2008年05月08日

CONSAISM clasics #47

clasics #47です。積もり積もった怒りがここに来て爆発したのか、なかなかエキセントリックな文章になっています。


J1昇格への路もあっという間に消し飛んで、来期がどうこうといった話が厚別へ向かう僕の耳を通り過ぎていく。予算は10億で人件費3億、若手中心の編成で、外国人はゼロになるかもしれなくて、有望な若手は他クラブへ移籍……。秋晴れの土曜日であっても現実は容赦なく冷たい風を吹かせてくる。
4得点を挙げての鳥栖戦の快勝も、そんなこれからの話を考えるとつかの間の歓喜でしかなかった。この先には冷たい現実がじっとこのチームを待ち構えているのだと思うと、こういう試合ができるならさっさとやってくれれば良かったのに、なんてネガティブな感情だって自然と出てきてしまう。

鳥栖戦は有り体に言えば勝利以外に見受けられるものはなかった。来期は若手中心と言いながらその顔ぶれには若手は少ない。監督が代わって10試合以上経つのに、はっきり見えてこない戦術。退場者を出して劣勢の中での勝利だったとはいえ、そこに僕が今一番見たい「これからの札幌」は見えてこなかった。

そんな試合の中でも僕の心臓がどくんと波打つ瞬間はあった。
ボランチの森下が、アンドラジーニャの退場で一人少ない分を埋めようと、とにかく前へ出てプレッシングをかける。中盤深くからどんどんとボールを追いかけて相手GKへのバックパスまで追いかける。その姿にスタンドからは自然に拍手が湧いてきた。そう、そういう姿が見たいんだ、とでも観客が主張するように。
あの状況で森下が激しく動いてくれなかったら、おそらく札幌の守備ラインはずるずると下がり間違いなく鳥栖にゴールを許し、連敗していたこの前までのようにネガティブな悪循環に陥ってしまっていただろう。そういう意味で他の選手達にも、前から守るという意識をしっかり見せたと言う意味では職人肌でプレーで伝えるタイプの森下らしいやりかただな、と思った。どこまでも迷走し続ける札幌にあって、そのシーンだけはちょっとだけ未来が見えたような気がした。
それでも試合終了の笛が鳴ったとき、僕は二、三回ほどの拍手をすることしかしなかった。やれやれ終わったなご苦労さん、という感じで。そんな醒めた感情しか湧いてこないのが今の僕の真実だ。

96年の高揚、97年の充実、98年の悔悟、99年の挫折、00年の歓喜、01年の満喫、02年の混乱、そして03年は「失望」という言葉がぴったりくるような感じがする。この間、僕はずっとゴール裏で応援してきて、今年はいろいろとあってゴール裏に行ったのは一度きりで、そうして僕がチームを見る方向もちょっと変わってきている。

僕はサッカーを見るにつれて一つの思考を固めてきた。それは、「サッカーは人生の縮図であり、現実の投影だ」という考え。現実に一つ一つ目標を明確に定め、クリアし、再び次の目標に向かってしっかりと階段を登るのにも似たトレーニング、それをクリアするため、より強くなるための試合というハードル。リアリスティックに過ぎるかもしれないけれど、そんな一つ一つがチームを強くするのであって、現実をすっ飛ばした夢や希望だけでは飯は食えない。
しかし今年の札幌はまさに「現実をすっ飛ばした」チームだった。ビッグネームの監督や選手に夢を見て、綺麗にあっさりさっぱり打ち砕かれた。
その後で今度は僕らに「5ヶ年計画」という名のもっと長い夢を見せてこの場を凌ごうとしている。明確なビジョンも見えないのに、より長い夢を無理に見させて僕らを忍従させようとしている。
僕らはもういい加減に夢と現実の境界線からはっきりと現実の側に立ち、冷静に判断しなければならないと思う。何が必要で何が必要でないのかをはっきりチームと認識し、共有し、育むこと。それこそが今いちばん大事なことだと思う。このままではチームの思うがままに思考停止のまま5年を過ごすことになると危惧している。現実になる可能性のとんでもなく低い、都合のいい恋愛ゲームみたいな夢を見ているまま僕らは冷凍保存させられて、吸い取るだけ吸い取ったら捨てられるただの一栄養体として、「マトリックス」みたいな世界でサポーター的一生を終えることになる。日本ハムの移転で札幌が確実に得られるファン層も少なくなる。そうしてこのまま僕らは乖離した夢と現実の狭間を漂いながら、ただただ虚ろな目でピッチを見つめるだけの人間機械と化してしまうのだ。

そんなチームに、誰が愛情を注げようか! サポーターとチームは一身同体だなんて冗談もいいところだ。都合のいいことばかり並べ立てて現実を乗り越えようとする姿を見せない怠惰で緩慢なチームなど、誰が応援できようか!

今、札幌は史上最大の危機を迎えていると言っても過言ではない。それは今まで甘い甘い夢を見続けてきたツケが雪崩を起こすように襲いかかってくる危機だ。札幌のサッカーだけでなく、北海道におけるプロスポーツの世界の危機だ。
僕らはその「現実」を乗り越えていかなければならない。現実を乗り越えなければその先の未来なんてないのだ。もしこのチームを少なくとも普通にフットボールの楽しめるチームにしたいのなら、今こそはっきりと現状に「NO」をあらゆる形で突きつけて、今乗り越えるべき問題を現実として共に認識しなければならない。
ジュニアからトップまで、ホームゲームの運営費から宮の沢の芝一本まで。そこまで考え、その上で目標を明確にするのなら、10年でも20年でも僕はこのチームについていこう。しかしそうでないのなら、チームに関わる全ての人々はスポーツというものに対して、そしてそれをとりまく社会に対して重大な背信行為を負うことになるだろうと思う。
だからこそ、今、声を挙げなければ、もしくは挙げ続けていたのならば無言の抗議をしなければならないと思うのだ。
だからこうして僕はこの文章を書いている。これが今僕の成しうる最大の声であり、武器だからだ。

僕はこのチームが真の意味で戦う姿を見たい。激しくボールを追い、ゴールを求める姿が見たい。サッカーで楽しみたい。スポーツで少しでも多くの幸せを得たい。
このチームにこんな思いを抱くことも、許されないのだろうか?

posted by retreat |01:21 | classics | コメント(0) | トラックバック(0)

スポンサーリンク

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.consadole.net/retreat/tb_ping/93
コメントする