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HN:たじ たこ焼きの移動販売「ほっと12」の店主です。 2001年からコンサドーレのサポートシップスポンサーを継続中。 このブログは旧題「たじ争論」でしたが2010年より「たじの○○な話」に改題致しました。 個人的に好きなことや興味のあること、気になったこと、その他いろいろを特にサッカーやコンサドーレにとらわれずに適当に書いてこうと思ってます。

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【小説】居酒屋こんさどおれ 最終話

2006年12月04日

この物語はフィクションであり、実在の人物、団体とは関係ありません。

居酒屋こんさどおれ
第一話 第二話 第三話 第四話 第五話 第六話 第七話 第八話 第九話 第十話 第十一話 第十二話

最終話 タイムアップ


いよいよ入れ替え戦が始まった。初戦は札幌ドームで1-1の引き分け。全ては第二戦にかかってきた。そして、居酒屋こんさどおれの閉店もまた迫ってきた。
12月第2週の土曜日。キックオフは14:00からだ。普段は夕方からから営業の居酒屋こんさどおれもこの日は正午から店を開けた。とうとう最後の営業だ。

さとみちゃんはCVSの友達を二人連れてきてくれた。「ゲンさん、これ」と、さとみちゃんは大きな花束をゲンさんに渡した。それは抱えきれないくらいの大きな花束だった。ゲンさんの目がうっすら潤んだのを見てさとみちゃんは「ゲンさん、泣くのはまだ早いよ。コンサの昇格を見てから泣いてよね」と言った。「そうだよね・・・」と言いながら余計にゲンさんの瞳は潤んでくる。

マキちゃんは「ゲンさん、シャンパン買ってきたから。試合終わったらバーンとやろうね」と言いながら既に臨戦態勢。でも、中原君はこんな時でもマイペースでおとなしい。

須永君は携帯でなにやら電話している。普段石山さんと須永君は平日仕事帰りに来てくれるのだが、今日は土曜日なので二人バラバラの来店。石山さんはまだ来ていない。どうやら石山さんはキックオフギリギリに店に着くらしい。

山本さんもご近所さんを一人誘って来てくれた。「それにしてもゲンさんの顔を見れなくなると寂しくなるねぇ。これから誰をからかえばいいんだか困るじゃないの」と言う山本さんに「やっと山本さんから解放されるんで私は大喜びですけどね」とゲンさんが言い返す。二人は顔を見合わせて大笑いするのだが、その笑い声も少し寂しそうに店の中に響いた。

キックオフの時間が迫ってきた。居酒屋こんさどおれの大きくもない21型テレビの電源が入る。キックオフまであと10分だ。その時店の電話が鳴る。現地に応援に行っているハル君からの電話だ。

「もしもし、ゲンさん。ハルだけど。もうみんな揃った?」

「うん、あとは石山さんがもうすぐ来るんで、それでみんな揃うかな。やー、もうみんな盛り上がってるよ、こっちは。現地はどんな感じ?」

「どんな感じも何も、もう凄いから。ゴール裏1000人はいるから。もう絶対勝つって感じ。まかせといて。みんなの分も応援するから安心してテレビ見ててよ。」

「頼んだよ、ハル君。電話くれてありがとうね」

「何言ってるの、ゲンさん。こっちこそ、こんさどおれの最後にいけなくて申し訳ない。ゲンさん、本当に今までありがとうね。あ、もうコール始まるから電話切るね。試合終了したらまた電話するから」

「わかった。電話待ってるよ」と言って受話器を置いたとき石山さんが店に入ってきた。

「こんにちは。皆さんもうお揃いですか。ゲンさん、これ、お寿司買ってきたから」

「石山さんありがとうございます。もうみんな揃ってますよ。」

来店予定のお客さんも揃ったところでゲンさんがあいさつをする。

「皆さん、本日はお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。あと5分でいよいよキックオフです。この居酒屋こんさどおれも、皆様のご愛顧のおかげをもちまして長らく営業を続けてまいりましたけれど、本日をもって閉店となります。しかーし、この閉店、そして私ゲンの新しい門出をコンサドーレはJ1昇格で祝ってくれるに違いありません。今日は一日盛り上がっていきましょーーーー」

「おーーー」というかけ声の後に「コンサドーレ」のコールが店の中に響く。そしてついに運命のキックオフとなった。

前半、一進一退の展開が続く。MF藤里の絶妙のスルーパスにFW石川が鋭く反応するが、僅かに届かない。MFベテラン砂谷がドリブルで切り裂き、ペナルティエリアまで入りシュートするも惜しくもクロスバー。DF池嶋のロングフィード。MF金塚のインターセプト。芳関のサイドチェンジ。GK林藤が素早い反応でボールをキャッチする。コンサドーレの選手がピッチで躍動している。その熱が画面から店の中にも伝わり、ただでさえヒートアップしている店内では誰もが上着を脱いで汗ばんでいる。
均衡が破れたのは後半35分。FWセッキの強烈なシュートを相手GKが弾いてゴール前での大混戦。最後にこの混戦を制したのはDFの曽賀だった。こぼれたボールに思い切り伸ばした足の先が僅かにボールに触れ、相手DFの身体にあたってコースが変わり、GKが反応出来ずにゴールの中にボールがコロコロと転がった。

「うぉーーーー!!!!」
「ゴーーーール!!!!」

座っていたみんなが一斉に立ち上がり、その歓声のあまりの爆音でゲンさんは天井の電球が割れてしまうのではないかと思ったが、実際に割れたのは、立ち上がったときの勢いでテーブルから落ちたグラスだった。

ゲンさんはもうそのあとのことを良く覚えていない。
タイムアップの笛がいつ鳴ったのかも覚えていない。
ハル君からかかってきた電話で何を喋ったのかも覚えていない。でも、ハルくんは興奮して何を言っているのかわからない電話だったから、覚えていたとしても変わりはないかもしれない。勝利の雄叫び、祝勝会がいつまで続いたのか、いつお開きになったのか。結局ゲンさんは一晩を店の中で過ごした。

最後の後かたづけをしてゲンさんは店のシャッターを静かに下ろす。

居酒屋こんさどおれタイムアップ。


post by たじ

11:59

コメント(2)

この記事に対するコメント一覧

こんびに

Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 最終話

2006/12/07 11:14

最終回お疲れ様でした。興味深く拝見してました。出てくるキャラクターすべて愛せるのは、たじさんの 人柄が反映されているからでしょう。また、何か書いて欲しいです!!

たじ

Re:【小説】居酒屋こんさどおれ 最終話

2006/12/08 23:12

>こんびにさん いつも小説にコメントありがとうございます。 一応、来週あとがきをアップする予定です(笑)

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