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2008年01月28日

芸術とスポーツ~フィギュアスケート

フィギュアスケートの全米選手権が終わった。
女子は凄まじい勢いで世代交代が進んでいる。

優勝はミライ・ナガス(長洲未来、14歳)。2位レイチェル・フラット(15歳)、3位アシュリー・ワグナー(16歳)、4位キャロライン・ジャン(14歳)。

2006年世界選手権優勝のキミー・マイズナーは7位に沈んだ。
ここで問題になるのが、フィギュアスケート界に存在する年齢制限問題。トリノオリンピックの時、浅田真央の出場可否を巡って起きたあの問題である。今回の上位4人の中で、3月の世界選手権に出場できるのはアシュリー・ワグナーだけ。米国スケート界も頭の痛いところではなかろうか。というのも、世界選手権の成績によって翌年の世界選手権の各国出場枠が決まるからである。現在3名の出場枠を持つ米国は、来年も3枠を維持するには出場選手中上位2名の合計順位が13位以内でなければならない。キミー・マイズナーが不調の今期、スケート大国アメリカといえども今回の世界選手権で3枠を維持するのは容易ではなさそうだ。

それにしても、あまりにも上位がミドルティーンばかりなのには驚く。若くて世界トップに立つ選手は今までにもたくさんいた。伊藤みどり、オクサナ・バイウル、タラ・リピンスキー、ミシェル・クワン。みな10代半ばのうちから世界で活躍してきた。そう考えると、浅田真央、キム・ヨナに続きアメリカの新星が続々と登場するのも別段不思議なことではないのかもしれない。

ただ、今の女子選手に若い選手が多いのは、新採点方式の影響というのもあるのではないかと思う。新採点方式では、技の点数を積み上げて合計得点を出すので、全体的な印象としての「優雅」とか「幼い」とかというものが点数には反映されにくい。技術主体の勝負となると、女性の場合、発育途上の身体の小さな方が軽業師的にジャンプを飛べたりするので点数を取りやすいということがあるのだろう。女性は成長して大人の体型になると、どうしても身体が丸みを帯び、脂肪も付いて子供の頃のようには身軽にジャンプできなくなってしまうものである。但し、伊藤みどりだけは例外。伊藤みどりのジャンプは軽業師のジャンプではなく、圧倒的な脚力がもたらしたパワーのジャンプなので、年齢を重ねることでジャンプはより磨かれていった。
本格的に新採点方式が採用されたのは2004年から。その時点で世界の舞台で戦っていた選手達は皆、新しい採点方式の対応に苦労していたように思う。しかし、今のミドルティーンの選手達は、子供の頃からその方式になれていて、それに適応した練習を子供の頃から積んでいる。そのことも強みではないか。

女子選手の若年化。この傾向が今後続くのかどうか。今回の全米選手権の結果は一つの分岐点になるかもしれない。かつてカタリナ・ビットは伊藤みどりを評して「観客はゴム鞠が跳ねるのを見に来ているわけではない」と言った。フィギュアスケートにおける「芸術」と「スポーツ」の問題は古くからある問題であり、新採点方式の採用は、一義的には不正ジャッジ防止という意味があったが、大局的には「芸術」よりも「スポーツ」側に舵を切ったといえる。それから4シーズン、その功罪、評価がなされる頃になってきたと言える。新採点方式の見直しということも今後考えられないわけではない。
フィギュアスケートはプロのショービジネスも存在しているわけで、競技としてのフィギュアスケートの立脚すべき点はどこにあるのか。「芸術」と「スポーツ」の問題は、いつでもフィギュアスケートについて回る。しかし、高いレベルでの「芸術」と「スポーツ」の融合こそフィギュアスケートの最大の魅力であり、その魅力を失わないような適切な舵取りがなされることを期待したい。


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posted by たじ |13:53 | スポーツ | コメント(0) |

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