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2007年12月25日

責任企業というロマン

これはコンサドーレ札幌インフォメーション 
http://www.phoenix-c.or.jp/%7Ehiro/bin/yybbs/yybbs.cgi
に投稿したものに加筆したものです。


 J1で安定的な地位を保つために、現体制を発展的に解消し、特定企業の子会社となって、資力のある責任企業に経営を委ねるべきであるとの意見があります。これは確かにコンサドーレの不安定は経営の問題の解決する最も有効な解法と思います。

 しかし、ここで懸念すべきは、そのような責任企業が存在するのか、ということです。

 J1で安定的な戦力を維持するために、責任企業の年間の負担額は10億、15億、20億という規模になると思われます。逆に言えば、これらの金額を補償できなければ、J1を安定的に保障できる責任企業とは言えません。そして、こうした巨額の金額を安定的に保障できるのは、売上で「兆円」単位、経常利益で「数百億円」単位の企業に限られると思います。

 いわゆる責任企業には二つのタイプがあると思います。

 一つはクラブを、企業コミュニティ、もしくは企業グループの象徴として位置づけ、投資としてのコストパフォーマンスを超えて支援してゆくパターンです。

 2001年、重電業界が不況に陥り、日立や東芝などが多額の損失を計上したとき、日立は、スポーツ事業の再検討を行い、レイソルとバレーボールの日立ベルフィーユを比較し、多くの栄冠を残してきたベルフィーユを廃部にしました。この時、レイソルの方が、企業コミュニティの活性化に寄与する度合いが高いというのが理由でした。

 トヨタや日産、三菱など、J1の多くの責任企業がサッカークラブを支えるのは、単に営利だけではなく、企業グループに属する何万にという従業員コミュニティの象徴としての意味があります。この点で、地域コミュニティの象徴である市民クラブと、理念的に近しい部分があります。

 こうした企業では、日本リーグ時代以前から何十年にわたってクラブを抱え、日本ではサッカーが6大学を中心としたインテリスポーツだったこともあって、経営陣の中に多くのクラブOBがいたりします。トヨタにしろ、日産にしろ、古川にしろ、日立にしろ、企業の歴史とクラブが深く結びついています。

 さてもう一つの責任企業には、コンサドーレ札幌を自社の利益追求の手段として利用するタイプがあると思います。

 しかし現実的な投資対象として、年間数十億の出資に見合う利益がコンサドーレ札幌から確保できるでしょうか。この点で、首都圏から遠く離れた札幌はきわめて不利といわざるを得ません。
 
 さらに、営利目的の投資としての責任企業は、投資対象としての魅力が札幌から無くなれば簡単に撤退が予想されるわけです。そのような企業に経営を譲渡することは、安定的な経営の維持にはつながりません。不安定な市民クラブを不安定な企業クラブに置き換えるだけとも見えます。

 ここで市民クラブが、横浜フリューゲルスの解散や平塚からのフジタの撤退など、企業クラブの問題を克服するテーゼだったことを思い起こしたいところです。一つの企業にクラブのすべてを預けてしまい、地域社会との関わりを絶ってしまえば当該企業が撤退したときにそのクラブは、地域からの支持も失われるでしょう。

 コンサドーレ札幌を営利追求のための投資対象としてみると、企業行動としてはニトリの年間3億が精一杯なのではないでしょうか。年間3億ではJ2の責任企業になれたとしても、J1の責任企業としてはまったく不足です。すなわち営利追求のためのJ1の責任企業というのは論理的に成り立たないというのが私の意見です。

 仮に、年間3億円程度が精いっぱいの中企業が買収して、親会社になったとしたら経営的には安定するかもしれませんが、コンサドーレ札幌は、その中規模会社の子会社に過ぎないのですから、今以上に他の会社からスポンサーを集めることは難しくなるでしょう。だから運営費が20億から30億は必要なJ1では、中途半端な企業の子会社にならないほうがいい、という見方もできるかもしれません。

 以上から、責任企業を考える場合、現実的に検討しなければならないのは、発足11年を経たコンサドーレ札幌を、目先の収支を超え、企業の象徴として受け入れ、年間10~20億もの資金を10年、20年と長期にわたって安定的に供給してくれる企業が、はたして日本(世界でもいいんですが)にあるかどうか、だと思います。

 そして現実的には、そのような企業、もしくは企業グループは存在しないと私は思います。「責任企業」待望論も、市民クラブに過大な期待を寄せることの裏腹の「ロマン」だと思います。


 

posted by hibari |21:47 | コンサドーレあれこれ | コメント(4) | トラックバック(1)