合、200試合と続けてきたつい最近です。そしてある程度試合内容がわかるようになると、たとえJ2であっても内容的にレベルの高い試合があることがわかってきました。

 どうやら工藤さんが「試合のレベル」と言っているのは、サッカーの試合内容そのもののレベルではなく、優勝争いや、プレイオフへの進出争いなどの「話題」の大小、つまり話題の多い試合がレベルの高い、内容の濃い試合と言っているようです。そしてチーム数が多くなればなるほど「話題」のパイが小さくなると言っているんですね。

 こう俯瞰してわかるのは、工藤さんがJリーグに採用するように言っているのはプロ野球の運営コンセプトなんです。Jリーグの運営コンセプトが、プロ野球のものと異なった方向にあるので、長続きしませんよ、と主張しているのですね。

 さて95年にJリーグバブルが弾けた原因は、次のようなものではなかったかと思っています。

 80年代のプロ野球黄金時代に、プロ野球的な運営コンセプトにどっぷり浸ってしまったスポーツマスコミは、自分たちのパイをさらに広げてくれるものとして、Jリーグの登場を歓迎した。

 ところがJリーグの運営コンセプトが、慣れ親しんだプロ野球のものとは異質であるこに気がつく。そしてプロ野球のような運営コンセプト目指すように促した。ところがJリーグはそれを拒む。長年慣れ親しみ、心身に染みついてもいるスポーツ観が通じないと知ったスポーツマスコミは、Jリーグを異質なものとして手のひらを返したように排除し始めたと。

 こんな逆風の中、96年にコンサドーレ札幌はスタートします。そしてコンサドーレは、Jバブル崩壊の負を、今も背負うことになります。

(次回こそコンサが出てくる・・はずです)
 

posted by hm1644 |01:44 | コンサドーレへの道 | コメント(6) | トラックバック(1)

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Re:コンサドーレへの道・第10回『Jリーグ開幕(6)ー『Jバブルの崩壊』

ほう天下の奇書(w「Jリーグ崩壊」を買われましたか。私は立ち読みで済ませましたが。
http://www.horei.com/book_4-89346-476-0.html
ひばりさんが買われたのは上記の方でしょうがJリーグがフリューゲルス消滅などで大きく揺れ動いた1999年1月に新装版(前書きと後書きを追加しただけ)で緊急出版
されていますが、これが↓ここ読むと凄いらしいです。
http://takeyas-rail.way-nifty.com/weblog/2006/03/j_b4b7.html#comments
”外古屋(名古屋?)グランパスセブン”とか新装版と同じような校正ミスとか、ひばりさんが持っているオリジナルでも同じなんですかね?

ちなみに工藤健策という方この「Jリーグ崩壊」以外の著作は以下↓のような物あるようですが
http://www.tsutaya.co.jp/item/artist/ae_k00000001.zhtml?artid=B103219
見事にプロ野球関連ばかりで、これ見ると2ちゃんねるで言うところの”野球脳”の持ち主のようです(w

posted by EBT| 2008-02-17 05:27

Re:コンサドーレへの道・第10回『Jリーグ開幕(6)ー『Jバブルの崩壊』

EBT さん

 私の持っている本は99年に出た「新装版」です。けれど、ネタにしようと読み返すと、前書きと後書きを除いて、内容は95年の初版とまったく同じなので、今回の登場と相成りました。フリューゲルス消滅に合わせ、内容を改定することなく、初版のままあわてて再販したみたいです。ずいぶん前に買った100円本です。(私、100円本マニアなんです)

 リンクを読みましたけど、リンクで言うほどのトンデモ本ではありませんよ。考えられるいくつかの想定の中で、もっとも悪い想定を選択をし、さらにまた悪い選択をする、それを続けていくとこうなるのかな、というところで、一つ一つの想定はあり得るかなと、思います。

 あと、誤植は気づかなかったです。

 

posted by hibari| 2008-02-17 11:29

Re:コンサドーレへの道・第10回『Jバブルの崩壊(3)ー『Jリーグ崩壊』

初めまして。EBTさまのリンク先の主、たけやすです。
とんでもない時期にレスをすること、無礼承知ながら失礼します。

「Jリーグ崩壊」ですが、最近、逮捕される選手がでるわ、埼スタの暴動の当事者(当日はいなかったですけど、浦和のサポである以上、ほっかむりすることはできません)になるわ、代表の観客数の大幅減少があるわでよみ返しをしていたところ、たまたまリンクとして見つけまして。

そうですね…あれをトンデモ本にした理由ですけど、ワタシのエントリの他にも、
「野球のセリーグがjを崩壊させる手法として、そのスポンサー2社を引き抜いて、エキスパンションを行う」
と小説パートで書いておきながら、解説パートで
「多すぎるチーム」としてレッズの勝率の絶望的な低さを論拠としたところもあります。

