2006年07月10日
【小説】居酒屋こんさどおれ 第七話
この物語はフィクションであり、実在の人物、団体とは関係ありません。 居酒屋こんさどおれ 第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 第六話 第七話 幹事さん
いつものように山本さん(第一話参照)が「コンサドーレまた負けたね~。ほんと弱いね~」とのれんをくぐりながら入ってきたとき、ハル君(第二話参照)の表情が変わった。ぎょっとした表情で、目をまんまるに開いて入口から入ってきた山本さんを見上げた。 「あ、ごめんなさいね。」と山本さんもちょっときまりが悪そうだった。 山本さんは普段はだいたい開店時間のあとすぐに来るので、大抵はその日の最初のお客なのだが、この日はハル君が開店前から店にいた。今度仲間と居酒屋こんさどおれで飲み会をやるんで、その打ち合わせに来ていたのだ。 「この子はハル君と言って、あのゴール裏で飛び跳ねてる子なんですよ」 ゲンさんは山本さんにハル君を紹介した。 「や、悪気はないんだ。ちょっとゲンさんからかっただけで。そうか、ゴール裏で飛び跳ねてるんだ。すごいねー」と山本さんはハル君に言うがハル君は「はぁ、いや、別にすごくないです」とそっけない。というか、明らかに怒っている。 「山本さん流のいつものあいさつなんで、ハル君も気にしないで」とゲンさんはフォローする。 「山本さんって言うんですか。どうも・・・」ハル君は小声で山本さんにそう言ったあと、ビールを飲んで黙ってしまった。 さすがに山本さんもきまりが悪かったようで、いつもは2杯飲むビールもこの日は1杯だけで「じゃ、ゲンさん、今日はこれで帰るわ。」といって30分で帰ってしまった。 再び店内はゲンさんとハル君の二人。 「ゲンさん、さっきの人・・・コンササポが来る店ってわかってるんだからあんなこと言えば気分悪くなるのわかってるだろうに。なに考えてんだか」 ゲンさんは洗い物の手を一旦休めて、ハル君に言う。 「山本さんはサポってわけじゃないけど、あれはあれでコンサドーレのことを気にしてくれてるんだよね」 「まあわかるけど、でもそれはサポのいないところで言ってくれって」 「うーん、ぶっちゃけウチの店も、サポのお客さんだけでは経営成り立たないし、山本さんみたいな人も大切なお客様なのよ。実際、そういう人結構いるもんだよ。コンサドーレ弱いなーって言う人。まだJ2だっけ?とか。それでも、オレにしてみたらコンサドーレって単語が口に出るだけで嬉しいから、中身が悪口でも気にならないんだよね。」 ゲンさんはじっとハル君の瞳をのぞき込むが、ハル君は視線を下に落としてしまう。 「ゲンさんはそうかもしれないけど、オレはやっぱりムッときちゃうな・・・」 「まあ、感じ方はひとそれぞれだけどね。いいとか悪いとかそういう問題でもないから。ま、そんなことより飲み会の幹事さん、よろしく頼みますよ!」 ゲンさんはカウンター越しにハル君の肩をぽんと叩き、「じゃ、幹事さんにはビール一杯サービス」と言ってビールのお代わりをハル君に渡した。ハル君はそのビールをググッと飲むと、この日はじめて笑った。
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posted by たじ |09:17 | 小説 | コメント(2) |
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この記事に対するコメント一覧
Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第七話
第1話がここで活きましたか。他のエピソードと比べると、正直第1話が一番地味かなと失礼ながら感じていたのですが、この第7話で第1話が活きましたね。そして、再び読み返すと第1話がおもしろく感じますね。うまいですね。
今度はハル君と中原君のお嫁さんマキちゃんを同時に出演させて欲しいですw。
ってこんなえらそうに論評書いて大変失礼しました。
5周年おめでとうございます。
posted by こんびに| 2006-07-11 10:00
Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第七話
>こんびにさん
いつもコメントありがとうございます。
今までの登場人物を絡ませるというのは、意外と難しいです。
もっと簡単にできるかなと思ってたんですけど。
現在ネタが切れてきまして、次があるかどうか・・・・
posted by たじ| 2006-07-12 10:01