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菊地具也(キクチトモヤ) 1985年生まれ 北海道在住 中、高、大、野球部所属。 趣味はスポーツ全般の観戦。

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第31節 クロスと中央選手との良い関係とは? コンサドーレ札幌 - サガン鳥栖 1 - 1

2007年07月28日

   今節は、西谷のPKが前半15分に決まり、早々と札幌が先制した。その結果、札幌が守備で主導権を握り、カウンター攻撃を仕掛ける機会が多い試合になったが、そのカウンターの際に、ダビと中山が見せた興味深い動きがあった。

	それはこんなプレーである。ダビは前線に十分スペースがある中で、鳥栖陣内やや深めのサイドでボールを受ける。彼は対応するディフェンダーに対して勝負を仕掛け、最終的に縦に突破しようと試みた。試合を通して同じような試みは、四度ほど行われたが、29分と45分、二度この試みは成功し、ダビはグランダーのクロスを中央へ送った。中には中山がいたが、興味深いのはこの中山のボールに合わせるまでの動き方である。中山は、二度ともファーサイドからニアサイドに向かって走り、ニアサイドでクロスに合わせようとした。

	このグランダー性のクロスに対するアプローチの仕方は、得点の可能性を高める要素をいくつも含んでいる。順にそれらを挙げてみよう。

	まずは、転がるボールは浮き球に比べて合わせ易いという点。

浮き球であれば、選手のジャンプ力に限りがあるため、ある程度の高さまでボールが落ちてこなければボールに触れることはできない。合わせ得るポイントはある程度決まってしまい、それは点のように狭い範囲へ限定されてしまう。そのポイントはディフェンダーにも認識できるため、彼らにとって対応し易い。一方、転がるボールならば高さによる制限がなく、ボールが転がる軌道上の、比較的広い範囲が合わせられるゾーンになるはずである。オフェンス選手にとっては選択できるプレーの幅が広がり、ディフェンス選手にとっては対応すべきシーンのイメージが増え、対応は難しくなる。これは大きな利点である。

	次に、相手のディフェンダーよりも、先にボールに触れる可能性が高い点。

	この点で重要になるのは、走り込む方向である。中山はファーからニアへと走り込んだ。ファーから走り込むことには、中央を固めているディフェンダーやキーパーの死角から飛び出せるという利点がある。

   サイドで札幌の選手がボールを持っている限り、鳥栖の守備陣は多くの集中力をそちらに割かざるを得ず、視線はサイドに向く。結果、逆サイドにいる中山は死角になる。そして、クロスに合わせて死角から飛び出すことで、一瞬相手よりも早くボールにアプローチできる。中山は自分で合わせるタイミングを見計らって動き出せるが、鳥栖の選手は死角から飛び出した中山を認識してから動き出すことになる。経験などからくる“読み”など、この動き出しが早くなり得る要素はあるが、それでもディフェンス側は受動的な動きを強いられる。この日中山は、一瞬タイミングが遅くボールには触れられなかったが、鳥栖のディフェンダーやキーパーよりも前にポジションをとることには成功していた。彼らよりも先にボールに触れることができれば、それは決定的なチャンスである。キーパーとの距離が近い分、ボールの方向を変えるだけでも得点の可能性は高い。

	前節の仙台戦で、ダビが藤田のクロスを中央で合わせて得点したシーンがあるが、あの時ダビはボールに触れただけだった。キーパーは、サイドからのクロスやその折り返しがあった時のように、あちこち見る方向を変えなければならない状況や、突然視界に新たな選手が現れたような状況では、ボールに対する反応が極端に遅れる。こうした弱点を突くファーからニアへの動きは、非常に有効である。

	今日のダビと中山の動きは、こうした可能性を見越したものであったように思う。藤田が敵陣深くからクロスを上げるシーンが何度もあったが、このクロスも、敵陣深くからという点で、逆サイドに死角ができる。ダビと中山が同様にその利点を突く動きをしながら、中央で合わせようとしていた。

	開幕当初、彼らは中央で動かずにクロスを待つシーンが多かったが、結果相手のディフェンダーに捕まりやすくなり、フリーでボールに触る機会が少なく、得点も少なかった。しかし、最近の結果が示しているように、彼らの動きの質は着実に進化している。

