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2007年07月11日

「フットボールを読む」夏の10冊・前編

夏。

読書感想文の課題を出されて悩む夏。

まあそんな(自分にとっては)10年以上昔の話は置いといて、夏はそういった学生たちの需要を当て込んでいろいろな出版社が「夏の100冊」みたいなフェアを出す季節でもある。以前は戦前の作品や海外文学、ノンフィクション作品も多く取り上げてきたが、最近はエンターテイメント性の強い作品や、いわゆる「ライトノベル」と呼ばれるジャンルの作品も並べられていて時代なんだなあと思わせられたりしている。まあリアルで読書感想文書く世代の人はがんばってください。
そういったノリで、フットボールにまつわる本をセレクトしてみた。さすがに文庫だけというわけにはいかないのでハードカバーも含めて、それでもって100冊も紹介できないので10冊ということで。今回はその前編、ということで5冊を紹介。今日の5冊は「熱い」5冊として、考えさせられるというよりも思わず気持ちを動かされるような本を選んでみた。

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posted by ishimori |22:14 | books | コメント(0) | トラックバック(1)

2007年06月11日

希望の話をしよう――鈴木謙介「ウェブ社会の思想」

久しぶりに書評(っぽいもの)をしてみる。

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鈴木謙介「ウェブ社会の思想―〈遍在する私〉をどう生きるか」

ここでもさんざん語っているんだけど、著者の鈴木謙介氏というのは新進気鋭の社会学者で「文化系トークラジオ Life」というラジオのパーソナリティーを務めている人で、氏を知ったのもこのラジオから。社会学者なんだということを知って、著書「カーニヴァル化する社会」を読んだのがこの本を読むにいたった経緯、というところか。ちなみに仲俣暁生津田大介佐々木敦などのようにこのラジオではじめて知ったり、名前だけ知っていたけれどのちに深く知るようになった評論家や編集者、その書籍というのも多い。

さて、本の中身に戻ろう。
「ウェブ社会の思想」とタイトル(そしてイラストはASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットなどを手がける中村祐介、という素晴らしいセンス!)が付けられているように、ウェブ社会(=情報化社会)によって人間の思想や生活はどう変わっていくのか?というようなテーマだと思ってまずは読んだ。
そしたら不覚にも、読んだあと泣きそうになってしまった。
社会学の本を読んで泣きそうになるなんて、はじめてのことだ。

この本は「ウェブ社会が何をもたらすのか」というテーマの本じゃない。
いまの社会の向こう側にある「希望」をひたすらに求め続ける本だ。僕らの未来にある「希望」を見出すための本。これはそういう本だ。そのために本書は現代の情報化社会の現状と未来、それらがもたらす人間への影響を深く論考している。ユビキタス、バーチャル、それらが招くネットワークの変化の波を抜けた向こうに見えるであろう「希望」が、この本のテーマだ。


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posted by ishimori |23:39 | books | コメント(1) | トラックバック(2)

2007年02月20日

恥を知れ!しかるのち死ね!――極私的書評『夜は短し歩けよ乙女』

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森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』

本屋でその装丁に惹かれて買っていこうかなと思っていたらとんでもない人気らしくたちまち消えてしまっていて、重版になってやっと並べられた「夜は短し歩けよ乙女」をようやく買い求めることができた。
そんで一気に読み終わって一言目の感想。なんてキュート!

間違えば完璧にストーカーとして引っ立てられるであろう(いや、すでにそうかもしれない)主人公の「先輩」が、片思いの彼女の気を引くべく、なるべくできるだけ多く彼女の目にとまろうとすべく京都の町を駆け回る。夜の木屋町から先斗町で、夏の盛りの下鴨神社で開かれる古本市で、晩秋も深い学園祭の大学構内で、風邪の風吹く真冬の高野川で、北白川で、今出川通で、四条河原町で。主人公が追いかけるのは黒髪でひよこ豆のような後輩の彼女。けれども主人公とちょっと天然っぽい彼女はすれ違うばかりで……という、四季それぞれの京都を舞台とした連作小説。果たしてこの本をどのようにジャンル分けすべきか。作者がデビューしたジャンルであるファンタジーか。すれ違いの平行線を歩み続けるボーイミーツガールの恋愛小説か。どうにもこうにも分けられることができないが、なんとしても面白いことだけは確かである。


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posted by ishimori |20:41 | books | コメント(0) | トラックバック(1)

2007年02月06日

ななめ上から見上げるフットボール――小田島隆「サッカーの上の雲」


サッカーの上の雲―オダジマタカシサッカ~コラム大全

司馬遼太郎の本ではありませんよ(挨拶)。

小田島隆という人は生粋のサッカー畑ではなくていろんなコラムを書いている人なんだけど、この人がサッカーを語るとこんなに面白いのかと爆笑しながら読んでました。
だって2つめのコラムのタイトルがいきなり

「伸二の食生活が心配だ!」

ですよ。

小田島氏は浦和サポなので当然浦和系の話が多いんだけど、その合間に挟まれるいろんな選手のことを主に妄想をネタにして書いてます。たとえば伊東輝悦が年に一度見せるか見せないかの長距離ドリブル(ただし20メートルくらい)の美しさとか、服部年宏のニヤつき具合とか、大熊清の大声とか。そういう「ななめ上からだけ見えるフットボール」について語っていて、読んでいると思わずニヤニヤしてしまう。かしこまった「〇〇戦記」とか、プロのスポーツライターの書いたルポなんかもじっくりと読むのもいいけど、小田島氏でしか書けないであろうこのコラムも一読の価値あり。
(どうでもいいが、「伊東輝悦」も「服部年宏」も一発で変換できた。すごいぞATOK!)


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posted by ishimori |22:22 | books | コメント(2) | トラックバック(1)