スポンサーリンク

2009年12月08日

GPF~東京大会

フィギュアスケートのグランプリシリーズのファイナルが日曜日に終了しました。今回のファィナルは東京大会。この大会はジュニアの大会も同時開催で、テレビ朝日ではCSのテレ朝チャンネルを含めて全競技放送なので、普段あまり見れないジュニアの選手も見ることが出来ました。今大会はジュニア、シニア含めてアイスダンス以外は日本選手が出場しているので、一通り振り返ります。

長いのでたたみます。

【ジュニア・ペア】
日本からは高橋成美/マービン・トラン組が出場。現在日本のペアというのは事実上このペアしか存在しない。だから日本のペアの今後の行方はすべてこのペアにかかっていると言っていい。ジャパンオープンでこの組を見た時は、シニアに混じっての演技だったので、パワーもスピードも演技力も、何もかも見劣りしていたのだけど、さすがにジュニアの中で見れば結構このペアも頑張れてます。結果はショート、フリー共に2位で総合も2位。トランにはもう少しパワーアップしてほしいところ。なる(高橋成美の愛称)は小柄で軽いのだから、トランがパワーアップすれば、リフトもスローももっと見栄えのするようになると思う。それにしても、なるは小柄で可愛らしい外見によらずに喋るとチャキチャキなので本当に面白くて見飽きない。日本スケート界のムードメーカーとしても期待大です。
ちなみに優勝したのは中国の新兵器、隋文静/韓聡組。さすがにペア王国、凄い人材がジュニアにも用意されていた。とにかくスロージャンプの飛距離と高さが半端ではない。スロートリプルは完全に回りきってから着氷しているのだが、スローが高すぎて将来的には足の故障のリスクが高いのが心配だ。それにしても女性の方の隋文静はまだ14歳。おとぎの国から飛び出たようなキュートなルックスと豊かな表情には圧倒される。

【ジュニア・男子】
日本からは羽生結弦(はにゅう・ゆづる・14歳)と中村健人が出場。羽生はこのジュニアグランプリ2連勝のトップの成績で出場。優勝が期待されていたが、その期待通りに見事優勝。王子様系の甘いマスクと長くてしなやかな手足。男子でありながらビールマンスピンもこなす柔軟性。若き頃のプルシェンコ(露)を彷彿とさせるといったら言い過ぎだろうか。いずれにせよ将来の日本のエースとなるべき人物なのは間違いない。今期はジュニア世界選手権でもぜひタイトルを取ってほしい。
ただ、今回の大会の優勝は、決して圧勝ではなく僅差の優勝であった。二位の宋楠(中国)とは1.78点差。宋楠はとにかくジャンプが美しく、かつ安定していてTESではショート、フリー共に羽生より点が高かった。今後この二人はライバル関係になっていくのではないかという気がする。
中村は今回全く精彩がなく8位に沈んだのは残念であった。

【ジュニア・女子】
女子は村上佳菜子(15歳)が出場。村上も男子の羽生と同じく、シリーズ2連勝のトップ通過。女子はジュニアの年齢でもシニア参戦している選手もいるので、このグランプリシリーズは確実に手にしておきたい。その村上はショートは2位だったがフリーで逆転優勝。フリーでのステップで引っかかって転倒したのは痛かったが、その他はジュニアクラスでは文句のない素晴らしい演技。彼女の魅力はスピード感溢れる元気いっぱいのスケーティング、そして笑顔。現在山田満智子コーチの指導を受けていて浅田真央の後輩である。山田門下からは本当に笑顔の素敵なスケーターがどんどん生まれてくる。真央以降日本女子も新しい人材がなかなか育ってなかったが、ようやく村上佳菜子が登場して女子も新時代が到来する。ひょっとしたら今月の全日本選手権でうまくいけば表彰台に登る可能性だってあると思う。安藤美姫や浅田真央の同年齢の頃を考えれば、彼女もそのぐらいできても不思議ではない。
ちなみに、今大会村上以外の出場者はロシア3人、アメリカ4人と極端に偏っている。アメリカの人材の豊富さには驚かされるし、ロシアはスルツカヤ引退以降世代交代に失敗していたがここに来て育成の花が開いたように思う。今回村上についで2位のポリーナ・シェレペンはロシア国内ではシニアの試合でも活躍しているようで、多彩なジャンプを武器に今後女子シングル界での活躍が期待される。