	今節、チーム全体としては、守備は組織としてのバランスを保てていた。札幌のディフェンスで重要なのは、フラットな4人の中盤、最終ラインと前線の選手の位置関係とプレスの質だということは2節以降で書いてきたが、ラインの上げ下げは非常にスムーズで、結果、有効なプレスをかけられていた。右サイドからドリブルを仕掛けられ、そこからのクロスで幾度かピンチをむかえたが、中央の選手のポジショニングがよく、よくしのいでいた。攻撃でもダビや中山、藤田がよく動き、敵陣のスペースを活かした早い攻めが出来ていた。今後も守備の安定を軸とした、いい戦いが期待できるだろう。


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22:24

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Jリーグ Division2 2007 第4節 コンサドーレ札幌 ― 湘南ベルマーレ 0-0

2007年07月27日

   第3節は攻守に明るい兆しが見える試合であった。監督が掲げている組織的な守備は、試合ごとに安定感が増してきた。攻撃では、西谷からのスピードにのった鋭いカウンターからの得点が見られたが、札幌のパターンとして成り立たせるべきすばらしいものだった。今節でもこれらのいい傾向が継続できるか、期待がかかる。

   まずはディフェンスに関して。

   これまで指摘してきたラインコントロールやチームとして意志統一されたプレスの重要性については、試合ごとにその質が向上し、これらがうまく機能している時間帯では相手をうまく支配したディフェンができるようになったと言える。それは今節も同様だった。そこで今回は、この安定した守備をできるようになったチームがどういったシーンでピンチに陥るのか、またその原因は何なのかに注目した。

   まずはピンチを迎えたシーンを振り返る。一番多かったのは外国人選手がホルダーでドリブルに入り、そこからピンチに陥るケース。ドリブルで1人2人抜かれてペナルティーエリア付近まで侵入され、ミドルシュートを打たれることもあれば、ドリブルすることで2、3人の選手のマークが集中し、空いた選手に決定的なパスを通されることもあった。アジエルという選手だが、彼がボールを持つと8割がたピンチに陥っていた。

   この原因だが、第2節のオフェンスの課題で書いたことに関係するが、キーワードは注意力である。

   アジエルがドリブルすることによって、1人で対応できない札幌側は2人3人とマークの人数が増える。その分周りにはスペースが生まれ、湘南の選手は動きやすくなるが、加えて、アジエルのマークに付いておらず、他の湘南の選手に注意を払わなければならない札幌の選手の注意も、アジエルに引きつけられる。彼の持つ能力が高く、可能なプレーの選択肢が多いために、彼に注目せざるを得ない。その結果他選手への注意が散漫になり、決定的なパスを通されてしまう。

   こういったピンチは、キープ能力に秀でた選手を前にすれば半ば必然とも言えるが、それでも個人個人のディフェンス能力の向上によって回避できる可能性もある。

   マークしていない選手の注意がホルダーに集中してしまうのは、そもそもホルダーのプレーの選択肢が多く、危険を感じているからだ。マークについている選手のディフェンス能力が高く、ホルダーのプレーの幅や可能性を狭めることができれば、ホルダーに対する注意もそれなりに狭まり、他選手への集中力も増す。曽田がアジエルから1人でボール奪取したシーンがあったが、そうしたシーンが2度3度見られれば、彼の存在感、危険性は陰を潜め、彼から生じるピンチも減らすことができる。強力な個に対しては、強力な個の力が必要である。

   他のパターンでは、浅い位置からのアーリークロスからのピンチが挙げられる。自陣にスペースがあってカウンター気味に相手がスピードにのって攻めてくる場面、左サイドからホルダーが速いクロスをキーパーと最終ラインの間に上げて、センターバック2人の背後から湘南の選手が飛び出し、合わせられるといったシーンだ。

   このような相手のカウンターのシーン、札幌のセンターバック2人はフラットな状態で急いで引く。その際相手ホルダーが左サイドでボールを運んでいればそちらに視線を向けているが、その分逆サイドには死角が増えている。その死角から相手選手に飛び出され、そのタイミングでクロスが来れば、捕まえるのはかなり難しい。クロスが来るタイミングをホルダーを観察しながら見極め、背後から走ってくる選手の動きも把握しなければならないのだから当然である。

   ただ、この対応の難しさも、キーパーと自らの間に来るクロスが最も危険だと認識していれば、ある程度解消できるはずである。野球で言えば、ストレートを待ちながら変化球に対応するといった心構えで、注意力の比重を最も危険な部分に傾けておけば、ある程度対応できる。

