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2010年03月02日

バンクーバー五輪女子フィギュアのこと(1)

やはりこの話題については書かずに通り過ぎるわけにはいかないと思っています。

結果は当初より本命視されていたキム・ヨナが金メダル。私の敬愛する浅田真央は銀メダル。銅メダルは五輪期間中に母を亡くすという悲劇に襲われた地元カナダのエース、ジョアニー・ロシェットでした。

ヨナはショート、フリー共にノーミスという完璧な演技で228.56という見たこともないような圧倒的な世界最高得点を叩き出し、ぶっちぎりの金メダル。対して真央はショート、フリーと3度のトリプルアクセルを成功させるという、女子では史上初の大快挙を達成しました。単に回数が3回というだけでなく、そのうちの2回は3A-2Tのコンビネーションなのです。これはあの伊藤みどりでも試合ではやったことのない(練習では3A-3Tも成功させたらしい!)フィギュア史上に残る偉業だといって間違い有りません。しかし、フリーで3F-2LO-2LOの三連続ジャンプの最初の3Fで回転不足、そしてオーバーターンのミスが出てしまい、その後の3Tではかかとが引っかかり1Tになるという悔やまれるミスが続き、205.50とPB(パーソナルベスト)を出したものの無念の銀メダルでした。トップのヨナと真央との点差は実に23.06点。これは2位から7位までに相当する大差なのです。なぜこんな結果になってしまったのでしょうか。

結論から書きます。今回の結果はヨナ本人はもとよりヨナのスタッフを含めた「チーム・ヨナ」の完全なる勝利だったということです。氷上の勝負だけならこんな点差になることは考えられません。しかし、ソチ五輪の次の冬季五輪招致を目論む韓国は、フィギュアスケートでヨナに金メダルを取らせて、彼女を招致活動のシンボル、目玉にしようという意向があり、いってみればヨナに金メダルを取らせるというのは韓国の国家プロジェクトとも言えるもので、ヨナに対しては金メダルを取るための全面的バックアップ体制が取られました。
ヨナは3年も前からコーチをカナダ人のブライアン・オーサー(サラエボ五輪・カルガリー五輪銀メダリスト)とし、練習の拠点もカナダに置いています。もちろん、たまたまヨナのコーチがカナダ人だったわけではありません。ヨナはカナダを拠点として練習するオーサーの教え子。これはバンクーバー五輪をヨナにとっての準ホームにするための戦略です。そして採点競技だけに、「チーム・ヨナ」はいわゆる「ロビー活動」にも積極的でした。
トリノからバンクーバーまでの間、細かなルール変更が行われ、真央はそれに随分と苦しんだこととか、ヨナのGOEやPCSがどんどん上がっていったことのうち、どのくらいがこのロビー活動の成果なのかは実際にはわかりません。ただ、日本陣営は真央以外にも有力選手がたくさんいますので、「チーム・ヨナ」のように真央にだけ絞ってロビー活動を展開するわけにはいかないわけで、この点では完全にヨナサイドに水を開けられてしまいました。

結果、昨シーズンのロスでの世界選手権の時点で既にジャッジにとってヨナが真央より格上という格付けが出来上がっていました。この世界選手権ではヨナが史上初の200点越えで優勝してます。フィギュアスケートは実際には格付けがものいいます。もちろん何か格付表のようなものがあるわけではありませんが、演技構成点(PCS)というのは事実上格付けに基づく点数だと言っても過言ではないでしょう。
ジャッジにヨナより格下と格付けされた真央にとって、五輪本番でそれを覆すには、ヨナがミスをするか、真央が(ミスをしないことに加えて)何か大きなインパクトを与えるしかありません。そしてその大きなインパクトというのが3回のトリプルアクセルであり、又「鐘」というずっしりと重たい重厚で荘厳な選曲でした。
しかし、現実はシーズン前半は本当に苦労しました。トリプルアクセルは決まらないし、「鐘」の評判もすこぶる悪かった。重たくて真央の良さが全然出ていないと。さらにはコーチのタラソワが体調不良などで10月のロシア杯以降ずっと真央の指導をできずにいました。しかし、そんな状況を乗り越え真央は見事にオリンピックに向けて演技を仕上げてきたのです。

確かに結果としてはミスはあったものの真央はこの五輪で205.50というPBを出したのですから、この戦略は正しかったはずなのですが、ここまでやってもチーム・ヨナには完敗させられてしまいました。ショート78.50、フリー150.06というのは、まさにチーム・ヨナの総合力の結果と言えるでしょう。
個人的には、フリーで150.06という点数が出た時は正直白けてしまいました。この点数でははじめからヨナが金メダルと決まっていたとしか思えないですから。(続く)

posted by たじ |22:00 | コメント(0) |

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