2006年06月19日
【小説】居酒屋こんさどおれ 第四話
この物語はフィクションであり、実在の人物、団体とは関係ありません。 居酒屋こんさどおれ 第一話 第二話 第三話 第四話 二番目に
「ちょっとゲンさん、聞いてよ。ホントアッタマきたんだから!」 マキちゃんは頭から湯気を立てるようにまくし立てた。隣に座っている中原君は少し心配そうな顔をしている。マキちゃんと中原君は社内恋愛である。中原君27歳、マキちゃん25歳。 「こないだ池様の誕生日だったでしょ。当然私は手作りクッキーを持って行って連見のあとファンサの時池様にプレゼントして、一緒に写真も撮ってもらったのよ」 「その写真撮ったのは中原君?」 ゲンさんは中原君の方を見て聞いてみた。 「・・・はい」 そんなやり取りは無視してマキちゃんの話は続いていく。 「でさ、その時に後ろの方からなんか言ってるヤツがいるわけ。デブメガネが!」 だんだん声のボリュームが上がってきた。 「ああいうミーハーがちやほやするから、選手が甘えるんだ、だと!!」 マキちゃんの左側に座っている中原君は、右手でマキちゃんの肩を軽くぽんぽんと叩いた。そう興奮するな、という意味なのだと思うが、中原君は黙ったままだ。 「いや、マジメにね、このデブメガネ、ヌッコロス!って思ったんだけど、このおしとやかなマキちゃんが池様がいる前でヌッコロスなんて言えるわけないじゃない。その時は我慢したけど、もう涙、涙、乙女の涙よ~」 そう言いながら、マキちゃんは飲んでいた水割りのグラスをドンと置いた。 「乙女って・・・」 マキちゃんがジロリと中原君を睨む。余計なツッコミ入れるなと目で言っている。 「池様一筋の彼女をもって中原君も大変だよね。どうなの本音は?」 ゲンさんは二人のやり取りをおもしろがっているようで、煽るように中原君に聞いた。 「マキちゃんはオレのこと「世界で2番目に好きだ」って言うんだよね。正直ビミョー」 「じゃあ聞くけど、中原君はなんか一つでも自分の方が池様よりいいところがあると思ってるわけ?」 だんだんマキちゃんのろれつが怪しくなってきた。 「まあ、中原君のことはどうでもいいわけよ。で、そのデブメガネなんだけど、私はいいのよ、私は。ミーハーだなんだって言われても。言いたいヤツには言わせとけって。でも池様に対して「甘え」とはなんだ!それだけはぜっっっったいに許せない!!」 怒りのパワーでハイピッチで水割りをあおるマキちゃんの様子に、中原君はそろそろヤバイと感じたのか、マキちゃんの肩を軽く抱き寄せながら、マキちゃんが右手に持っていたグラスをそっと手から離した。 「中原君って優しいね~」 マキちゃんの口からこのフレーズが出るとだいたいマキちゃんのお酒の定量だ。彼女は普段は池様一筋と言っているせいか、酔ったときしか中原君に愛情のこもった言葉を言わない。照れ屋さんなのだ。すっかり酔ってしまったマキちゃんはカウンターに伏してしまった。中原君はカーディガンをマキちゃんの肩にかけてやり、優しく頭を撫でている。 マキちゃんが寝言なのかうわごとなのかよくわからないまま何か言っている。 「・・・中原君大好き。・・・・二番目に」 それを聞いたとき、マキちゃんの頭を撫でていた中原君の手が一瞬止まり、ぺしっと頭を叩いたのを見て、ゲンさんは吹き出しそうになった。
posted by たじ |10:23 | 小説 | コメント(2) |
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この記事に対するコメント一覧
Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第四話
来ましたね第4話!!
>「その写真撮ったのは中原君?」
>ゲンさんは中原君の方を見て聞いてみた。
>「・・・はい」
この部分がすごく好きですw。第5話は親子と予想してみます。父親と娘。
posted by こんびに| 2006-06-19 15:31
Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第四話
>こんびにさん
そこに来ましたか(笑)
そろそろネタが切れてきそうです・・・
posted by たじ| 2006-06-20 09:36