   ここでも重要となるのは、個々の選手のプレーをイメージする力である。周りの状況を把握し、どこを狙われたら危険なのかを察知する能力である。センターバック2人の死角で相手フォワードが動いているのなら、その選手を視界に捕らえている別の選手がマークすればいい。そうした個々の選手の状況に応じた動きが、この種の危機を摘むのに不可欠である。

   次にオフェンスに関して。

   上記のような守備陣に見られる弱点は他チームにもしょっちゅうみられる。それならば逆に、その弱点を突けばいい。この弱点をうまく突けたシーンがこの試合でもあった。前半37分、右サイドで敵陣深く踏み込んだ藤田が、速いクロスを上げ、そのボールにダビが突っ込んだ。一瞬遅れて合わせることはできなかったが、その一瞬さえ埋められれば相手選手に関係なく、楽に得点することができたシーンだ。

   この場合、藤田がゴールラインから数メートルのところでクロスを上げたのだから、相手ディフェンス陣の視線はサイドラインへ向かってまっすぐ向かっているはずであり、ゴールラインへまっすぐ向かうダビに対しては、すぐ近くに彼が接近するまでは死角になっていて、認識しづらい。ダビがすぐ側まで来た彼を認識した時にはすでにボールが入っていて、全く対応できなかった。

   このシーン、例えばダビが早くから相手の視界に入って、その状態でクロスに合わせようとしたなら、相手選手のマークにあってフリーでシュートを打つことは出来ないだろう。また、ダビがうまく相手の死角から走り込んでも、藤田のクロスのスピードが緩ければ、単に高さの争いとなりゴールの確率は限りなく低くなる。あくまで相手の死角から視界に現れる一瞬にタイミングを合わせることが得点確率の上昇に必要な条件だと言える。そのために中の選手の動き方やタイミング、ホルダーのクロスの質の向上が求められる。

   札幌には湘南のアジエルのような相手マークを引きつけるほどの個人能力を持った選手はいないのだから、どうすれば得点の確率が上がるのか、またそれを実現するにはどんな技術が必要なのか、もっともっと考えてプレーしなければならない。今回書いたような相手の弱点を利用した質の高い動き方やタイミングの妙は、世界のトップ選手が見せてくれている。優れた技術だけが、彼らから学べるものではない。彼らを食い入るように観察し、多くを学ぶべきだ。

   今回は、組織的な守備にほころびが生まれるシーンに焦点をしぼった。対戦した湘南は札幌によく似たチームで、同じように安定した組織的守備を実践していた。J2ではこの手のチームと戦うことも多いだろう。それらのチーム間で差が出るのは、個人の力量か今回書いたような相手の特性を見極めた上でのプレーである。札幌の選手も、湘南の死角を狙う動きには何度か肝を冷やしただろう。相手からそうしたプレーを吸収することも個の能力、チーム力の向上のために必要である。


post by 菊地具也

22:27

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Jリーグ Division2 2007 第3節 徳島ヴォルティス ― コンサドーレ札幌

2007年07月22日

   第2節はホームで1-0の勝利を収めたものの、選手個々のプレスの質、オフェンス時のイメージ不足、好機を見分けて仕掛ける能力、姿勢の物足りなさなどの課題が浮き彫りになった試合であった。特にオフェンス面の課題と、そこから生じる得点力不足は深刻なレベルにある。今節で何かしらのいい傾向が見られるのか、注目される。

   まずはディフェンスに関して。

   札幌のディフェンスは整備されたフォーメーションから仕掛けるゾーンディフェンスだが、このディフェンス方法で重要なのが、前回まで指摘したように意志統一されたプレッシングとラインコントロールであるが、今節では前節に引き続き、ラインコントロールはうまくできていた。最終、中盤、前線の各ラインがプレスを掛けやすい適度な距離を保てていた。こちらは試合を重ねる度に安定感が増している。各ラインが引きすぎることなく、前線の選手がプレスを掛け始めればそれに呼応してラインを上げる、といった作業ができていたことで、相手が自由にプレーできるスペースが少ない状況を作り出せていた。

   次にプレスの質だが、前節よりも相手と接触するくらいに積極性が増した。特に芳賀は、パスやこぼれ球がどこへ来るかを事前に予測し、それに応じたポジショニングをして早い出足で激しくプレスを仕掛けていた。実際にボールを奪うシーンもいくつかあり、他の選手のお手本になるプレーを見せている。西沢は予測する能力に長けていて、相手に自由なプレーをさせていなかった。