「セリーグはエキスパンションしたらこの本で述べられる欠点(外国籍選手頼みになってしまう。人件費の高騰を招く)から逃れられるのか?」

事実後の「ダメ9」ではエキスパンション反対論者にあっさり鞍替えする始末。

この作者は、前に書いたことどころか、前の章で書いたことは、「ためにする議論のためならあっさりと忘却できる」らしい。

(ダメ9でも、「ダメにした選手として落合を書いておきながら、イチローを駄目な選手として述べるに当たって、落合を持ち上げる」という重大なミスをやらかしてる)

まぁ、後出しで批判するのは卑怯とも思い、お笑いに終始させることにしましたが、全体的に基礎知識の薄っぺらさが目立つ、目立つ。

※欧州サッカークラブは、すべてが資産家がクラブを保有し庶民にサッカーという娯楽を与え、自らの得るものはステイタスだけ(それに比して日本は…)
→ソシオ制を敷いているバルセロナは?元々バイエル製薬の保有するスポーツクラブから始まった、バイヤーレバークーゼンは?
まぁ、こんどブンデス1部にあがってくる、ホッフェンハイムのオーナーのディトマー ホップ氏にでも話を聞いてみたいところではある。
http://www.plus-blog.sportsnavi.com/tooor/article/8

※jプレミアをAFC交えたクーデターで創設させるくだりで、どうやってAFCではないアメリカ(USA)のMLSを参加させ得たのか?

最後は、(ワタシのエントリの再掲ですが)警察官のこの台詞が、あの本をトンデモ本とする引き金になりましたね。

「私はjリーグの選手が嫌いでね。彼らはチャラチャラするだけで、日本のスポーツが持つ道というものが感じられないんだ。」

posted by たけやす | 2008-06-07 18:29

Re:コンサドーレへの道・第10回『Jバブルの崩壊(3)ー『Jリーグ崩壊』

 たけやすさん。ようこそ、北のはずれへ。

 なんか、「中央」の有名人が突然、訪れたようで緊張したりして、

 さて、Jリーグ崩壊は、おっしゃるとおりの本ですが、私的にはひとつだけすごく教えれたことがあります。

 ナベツネがなんであんなにも1リーグ制にこだわったのか、チーム数の拡大に反対だったのか。それはプロ野球というパイを切り分けると、チーム数が多くなればなるほど、一切れが小さくなるんですね。
 
 久しぶりのJ1で、今、この事実を実感しています。以前にJ1にいたときはもっとパイの一切れが大きかったように思うんですが、今、J1で18、J全体では33。すごくパイが小さくなったという気がします。一方、パイの大きさは変わらないのに、切り分ける数を制限しているプロ野球(こっちでは日ハムですが)の一切れの大きいこと。

 これはまさにJリーグ崩壊の工藤さんの仰るとおりです。まぁ、でもだからといって、チーム数を制限することが決して良いことだとは思っていないんですが。

 今後ともよろしくお願いします。

posted by hibari | 2008-06-10 00:46

それが今、悩んでる所なんですよ…(Re:コンサドーレへの道・第10回『Jバブルの崩壊(3)ー『Jリーグ崩壊』

再びおじゃまします。
それでも首をひねるのは、もっと国土が大きくてビジター参戦が厳しいはずのUSA が、メジャーリーグが30球団も存在し得て、そのうえにNFLやNBAもあり、MLSがベッカムを呼びえたのか。

確かにプロ野球もJも「上からの近代化」であって、元からあった同好会(含:企業・団体の福利厚生事業=イングランドのアーセナルやクリスタルパレスも元はこれか…)等の盛り上がりではないのも事実ではあるが、その差はどこにあるのか。

暴動騒動の一応の裁定が下り、中断期間に入った今、たっぷりと悩もうと思います。

posted by たけやす | 2008-06-11 00:19

Re:コンサドーレへの道・第10回『Jバブルの崩壊(3)ー『Jリーグ崩壊』

たけやすさん 再びようこそ。

 たかしかに、ご指摘の日米の差。これは私も気になっていました。個人的には、音楽や映画なども含め、アメリカの大衆文化一般があまり好きではないこともあって、MLB、NFL、NBA等について、あまり情報収集をしたことはありません。

 それでも思うのは、あの国ではスポーツが持つ「文化の経済価値」が正当に評価されているのではないか、という感じはしますね。反対に日本では、長い間、プロ野球に限らず、入場料を取って見せるものは、歌舞伎とクラッシク音楽を除いて「見せ物」とか「興業」とかと言って、一段低いところに位置付けられてきたじゃないですか。

 でもプロスポーツが持つ経済価値は、もっともっと高いところにあり、その辺がアメリカでは正当に評価されている。反対に日本では不当に低く抑えられ、本来の価値との差分が読売新聞など親企業の利益になっている、ということはあるかもしれませんね。まぁ、思いつきですが。

 たけやすさんの熟慮熟考の結果を期待しています。

ps リンクに加えさせていただきました。

posted by hibari | 2008-06-11 22:30

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