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菊地具也(キクチトモヤ) 1985年生まれ 北海道在住 中、高、大、野球部所属。 趣味はスポーツ全般の観戦。

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Jリーグ Division2 2007 第4節 コンサドーレ札幌 ― 湘南ベルマーレ 0-0

2007年07月27日

   第3節は攻守に明るい兆しが見える試合であった。監督が掲げている組織的な守備は、試合ごとに安定感が増してきた。攻撃では、西谷からのスピードにのった鋭いカウンターからの得点が見られたが、札幌のパターンとして成り立たせるべきすばらしいものだった。今節でもこれらのいい傾向が継続できるか、期待がかかる。

   まずはディフェンスに関して。

   これまで指摘してきたラインコントロールやチームとして意志統一されたプレスの重要性については、試合ごとにその質が向上し、これらがうまく機能している時間帯では相手をうまく支配したディフェンができるようになったと言える。それは今節も同様だった。そこで今回は、この安定した守備をできるようになったチームがどういったシーンでピンチに陥るのか、またその原因は何なのかに注目した。

   まずはピンチを迎えたシーンを振り返る。一番多かったのは外国人選手がホルダーでドリブルに入り、そこからピンチに陥るケース。ドリブルで1人2人抜かれてペナルティーエリア付近まで侵入され、ミドルシュートを打たれることもあれば、ドリブルすることで2、3人の選手のマークが集中し、空いた選手に決定的なパスを通されることもあった。アジエルという選手だが、彼がボールを持つと8割がたピンチに陥っていた。

   この原因だが、第2節のオフェンスの課題で書いたことに関係するが、キーワードは注意力である。

   アジエルがドリブルすることによって、1人で対応できない札幌側は2人3人とマークの人数が増える。その分周りにはスペースが生まれ、湘南の選手は動きやすくなるが、加えて、アジエルのマークに付いておらず、他の湘南の選手に注意を払わなければならない札幌の選手の注意も、アジエルに引きつけられる。彼の持つ能力が高く、可能なプレーの選択肢が多いために、彼に注目せざるを得ない。その結果他選手への注意が散漫になり、決定的なパスを通されてしまう。

   こういったピンチは、キープ能力に秀でた選手を前にすれば半ば必然とも言えるが、それでも個人個人のディフェンス能力の向上によって回避できる可能性もある。

   マークしていない選手の注意がホルダーに集中してしまうのは、そもそもホルダーのプレーの選択肢が多く、危険を感じているからだ。マークについている選手のディフェンス能力が高く、ホルダーのプレーの幅や可能性を狭めることができれば、ホルダーに対する注意もそれなりに狭まり、他選手への集中力も増す。曽田がアジエルから1人でボール奪取したシーンがあったが、そうしたシーンが2度3度見られれば、彼の存在感、危険性は陰を潜め、彼から生じるピンチも減らすことができる。強力な個に対しては、強力な個の力が必要である。

   他のパターンでは、浅い位置からのアーリークロスからのピンチが挙げられる。自陣にスペースがあってカウンター気味に相手がスピードにのって攻めてくる場面、左サイドからホルダーが速いクロスをキーパーと最終ラインの間に上げて、センターバック2人の背後から湘南の選手が飛び出し、合わせられるといったシーンだ。

   このような相手のカウンターのシーン、札幌のセンターバック2人はフラットな状態で急いで引く。その際相手ホルダーが左サイドでボールを運んでいればそちらに視線を向けているが、その分逆サイドには死角が増えている。その死角から相手選手に飛び出され、そのタイミングでクロスが来れば、捕まえるのはかなり難しい。クロスが来るタイミングをホルダーを観察しながら見極め、背後から走ってくる選手の動きも把握しなければならないのだから当然である。

   ただ、この対応の難しさも、キーパーと自らの間に来るクロスが最も危険だと認識していれば、ある程度解消できるはずである。野球で言えば、ストレートを待ちながら変化球に対応するといった心構えで、注意力の比重を最も危険な部分に傾けておけば、ある程度対応できる。

   ここでも重要となるのは、個々の選手のプレーをイメージする力である。周りの状況を把握し、どこを狙われたら危険なのかを察知する能力である。センターバック2人の死角で相手フォワードが動いているのなら、その選手を視界に捕らえている別の選手がマークすればいい。そうした個々の選手の状況に応じた動きが、この種の危機を摘むのに不可欠である。

   次にオフェンスに関して。

   上記のような守備陣に見られる弱点は他チームにもしょっちゅうみられる。それならば逆に、その弱点を突けばいい。この弱点をうまく突けたシーンがこの試合でもあった。前半37分、右サイドで敵陣深く踏み込んだ藤田が、速いクロスを上げ、そのボールにダビが突っ込んだ。一瞬遅れて合わせることはできなかったが、その一瞬さえ埋められれば相手選手に関係なく、楽に得点することができたシーンだ。

   この場合、藤田がゴールラインから数メートルのところでクロスを上げたのだから、相手ディフェンス陣の視線はサイドラインへ向かってまっすぐ向かっているはずであり、ゴールラインへまっすぐ向かうダビに対しては、すぐ近くに彼が接近するまでは死角になっていて、認識しづらい。ダビがすぐ側まで来た彼を認識した時にはすでにボールが入っていて、全く対応できなかった。

   このシーン、例えばダビが早くから相手の視界に入って、その状態でクロスに合わせようとしたなら、相手選手のマークにあってフリーでシュートを打つことは出来ないだろう。また、ダビがうまく相手の死角から走り込んでも、藤田のクロスのスピードが緩ければ、単に高さの争いとなりゴールの確率は限りなく低くなる。あくまで相手の死角から視界に現れる一瞬にタイミングを合わせることが得点確率の上昇に必要な条件だと言える。そのために中の選手の動き方やタイミング、ホルダーのクロスの質の向上が求められる。

   札幌には湘南のアジエルのような相手マークを引きつけるほどの個人能力を持った選手はいないのだから、どうすれば得点の確率が上がるのか、またそれを実現するにはどんな技術が必要なのか、もっともっと考えてプレーしなければならない。今回書いたような相手の弱点を利用した質の高い動き方やタイミングの妙は、世界のトップ選手が見せてくれている。優れた技術だけが、彼らから学べるものではない。彼らを食い入るように観察し、多くを学ぶべきだ。

   今回は、組織的な守備にほころびが生まれるシーンに焦点をしぼった。対戦した湘南は札幌によく似たチームで、同じように安定した組織的守備を実践していた。J2ではこの手のチームと戦うことも多いだろう。それらのチーム間で差が出るのは、個人の力量か今回書いたような相手の特性を見極めた上でのプレーである。札幌の選手も、湘南の死角を狙う動きには何度か肝を冷やしただろう。相手からそうしたプレーを吸収することも個の能力、チーム力の向上のために必要である。


post by 菊地具也

22:27

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