   藤田や西谷なども芳賀に呼応するように、激しく相手を追い回す姿勢が見られ、前回述べたような相手のプレーの幅を狭める効果がある程度期待できるプレスの質であった。しかし彼らの場合、実際にボールを奪うことはまだまだ少なく、プレッシャーをかける程度の効果に留まっている。相手にボールが入った瞬間に当たれるような出足の鋭さや、相手と対峙してボールを奪えるようなディフェンス能力のよりいっそうの向上が必要だろう。

   個人レベルではある程度の質の向上が見られるものの、チーム全体としての質はそれ程向上していない。相手が次にどんなプレーをするのかを予測する高い能力を全員が有し、鋭い出足でプレスを掛けられるようになれば、相手ホルダーにとってはどこにパスを出しても直後に槍が飛んでくるような感覚になり、非常に攻めづらくなるだろう。ラインコントロールが安定し、プレスを仕掛けやすい状況は作り出せているだけに、その質の向上がより一層の守備力の向上につながる。

   次にオフェンスに関して。

   前回、課題として余裕の無駄遣いと攻撃イメージの欠如を挙げた。今節3点を奪ったが、そのうち2点は前者の改善が直接結びついた得点だった。その得点シーンを分析してみたい。

   この2得点は西谷がフリーで運んで行くリプレイのように似た得点だったが、これらの得点の前は札幌がリードしていたため、徳島は前がかりになっていて敵陣には大きなスペースがあった。札幌は自陣でボールを奪い、西谷へつないだ。パスを受けるなり西谷は前を向き、トップスピードでボールを運んだ。ハーフラインからペナルティゾーン付近まで全速力でボールを運び、ゴールへと向かった。その間、徳島の選手は全速力で西谷に注意を払いながら全速力で戻り、札幌の選手も中でボールをもらおうと、ペナルティエリアへと走った。西谷がトップスピードのままエリアに差し掛かった頃には、追いかけている徳島の選手4人ほどがみな、西谷のいる左サイドに寄って、彼の動きに全集中力を傾けていた。そして、札幌の選手がゴール前へ2人、完全にフリーの状態で駆け込んできた。西谷は丁寧なゴロのパスをそのうちの1人に送り、簡単に得点を挙げた。

   この得点は、西谷の全力の運びが全てだったと言える。彼が全力で走ることで、相手選手も全力で自陣へ戻ることを強いられる。加えて、西谷が全速力のまま中央へ切り込んでゴールへ向かうといったリスクに備えるために彼にかなりの注意を払わなければならなくなる。

   自陣の守備が薄く、相手の攻撃のスピードが速い場合は、1つの判断ミスやポジショニングのミスがダイレクトに失点につながるため、ボールの出どころであるホルダーへの注意は欠かせないのである。その分、恐ろしいほどに他選手への注意力が散漫になることが多い。今回もその典型だった。こうした傾向はヨーロッパのビッグクラブで活躍する一流の選手でも見られる。J2リーグの選手ではより強くその傾向が出るだろう。

   このディフェンダーの特質とでも言うべき傾向を利用して得点するのには、特別な技術はいらない。ホルダーは全速力で、多少どこにディフェンダーを引きつけるのか考えて走り、他の選手はゴール前の十分に空いたスペースから、パスが受けやすく、得点しやすい場所を選び、走り込むだけでいいのである。技術力、スピード、プレージャッジ(プレー選択)能力、攻撃のイメージ、これらすべてが十分ではない札幌にとって、極めて有効な攻撃手段となる。自分たちの攻撃パターンだという意識を持ってチームに馴染ませる必要があるだろう。

   ディフェンダーの傾向についてもう1つ。ディフェンダーは、当然ながら、身体の向きを変えたり首をねじったりしなければ、正面180°程度の視野しかない。このことを利用した有効な攻撃というのが非常に多い。

   例えば、今節で札幌がピンチを迎えたシーン。徳島のホルダーが右サイドの比較的浅い位置にいて、中の様子を窺っている。中央にいる曽田、ブルーノは、クロスに備えてフラットな状態で待ち構えている。当然視野はホルダーに向いている。この状態で、中にいる徳島の選手が曽田、ブルーノの死角になっている背後から、斜めに彼らの後ろのスペースへと走り込んだ。その瞬間、ホルダーがクロスを走り込んだ選手へ向けて上げた。曽田とブルーノが慌てて後ろへと戻るが、加速した状態で走り込んだ選手は悠々とボールを受けることに成功し、好機へとつなげた。

