2006年06月05日

【小説】居酒屋こんさどおれ 第二話

この物語はフィクションであり、実在の人物、団体とは関係ありません。

居酒屋こんさどおれ
第一話
第二話 コンサドーレの神様

ハル君は大学三年生だ。居酒屋こんさどおれから歩いて15分のところにある大学に通っている。彼はUSではないが、コンサドーレ札幌のゴール裏ほぼ中央くらいで常に応援している。

「サポーター同士で結婚したカップルってあるでしょ。あれってどうやって付き合うようになったんでしょうねぇ」

ハル君は焼酎のウーロンチャ割りを飲みながら、ぼそっとそんなことを言った。

「どしたの急に。結婚したくなったの?」

ゲンさんは笑いながら彼がこの後どういう話をするのか興味津々である。

「結婚どころか、それ以前に彼女がいない。どうしたら彼女できますかねぇ」

中年のオジサンに大学生の恋愛相談の相手がつとまるかははなはだ疑問ではあるが、ゲンさんは聞いてみた。

「大学には女の子いないの?」

「ウチのゼミは男ばっかりだし。隣のゼミには女の子もたくさんいるんだけどね。たまにね、その隣のゼミと飲み会とかあるわけですよ。でもね、コンサドーレの試合があるからって、飲み会2回くらい断ったら、もう全然誘われなくなっちゃいましたよ」

「でも飲み会って普通夜でしょ。昼間の試合のあと夜いけばいいじゃない」

「なにいってるの、ゲンさん。試合の後はサポ仲間で勝てば祝勝会、負ければチクショウ会にきまってるじゃない」

じゃあ、その祝勝会をウチの店でやってくれ、とゲンさんは思うのだが、ハル君はさらに続ける。

「それでまあ、大学で彼女を見つけるのは無理っぽいなと。そしたらあとはコンササポで彼女見つけるしかないじゃない」

大学で彼女ができなければコンササポで見つけるしかないというのは困ったものだ。

「ゴール裏にも女の子たくさんいるでしょ」

「それがさあ、オレって「オマエラもっと声出せ」とかガナっちゃってるでしょ。で、ルックスもこんなんだし、なんか女の子には怖がられてるみたいなワケ」

ハル君はスキンヘッドなのだ。
去年、酔った勢いでサポ仲間に「明日は絶対にオレがコンサドーレを勝たせる。万が一負けたらスキンヘッドになってやる」と宣言してしまった。残念ながら試合はロスタイムにオウンゴールを相手に献上しての敗戦。サポ仲間には「オメエのオウンゴールだ。とっととスキンヘッドにしてこい」と言われ、引くに引けなくなってスキンヘッドにしたのだ。実際にはいざスキンヘッドにすると頭が涼しくて気持ちいいのでハル君はその後ずっとスキンヘッドのままだ。
つり目がちなハル君は確かに一見怖そうである。たとえて言うと関隆倫から愛嬌を取ったような感じだ。

ハル君の女の子にモテない話はまだまだ続くのだ。例えば高校時代、初めて彼女が出来た時の話。あまりサッカーに興味のない彼女を無理矢理コンサドーレの試合に連れて行ったのだが、応援に夢中になり、彼女と一緒に来ていることをすっかり忘れてしまっていた。気が付いたら彼女は先に一人で帰ってしまったとか。

ハル君の話は、女の子にモテないという話のつもりが結局は自分がいかにコンサドーレを愛しているか、という話になってしまうのだ。こりゃあ、しばらく彼女は無理かな、とゲンさんは思うのだが、その場の思いつきで気休めになればと言ってみた。

「そんだけコンサドーレを愛してるんだから、きっとコンサドーレの神様がいい出会いを作ってくれるんじゃない?」

「なに、そのコンサドーレの神様って。そんな神様いたらさっさとJ1に昇格させてくれっての」

ゲンさんとハル君は顔を見合わせて大笑いした。

posted by たじ |10:03 | 小説 | コメント(4) | トラックバック(0)

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この記事に対するコメント一覧
Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第二話

さらに文学作品らしくなっています。後半徐々にハル君の人となりを説明するのが巧いですね。高校時代のエピソードをいれるのもいい。

posted by こんびに | 2006-06-05 11:06

Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第二話

なんとなくハル君は「奈良らっきょ」の目をつりあげた顔のような気がします。

posted by まじっく | 2006-06-05 21:01

Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第二話

なんだかこういう男の子いそうw
たじさん、ほんと上手いです。

posted by ゆり | 2006-06-05 21:30

Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第二話

>こんびにさん
ご丁寧な講評をいただきありがとうございます。
どこまで続くかわかりませんが、これからも頑張ります。

>まじっくさん
あ、らっきょ。そういえばそうかもしれないですね。

>ゆりさん
モデルとなる人物がいるわけではなく、あくまで想像ですけど、「ほんとうにいそう」と思って頂けると嬉しいです。

posted by たじ | 2006-06-06 14:30

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