【シニア・ペア】
ロシア国籍を取得した川口悠子/アレクサンドル・スミルノフのペアがロシア代表で出場。今回のペア出場6組はまさに世界のTOP6にふさわしいハイレベルの戦いとなった。その中で川口・スミルノフペアは微妙にミスが出て5位止まり。結果はともかくとして、気になったのはキスアンドクライでの二人の様子。演技にミスがあり不満なのはわかるのだが、得点が表示されても二人とも目も合わせないような雰囲気で、何かペア内部に問題が発生しているのではないかと心配だ。
優勝は申雪/趙宏博(中国)。一度引退したチャンピオンペアがなんとグレードアップして帰ってきた。一つ一つの技が他を圧倒する完成度で非の打ち所がない。まさに芸術。

【シニア・男子】
日本人トップで表彰台に上がるという条件でバンクーバー五輪代表内定がかかった本大会。織田信成と高橋大輔が五輪内定を取れるかどうかが注目ポイント。今回の大会は本来ブライアン・ジュベール(仏)が出場予定だったのだが、ケガにより出場辞退。急遽トマシュ・ベルネル(チェコ)が繰り上げ出場となった。そのベルネル、繰り上げ出場ということで調整が間に合わなかったのか、今回は精彩がなかった。ショートの最初の4T3Tを完璧に決めたところまではよかったのだが、あとはまるでジャンプが決まらずショート、フリー共に6位と最下位に沈んだ。チェコは若手のブレジナも今期育ってきているのでベルネルもこんな調子ではチェコのエースの座も安泰ではない。今大会のショートは非常にハイレベルで4位ジョニー・ウィアー(米)、3位織田、2位エバン・ライザチェク(米)、1位高橋と上位4人がPBをマーク。特に高橋大輔の89.95はあのプルシェンコに次ぐ世界歴代第2位、ライザチェクの89.85は世界歴代第3位という脅威の好成績。上位陣は全く乱れのない演技が続き、張りつめたような緊張感が続いた。
フリーではショートの成績の逆順に出場。6位のベルネル、5位のジェレミー・アボット(米)4位のウィアーと登場したが、トータル順位に変動はない。3位の織田が登場。全体的には悪くない出来の演技だったのだが、トリプルアクセルが2度もシングルになったのが決定的に痛い。それでもなんとか243.36。滑り終わった時点でトップ。表彰台を確定させたので、五輪内定者が決まることが確定した。ライザチェクはさすがに隙のない演技で、特にPCSはダントツの84.00を叩き出しトータル249.45でトップ。織田は2位に後退してあとは最終演技者の高橋大輔。ところがこの高橋、昨日のショートとは別人だった。ジャンプもスピンも何もかもグダグダで一気に5位まで転落。スタミナに問題があるのか、精神的な問題か、とにかくこのままではちょっと不安だ。というわけで優勝はライザチェク。2位の織田が五輪内定となった。
そのバンクーバー五輪では、今大会出場者以外にもプルシェンコやステファン・ランビエール(スイス)、パトリック・チャン(カナダ)、ジュベール等の強豪が出場することが予想され、ざっと数えただけでもメダル候補は10人を下らないという、世紀の大混戦の大会になりそうな、そんな予感をさせるこのグランプリファイナルだった。