   ディフェンダーの死角を利用して先に動き出すことで、一瞬の余裕が生まれる。そこに合わせて正確にパスを出せれば、確実にボールをつなげる。サイドからのクロスを頭で合わせた得点シーンを振り返ると、合わせた選手がディフェンダーの背後から走り込んでいることが非常に多い。この一瞬生まれる余裕を利用できているからだ。

   この一瞬の間が生まれる傾向はディフェンダーの質を問わず、どんな選手にも見られる。死角からスピードにのって走り込んできた選手に対し、視野に捉えてから対応しなければならないのだから、当然である。世界の一流選手はこの事実を意識的に利用することで、得点の確率、プレーの確実性を大幅に上げている。意識さえ出来れば使える技術なので、こうした事実も札幌の選手は一流選手に学び、利用すべきだろう。

   次に、定まったフォーメーションからの攻撃に関して。

   今節は、例えばダビがパスを受けて藤田に落とすといった、パターン化されたプレーが繰り返し見られた。このパターンで攻めれば大体確実につなげる、といった認識が、選手間にあるように見えた。実際、例のような繰り返し見られたパターンではミスが少なく、プレージャッジスピードも速かった。

   定まったフォーメーションからの攻撃のメリットとしては、ここに出せば誰がいる、といったイメージが容易になり、個々がその前提の基にオフェンスのイメージを描ける点にある。前回、オフェンスのイメージが不足していると指摘したが、その欠点をいくらか改善できる手段になり得るだろう。

   しかし、このことは同時に、相手もフォーメーションの認識をし、それに基づいた予測ができるデメリットも生むことになる。結局、攻撃を有効なものとするためには、選手個々が有効な攻撃のイメージができ、それに応じた動き出しが出来なければならない。

   総括としては、様々な指摘はしたが、守備がある程度安定してきたことで、堅実な試合運びができるようになってきたと言える。次節以降もある程度期待できる。得点能力は遅攻やセットプレーから得点する手段に欠けているので、選手個々がイメージを膨らます努力をする必要があるだろう。


post by 菊地具也

20:57

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Jリーグ Division2 2007 第2節 コンサドーレ札幌 ― サガン鳥栖

2007年07月19日

   札幌の開幕戦は、監督が昇格のための柱と考えている、組織的で安定した守備の未完成さを露呈する形で幕を上げた。攻撃もロングボール一辺倒で、得点の絶好機が相手のミスなしでは訪れないような、悲惨な内容だった。

   それから一週間を経て、チームにどのような変化が見られるだろうか。前節は攻守に明らかな問題点が数多くあった。短い時間で修正するのは簡単な作業ではない。今節は今シーズン三浦監督に課せられる、1つ目の試練といえる。

   ディフェンスだが、前節に見られた問題点のいくつかは解消されていた。一番大きな変化は、プレスの掛け方とラインコントロールだろう。
   
   前回指摘した通り、相手にプレッシャーを掛けることは自らが主導した守備をするために不可欠な作業だが、この日はある程度その作業ができていた。前節と変わり大塚と西沢がボランチ、右サイドバックに入り、彼らが的確な判断力で相手のパスコースを読み素早くプレスを掛けることによって、それがチーム全体の積極的なプレス意識につながった。

   プレスは単発では効果がないに等しい。逆に、1人が仕掛けに行って、別の選手も連動して仕掛けに行けば、チーム全体にその積極性が伝わって全体の意志となり、一丸となった守備となる。相手にとってはすべてのパス供給候補先に選手が待ち構えていることになり、判断に窮する。加えて、自身にもプレッシャーは掛かってきて、プレーの余裕は削られる。相手がなす術なくバックパスをするシーンを度々見かけるが、それは相手のプレスディフェンスがチーム一丸となって機能しているケースが多い。

   1人だけが単独で仕掛けに行けば、その逆になる。選手みながプレスを仕掛けるべきか迷い、または仕掛けるべきタイミングをつかめず、後ずさりをし始める。前節の札幌はこの悪いケースだった。それが今節は、大塚と西沢の影響も大きく、ある程度うまくいっていたと言えるだろう。

