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2006年06月12日

【小説】居酒屋こんさどおれ 第三話

この物語はフィクションであり、実在の人物、団体とは関係ありません。

居酒屋こんさどおれ
第一話 第二話
第三話 今週の一皿

「さとみちゃん、ちょっとこれ食べてみて」

ゲンさんはメニューにはない料理をさとみちゃんの前に差し出した。
さとみちゃんは28歳のOL。CVSもやっている。姉御肌で言いたいことははっきり言うけど、後を引かないサッパリした性格なので、新メニューの試食にはさとみちゃんがピッタリだな、とゲンさんは思っている。

「新しいメニュー作ろうかなと思って試作してみたんだけど」

「これ何?」

「しまふくごはんってあるでしょ。あれを自分流に再現してみたんだけど。これはしまほっけの胡麻焼き」

「何が新しいメニューなわけ?パクリじゃん」

「ま、そう言わないで。しまふくごはんって限定500食でしょ。だから実際には食べたくても食べられない人たくさんいるんだから、そう言う人のためにも、オレが再現する意味はあるの!」

「苦しい言い訳だねぇ」

さとみちゃんはそう言って、やや冷めた視線で目の前に置かれた「しまほっけの胡麻焼き」を見た。一口、二口食べたところで、ゲンさんの「早く感想を言え」という視線を感じた。

「あのね、ゲンさん、しまふくごはんってね、りょうぼさんの優し~い味がするでしょ。で、これはパクって自分のメニューにしようっていうゲンさんのヨコシマな味がするわ」
「・・・。あ、そうですか。もう食べなくていいです」

ゲンさんはさとみちゃんの前にある皿を取り上げようとする。さとみちゃんは慌てて「ウソ、ウソ、ウソ。ホントはこれオイシイって」と言ってゲンさんからしまほっけの胡麻焼きを取り返して一気に全部食べきった。

「やっぱりねぇ、これはしまふくごはんからメニューパクらなきゃならないほどせっぱ詰まった居酒屋店主の涙の味がする。しょっぱい」

「そういうのはもういいから。もう少しましな感想無いの?」

「しょっぱいってのは本当。やっぱりほんもののしまふくごはんよりゲンさんの味付けの方が少し濃いんじゃないかな。まあ、でも居酒屋メニューとしてはこれくらいがちょうどいいかもね。おいしかったよ。結構いけると思うよ、これ」

というわけで、毎週、過去のしまふくごはんのおかずの中からゲンさんがセレクトしてゲンさん流に再現された料理が「今週の一皿」として週替わりメニューになったのだ。さすがにしまふくなんとかって名前をつけるのはゲンさんも気が引けたようだった。
さとみちゃんも居酒屋こんさどおれに来るたびにこれを注文する。

「ゲンさん、ビール一杯と、砂肝、あと、パクリ一皿ね!!」

posted by たじ |10:52 | 小説 | コメント(2) |

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この記事に対するコメント一覧
Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第三話

感想遅くなりましたが、今回も良いですね!! 第4話が楽しみです。今度は夫婦ですかね。

posted by こんびに| 2006-06-14 10:32

Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第三話

>こんびにさん
うっ、なかなか鋭いですね(笑)

posted by たじ| 2006-06-15 10:00

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