2006年06月26日
【小説】居酒屋こんさどおれ 第五話
この物語はフィクションであり、実在の人物、団体とは関係ありません。 居酒屋こんさどおれ 第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 合コン
石山さんと須永君は49歳と25歳で二回り違う、食品会社の上司と部下だ。須永君が新入社員で会社に入ったときのこと。「コンサドーレを応援している」と須永君が言ったその時、石山さんの目がキラーンと光った。 「よし、じゃ来週の厚別、オレと一緒に来い」 「石山課長も厚別行くんですか。どこの席で見るんですか。私はSAですけど」 「なにがSAだ。お前若いんだから当然ゴール裏だろ。オレと一緒にゴール裏に来い」 「でも、SAのチケットなんですけど・・・」 「いいんだ、そんなの。そのチケットでB自由に入れるから」 これをきっかけに二人は毎試合一緒に応援するするようになったのだ。 会社ではコンサ狂いコンビと言われているこの二人だが、居酒屋こんさどおれにも二人揃って来てくれるのである。 「こないだススキノに飲みに行ったんですよ」 須永くんは豚串を食べながら石山さんに言った。 「そしたらたまたま、コンサドーレの選手がいたんですよ、その店に」 「誰?」とゲンさんが須永くんに聞くが須永くんは「それはちょっと・・・」と口を濁した。 「よくよく見たら、それって合コンなんですよ。男5人女5人かな。」 「合コン?」 石山さんは語尾を少し上げ気味に怒り口調で言った。 「あんな試合のあと合コン行くってのはどういうつもりなんだ」 コンサドーレは、先週の土曜日、最下位の徳島相手にホームで1-2の敗戦を喫したのだった。石山さんがススキノで選手を見たのはそのあとのことらしい。 「でも、プライベートで何するかは自由じゃないですか」 須永君は石山さんに反論する。 「そりゃ自由だ。だけど、あんな試合の後で合コン行くって、そんな根性だから勝てないのよ。ってかお前も合コンとか行くの?」 「まあ、たまに合コンくらいしますよ、僕も」 「だから合コンかばうのか。なるほどね。もちろん、仕事をちゃんとしてればプライベートでなにやったっていいさ。その仕事がちゃんと出来てないのにちゃらちゃら遊んでれば「バカヤロー」って話になるだろ。だからあんな情けない試合になるんだっての」 「でも、試合の後合コンしたんだったらあの試合負けたのは合コンと関係ないですよね」 仕事ではどうかはわからないけれど、須永君はことコンサドーレの話に限っては、この二回り年上の上司相手に一歩も引かないのだ。ゲンさんは毎度ハラハラしながらこの二人の会話の行方を見守っている。 「まあ、そうだが。でも、お前はまだ若いからわからないかも知れないけど、周りからどう見られるかってのは重要なのよ。別にサッカーに限らない。仕事が出来ないヤツが遊び回ってれば批判されるのは当たり前だ」 「でも、息抜きとか気分転換ってのは必要ですよね。試合に負けたからって息抜きも気分転換も出来ないってのは無茶だと思いますけど」 「気分転換にもやり方ってのがあるだろ。別に合コンしなけりゃ気分転換できないってわけじゃあるまいし。特にな、サッカー選手なんてのはどこで誰に見られてるかわからない訳よ。あんな試合のあと合コンしてるところを見られたらどう思われるかってことまで考えろってことだ」 「要するに石山課長みたいな人がいるから気を付けろ、ってことですか」 二人のやり取りは見慣れているゲンさんも心配になってきた。たまたま須永君がそうなのかもしれないが、今の若い人はみんな上司相手にここまでストレートに言っちゃうものなのだろうか・・・。また、石山さんにも心配なクセがある。コンサドーレの話をしているのに、それを仕事の話に絡めてしまうのだ。 「ん、須永、お前そうやって偉そうなこといってるけど、先週の会議のあの資料はなんなんだ。お前も合コンとかやってチャラチャラしてるから仕事に身が入らなくて、あんな資料作ってるんじゃないのか」 ああ、やっぱりそういう展開になったか。ゲンさん、この話になんとかうまい着地点をつくってあげなきゃヤバイと思ってこう言った。 「石山さん、まぁ、合コンくらいならまだマシな方じゃないですか。飲酒運転して事故るとか、酔って女性に暴行するとかよりはマシですよね」 ゲンさんは「そりゃそうだな、わはは」となると思ったのだが、現実はそうは甘くなかった。 「ゲンさん、それは言うな。シャレにならねえ。全然笑えない」 石山さんは鋭い目でゲンさんを睨んだ。 ゲンさん、着地に失敗。
posted by たじ |15:46 | 小説 | コメント(5) |
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この記事に対するコメント一覧
Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第五話
ゲンさん、着地に大失敗ですね。
飲酒・・・の方は、他のチームで大活躍ですし、
暴行・・・の方は、サウジアラビアにいるようですし、
良くも悪くもいろいろあったなと、かんじています。
24日の東京V戦、残念ながら所用で厚別観戦を辞退しました。
でも、たこ焼きは買いに行きましたよ。
近くの公園で、3種類を2人の子供と完食です。
赤黒、初めて食べましたが、これもうまかったです。
たじさんに声をかけようと思いましたが、大勢の方が私の後ろに
並んでいましたので、そのまま帰ってきてしまいました。
今度、また伺います。
posted by ヨロシー| 2006-06-26 17:01
Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第五話
うっわ~・・・・これは・・・イタイ。
でも、飲酒・・・のあんちくしょうを心で応援している私・・・
posted by ゆり| 2006-06-26 23:31
Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第五話
>ヨロシーさん
ご来店ありがとうございます。
試合後にいらした方でしょうか?
これからもよろしくお願いします。
>ゆりさん
最近特にJ2得点王で目立ってますから余計に笑えない感じ・・・
posted by たじ| 2006-06-27 10:04
Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第五話
>たじさん。
AM10:30頃、伺いました。(車で乗り付けました)
その日は、午後から家を空けれない用事が入ってしまい、
残念ながらテレビ観戦でした。
こういう日に限って、あのような結果になるわけです。
非常に心残りです。
(強引に行けば良かった・・・。)
posted by ヨロシー| 2006-06-27 13:31
Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 第五話
>ヨロシーさん
10:30頃ですか。
なんとなく覚えているような・・・記憶がはっきりしなくてすみません。
これから何回でもいい試合は見れるはずなので、そんなに残念がらなくてもきっと大丈夫!・・・なはず。
posted by たじ| 2006-06-28 12:00