   しかし、まだまだプレスの質が十分とは言えない。
   
   プレスが有効なのは、ボール保持者(以下ホルダー)のパスコースを限定したり、接触することによってプレーそのものをしづらくしたりできるからだが、それゆえ、相手との距離をとったプレスは意味をなさない。今節の札幌はプレスを仕掛けに行くものの、そのタイミングが一歩遅く、相手がトラップしてパスを出すほどの余裕を与えてしまっていた。このレベルでのプレスでは、その有効性を確認できず、チームのプレスを仕掛ける意志に迷いが生じ、積極性が鈍ることになる。今節、試合を自分たちのペースで進めきれなかったのは、このプレスの質に大きな問題があったと言える。今後は、より相手の攻撃を読み、的確に素早くプレスを掛けて行く能力が求められるだろう。

   このプレスの有効性を大きく左右するのが、ディフェンスラインからトップまでの距離だ。

   この距離が長ければ、その間の選手の密度も薄くなり、相手が自由に動き回れるスペースも広くなり、パスを受けるために動くということも可能になってくる。その分守備側はその動きへの対応を強いられるが、この場合相手に一瞬の余裕を与えてしまうことが多い。相手の動きに合わせて付いて行くのだから、動きが後手に回るのは当然とも言える。

   逆にこの距離が短ければ、相手の動けるスペースも限定され、相手を視野に捉えやすくなり、どのタイミングでプレスを掛ければいいのかもつかみやすくなる。選手個々がそれを感じ、チーム全体の意志統一も容易になり、連動したプレスディフェンスが可能になる。

   この点では、札幌はうまくやっていた。トップが敵陣でプレスを始めれば、センターライン、ディフェンスラインも連動して敵陣にスライドして近づき、全体をコンパクトに保ち、相手のパスに備えることができていた。加えて前述のプレスの質が高まれば、ボール奪取の確率は増え、相手の好機は減るだろう。

   ただ、個人のディフェンス能力の問題もある。1対1で相手と敵対したとき、相手に競り負け突破されるシーンも少なくなかった。1人が抜かれるとそこから組織にほころびが生じ、統一されたプレスもし難くなる。そんなシーンで札幌は、例の後ずさってラインが下がる悪癖が出ていた。その結果、エリア付近で外国人選手のミドルを浴びるといった危険なシーンが生まれていた。1対1の勝負で負けている限りは、今後もこのようなシーンを見ることになるだろう。今後の大きな課題だ。

   次にオフェンスに関して。

   今節は早い時間に相手の退場者が出たこともあって、シュートシーンは多く見られた。しかし、確実に点が取れそうだという好機は数えるほどしかなかった。後半、相手は同点に追いつこうと前がかりになり、敵陣には大きなスペースがあり、基本的な技術やドリブル能力の乏しい札幌攻撃陣にとっては、技術以外のスピードや動き出しの質で勝負できるやりやすい環境だったが、それでも得点できなかった。なぜか。

    主因は、余裕の無駄遣いと攻撃イメージの欠如である。

   例えば、自陣で相手のボールを奪い、カウンター気味の攻撃の際、敵陣4対4で、ホルダーの前には大きなスペースがあった。しかしホルダーは全力でゴールへ向かうのではなく、スピードダウンして味方の上がりを待った。そして安全にパスを通せるタイミングになって初めてパスを出した。
    このプレーのまずさは、相手の立場で考えるとわかりやすい。もしホルダーがスピードにのって、ドリブルを仕掛けてくるような気配を示していれば、ホルダーの動きに注意を払わなければならず、他の選手への注意力も散漫になるが、それがない場合、パスでくるだろうと予測ができ、その分他の選手の動きの予測、実際の動きへの対応もずっとしやすくなる。

   このことは、ホルダーと対面している選手だけに言えることではなく、守備側のチーム全員の選手に言えることだ。ホルダーより後ろにいる選手はホルダーのマークをやめ、上がって行く選手をマークしようと考える。ホルダーの前、横、後ろ、それぞれの位置で同じことが起こるから、攻撃はしづらくなる。スピードダウンすることで、相手が自陣に戻る余裕も与えてしまうことにもなる。仕掛ける姿勢のなさが、これらのデメリットを生んでしまう。マイボールになった瞬間、間髪入れずトップスピードに入り、相手が息つく暇もなくパスを出したりドリブルでしかけたり、そういった迫力、スピードが必要だ。