【シニア・女子】
一般的な見方はキム・ヨナ(韓)が本命、対抗がジョアニー・ロシェット(カナダ)。日本勢の安藤美姫と鈴木明子、アシュリー・ワグナー(米)、アリーナ・レオノワ(露)の4人が3位争いではないかと言われていた。男子が高得点のレベルの高い試合だったので、女子も高得点が期待されたのだが、意外に女子は点数のでない大会となった。ショート最初の演技者は鈴木。ループジャンプでダウングレードがあったものの、そこそこまとまった演技で60点くらいは期待できるのかと思ったが、57.54という点数に場内一斉に「えー??」。ブーイングならぬ「えーイング」である。これが一つの流れになったのか、ワグナーは54.26。3番手レオノワは元気いっぱいの演技で61.60と点を伸ばしたが、ロシェットがコンビネーションに失敗して60.94にとどまり、波乱含みの展開となった。そんな中、安藤は3-3のコンビネーションを回避して手堅い演技で66.20とこの時点でトップに立ち、最終滑走のヨナの登場。しかしヨナもコンビネーションの2つ目がダウングレードされ、フリップもパンクという失敗演技。65.64と僅差ながら安藤に首位を譲ることになった。
フリーではショートで最下位だったワグナーも5位だった鈴木も吹っ切れたような好演技で順位を伸ばした。特に鈴木明子は116.46とパーソナルベスト。演技終盤のイキイキとした表情には心打たれるものがあった。本人も本当に楽しく演技できたのだと思う。ショートで4位と出遅れたロシェットは緊張の糸が切れたかのように、全く精彩のない演技でまさかの95.77と二桁得点。ショート3位で表彰台圏内だったレオノワはプレッシャーがかかったのか、演技が固くミスが続きトータル最下位に転落。トレードマークの笑顔は消え、キスアンドクライでは大粒の涙がこぼれていた。ここまでで鈴木が暫定一位。あとはヨナと安藤を残すのみとなり、男子同様この時点で五輪内定者が出ることが決定。ショート2位のヨナはフリーでも完璧とはほど遠い演技で全体的に精彩がなかったのだが、そこは世界女王。フリー123.22となんとか持ちこたえ、トータル188.86で安藤の結果待ちとなった。優勝の期待が大きく膨らんだ最終演技者安藤は無難に演技をまとめにいったが、得意のサルコーで痛恨のミス。それでもぎりぎり優勝に手が届くかと思つたのだが、フリー119.74、トータル185.94で惜しくも2位。ただ、安藤は今シーズンだんだん演技の内容が良くなってきているので、今後が大いに期待できる。最終的にはヨナの逆転優勝、鈴木は3位で表彰台へ。
優勝したキム・ヨナは今シーズンは歴代最高得点を連発で無敵の女王ぶりだったのだがここにきてやや失速。3-3のコンビネーションはこれで3回連続で不成功となりTESでの大きなアドバンテージを失っている。また絶対的自信のあったPCSも今回のフリーでは8点台が一つもなく、安藤とはわずかに0.4差と、これまたほとんどアドバンテージがなくなっている。こうなるとキム・ヨナが五輪の絶対本命とも言い切れない。ロシェットには地元の利があるし、浅田真央が復調すれば、今回の優勝点数くらいは問題なく出せるだろうし、女子も五輪では混戦模様になるかもしれない。

【総評】
今回の大会、ジュニア、シニア通して感じるのはやはり日本開催ということで、若干日本選手には点数が甘めに出ていたのではないかと感じる。もしこれが日本以外での開催だったら羽生結弦も村上佳菜子も優勝できていなかったかもしれない。それくらいの僅差だった。日本人として日本選手の活躍は嬉しいものの、そこは多少複雑な気分はある。
五輪前哨戦という雰囲気の今回のグランプリファイナル、全体としては見所が多く、また日本勢は予定通り男女とも五輪内定者が決まって、いよいよ五輪が待ち遠しくなってきました。

posted by たじ |07:20 | スポーツ | コメント(0) |

スポンサーリンク

スポンサーリンク

コメントする