2008年02月19日

CONSAISM clasics #23

再び一回ずつの掲載ペースに戻って、今回はclasics #23。引き続きワールドカップネタでお送りします。ある意味、直前に御殿場で見た練習試合の惨状から目を背けるために書いたとか書かなかったとか。


22日の土曜日、自分は練習試合を見に御殿場へ向かいました。
けれど、今回書くのはそのことではなく、その後東京に帰ってから見た光景やそこで考えたことです。御殿場からJR、小田急を乗り継いで新宿経由で帰ったのですがちょうど新宿に着いた時間がスペイン対韓国の試合時間と重なっていて、延長戦をどこかで見られないものかと探していたら、とある喫茶店でテレビを放映しているのが見えてとっさにその店に入りました。
ブレンドを頼み画面に目を凝らすとちょうど延長後半も終わろうかというところで、さして時間をおかずに主審がPK戦突入を告げる長い笛を吹きました。ウェイトレスの女の子は韓国人らしく、店に来ていた友人らしい他の女の子と興奮気味に話しながら食器を片づけたりレジを打ったりしていました。そうしてホアキンのキックを李雲在がセーブすると飛び上がって喜び、そして洪明甫の足の動きをじっと見つめていました。
ゴールが決まった瞬間、さっきよりも大きな喚声をあげて喜ぶ彼女は、早口にうれしさをまくし立て、喜びを爆発させながらながら、それでもレジを打ったり食器を下げたりしていました。その目にはうっすらと涙が浮かんでいて、自分も何か「良かったね」と声をかけたくなるような、そんな気持ちになってしまいました。それにしても韓国というチームの粘り、どんな状況でもゴールをねらい続ける姿勢、そして圧倒的という言葉も霞むほどのスタンドの赤、そして声援。本当にすばらしいとしか言えない、スタジアムの雰囲気です。

そうして喫茶店を出て、少し新宿の街を歩いて、夕食をとるかと店に入ったところで道路から「テーハンミングッ!(大韓民国!)」の声がどこからか聞こえてきました。新宿やその隣の大久保は韓国人の多い街なので喜びあう人たちが結構いるだろうな、と思っていましたが、やはりその通りでした。顔に大極旗のペインティング、「Be The Reds!」のTシャツ、手には大極旗をはためかせて歌舞伎町を歩いています。その人々を目にして思わず顔がにやけてきて、なんだか自分もうれしくなるような感じでした。勝利の喜びを素直に、誰にもはばかることなく表しているその姿はほほえましいというか、うらやましいというか、通りすがりの人たちをも笑顔にさせるそんなパワーがあるんだなあと思いました。そんな人々の姿をもう少し見ていたくて、しばらく新宿にとどまっていることにしました。
歩き回っているとちょうどトルコ対セネガルを放映しているバーがあって、店の前に人だかりがしています。ちょうどいいや、と自分もその中に加わることにしました。店の内外の人だかりは日本人だけでなくどうやらいろいろな国籍の人たちがいるようで、そのうちにどこからともなくイングランド人のグループもやってきて、試合を見ながらなぜだかイングランドの応援歌を歌い始めたりして、訳が分からないけどなんだか楽しい気持ちでビール片手にテレビを見ていました。
後半もそろそろ終盤にさしかかろうかという頃、再び「テーハンミングッ!」の声が聞こえてきました。さっきよりももっと大きな声、たくさんの人。振り返ると100人はいたでしょうか、大極旗を振り回しながらこちらに向かって歩いてきます。そして店の前で「コリア!コリア!コリア!」の大コール。韓国人も、日本人も、さっきのイングランド人も国籍なんか問わないで、みんなが笑顔で手を叩き、声をあげています。みんなが韓国が無敵艦隊を打ち破り、4強入りを祝福して、見知らぬ日本人が見知らぬ韓国人とハイタッチをして、握手をして。「横浜へ行こう!」と肩をたたき合って。この瞬間、日韓の歴史や対立の感情が消えてしまったような、そんな感覚すら覚えさせる光景でした。
実は、大学時代に自分は日韓の交流サークルのようなものに顔を出していて、韓国に10日ほどホームステイをしながら旅行した経験があります。また、高校時代には修学旅行で3泊4日の韓国旅行に行った事もあります。そのときにやはり共通の話題となったのはスポーツ、特にサッカーでした。もちろん日韓のこれからのあり方、過去の歴史の捉え方で意見を戦わせた時間もありましたが、それを離れるとサッカーの話でみんな盛り上がったものです。
そんな昔の事を思い出し、やっぱりサッカーというものは世界の共通言語だと改めて感じたりしながら、そろそろ帰ろうかと新宿駅東口に向かいました。
そこにはさっき見た韓国人の大集団がさっきよりもさらに盛り上がりを増して「オー、ピルスン(必勝)コリア!」と肩を組んで歌っています。その輪の中には日本のレプリカを着た日本人も混じっています。その光景を見たとき、誇張でも何でもなく
「ああ、日韓の新しい時代が来る」
と思いました。
互いの過去やわだかまりや国民感情やそういう物をいっさい抜きにして互いが互いの健闘を祝福し、一緒に喜んでいる。この輪の中にはただ騒ぐのが好きだからという理由で加わっている人もいるのでしょうが、その中には「自分が一緒に肩を組んでいるのは韓国人だ」という感覚がないような感じがしました。互いが互いを憎み合い、反発する感情しか持ち合わせていなかった過去から確かに新しい一歩を踏み出したのだと思いました。少しながらも日韓関係について考えた経験のある自分にとって、こんなにうれしい光景はなかったのです。

そして願わくば、この関係がより深まって日韓がさらに進んだパートナーシップを築いていければいいな、と思います。自分にとってのその第一歩が、新宿駅東口のこの光景です。まだまだ感情や言葉や国民性や、互いに理解し合って、時には意見をぶつけ合って、越えていかなければならない壁はまだまだ多くあると思いますが、この場にいた人たちみんながこの記憶を忘れずに、これからも感情を共にできるようにできればいい、と思います。
 

posted by retreat |20:36 | classics | コメント(0) | トラックバック(0)

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