   札幌の選手は、自分から動いてこんなボールが欲しいとか、自分のその瞬間の理想のプレーを他選手に要求をすることが少なすぎる。オフェンスでもディフェンスでも、味方の動きの様子を見て、合わせようとし過ぎている。その間、躊躇は相手の余裕を生み、味方のためらい、ぎくしゃくした流れを生む。それぞれの選手が要求し、ホルダーがその中から有効な選択肢を選ぶという形にしないと、勢いやスピード、迫力のある攻撃にならないし、相手の予測を上回って好機を生み出すことは難しい。

   前節の戦評で個人間の連携プレーの重要性を述べたが、それ以前に、流れの中の一瞬一瞬の理想のプレーを描いていないことが大きな問題だ。

   どこに動いてどういう受け方をすればフィニッシュにもって行ける、あるいは他選手が走り込むスペースを自分が走ることでつくってパスを出してやろうといった、好機をイメージする力が希薄だと言える。このイメージする力、動きの質は、技術に並びオフェンスで最も必要とされる能力であるが、簡単に身に付くものではない。欧州で活躍するようなそういった能力に長けた選手を観察し、イメージを膨らませる必要があるだろう。

   今節では守備にある程度の改善が見られたものの、どうやって得点するのかという課題は、より深刻になって浮かび上がった。前述のようなオフェンス能力の向上は、監督の指導にも期待しなければならないが、大事なのは選手個々の問題意識化だろう。個々が能力の不足を自覚し、自ら研究し、向上に努めなければ、大きな課題である得点力向上は望めない。


post by 菊地具也

22:01

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三浦コンサドーレ 開幕戦評と今季展望

2007年07月18日

   コンサドーレの今季開幕戦は、0-2の敗戦に終わった。この文では、三浦監督の就任以降の発言と照らし合わせながら、この敗戦が今季のコンサドーレを占う上でどのような意味を持つのか、考えてみたい。
   
   三浦監督は就任以降、J1昇格を目標に掲げ、そのために必要な条件として、組織された安定した守備力と、絶対的なストライカーの存在、つまり安定した守備力を切り裂けるだけの得点力を挙げていた。また監督は、データを重視する。J2全体の傾向として、守備を重視してカウンターでチャンスを窺うチームが多く、流れの中で点を奪うことは簡単ではないとの認識を示し、セットプレーでの得点力も勝つための重要な要素として挙げている。

   これらの昇格に必要な条件を挙げた上で、三浦監督は選手に求める能力も具体的に示している。

1.	監督の構想するフォーメーション、ポジションにフィットしていること
2.	戦術を理解していること
3.	フィジカルの強さ
4. セットプレー時の強さ
   
   沖縄、熊本合宿では、この1、2にあたる戦術練習に、特に力を入れていた。合宿後、『守備に関して、ある程度やりたいことはできた』とのコメントを残している。

   僕は、監督のこれまでの発言から、目指すチーム像はドイツW杯で優勝したイタリアに近いものなのだろうと想像した。まず一にも二にも失点をしないことを考え、かつ鋭いカウンターやセットプレーで得点を奪う。これが彼らのやり方だった。激しいプレスをともなったゾーンディフェンスは、抜群の安定感を誇っていた。コンサドーレの選手の能力が当時のイタリア代表に敵わないことは確かだが、僕はゾーン&プレスのディフェンスならば、組織力とスタミナ、それから指導する監督の理論さえしっかりしていれば、うまくいくだろうと考えていた。守備がうまくいけば、まずは負けないサッカーができると期待していた。

   開幕戦では、その「組織的な守備」が、どの程度昇格有力候補である京都に通じるのか、また得点を奪うために、流れの中ではどのような手法を用いるのか、また監督が重要性を指摘しているセットプレーの精度はどうか、などに注目した。

   迎えた開幕戦。結果は0-2というスコアだったが、内容はその数字以上に差を感じるものだった。

   まずまっ先に感じたことは、一ヶ月近くかけて監督が整備した「組織的な守備」が、欠陥だらけだったということだ。ボールをどこで奪うつもりなのか、意図が全く見えない。ディフェンス時、選手はバックライン、中盤のラインがフラットの4-4-2のフォーメーションをきっちりつくり、攻撃に備えたが、選手たちには一向にプレスをかける気配がない。ボールを持った選手に対し、寄せる気配だけを示し、ボールを奪いにいこうとしない。そして相手と対面しながらずるずると自陣へと下がる。この繰り返しだった。ラインが下がればミドルシュートを打たれる危険性もあるし、下がった状態でファールをすれば、重要な得点源であるセットプレーを、ゴール射程圏で与えることにもなる。また、中盤のラインが最終ラインに飲み込まれるケースも多い。そうなると、こぼれ球も拾えなくなる。

   このディフェンスの決定的な欠陥は、相手が自由にプレーしやすいということだ。

   相手に接触するくらいのプレスを掛ければ、当然相手のプレーの選択は制限される。例えばパスコースの限定。股抜きなどの高度なテクニックを使えなければ、プレスを仕掛けてきた方向にパスを出すことは難しい。パスコースが限定されることで、次のプレスも当然かけやすくなる。ここで、バランスの良い配置からのゾーンディフェンスが冴えを見せることになる。プレス→相手選手のプレーの限定→プレスの目標を定める→出足のいいプレスがかかる...こんな好循環が期待できるのである。さらに、全体がディフェンス時から前へ前へという意識を持つことで、ボールを奪取した際の攻撃への転換もスムーズになる。カウンターへのスタートダッシュができる。プレスの連鎖によって可能になるパスカットなどは、トップスピードに近い状態でボールを奪い、攻撃に移れるいい例だ。

   しかしこの日のコンサドーレには、プレスの意識を全くと言っていいほど感じなかった。自分のゾーンから抜かれなければそれでいい。それくらいの守備意識しか感じられなかった。結果、フラットな4-4-2は形骸化し、フラットはむしろ弱点となって、ラインとラインの隙間をワンツーなどで幾度となく突かれた。そしてミドルシュートを浴び、ファールを犯し、フリーキックを与えた。

   守備で受けた印象は、極めて消極的な守備意識だけである。意味のないきれいな形の4-4-2は、滑稽でさえあった。頑にフォーメーションをキープしようとする選手たち。その形に意味はないが、その形も遂にはその効果のなさゆえに、崩れてしまった。イタリア代表流の、激しく堅固なゾーンディフェンスをイメージしていただけに、この日の光景は大きなショックだった。三浦監督は試合後のインタビューで、『アグレッシブさが足りなかった』と発言していたが、これはプレスをうまく掛けられなかった、という意味なのだろうか。今まではプレスをうまく掛けていたのにこの日はできなかった、という意味であったのならよいのだが...

   攻撃はというと、こちらも光明を見出すのが難しい内容だった。

   札幌はマイボールになると7割がた、ロングボールを前線に蹴り込んでいた。ところが前線のダヴィと中山は後方のラインから孤立し、たとえ高さで相手に勝り、競り勝ったとしても、後方からのサポートはなく、誰にも落とすことができない状態だった。自分で前を向いてボールを持って、ドリブルで運ぼうとしていたのは西谷と砂川くらいで、あとの選手はロングボールを前線に当てるか、ボールを誰かにあずけ、自分があがってリターンを受けようとする、それくらいの選択しかしなかった。攻撃に参加するのも基本的には前の4人だけで、ガンガン上がってサポートをしようとする選手もいなかった。カウンター時でさえ、サポートはなかった。4人以上は攻撃に参加してこない。何かそういう決めごとでもあるのかと疑いたくなるくらい、不自然なほどサポートがなかった。

   サポートがないということは、ボール保持者のプレーの選択肢が少なくなり、相手もディフェンスをしやすくなるということだ。味方がパスをできる範囲にいれば、相手のマーカーはそちらを気にしながらのディフェンスをしなくてはならない。また、保持者に2人のマーカーが付いていた場合、サポートの選手が上がることによって1人、うまくいけば2人とも、そちらにつられるかもしれない。少なくともある程度の注意を削ぐことができる。おとりに使うのもよし、壁パスに使ってもいい。とにかくプレーの幅が広がり、相手の力は分散することになる。そして、サポートには特別な技術はいらない。どこに、どのタイミングでサポートに行くのが有効か。その判断さえ出来ればいいのだ。札幌には1人で何人も抜くことのできるような突出したプレーヤーはいないのだから、技術のいらない有効な手段をどんどん取り入れるべきだ。

   監督がキーポイントに挙げたセットプレーは、直接ゴールを狙えるようなキッカーはいない。しかしこの日のゲームでは、札幌の単純な高さの魅力は感じた。CKで相手のマーカーが選手に集中できている時にまともにセンタリングを入れても、中にいる選手の動き方が悪いこともあって、ズドンと入ることはあまりなさそうだが、リアクションのボール、つまりマークがばらばらになってからのセンタリングならば札幌の選手の高さが活きると感じた。セットプレーでは、正攻法でぴったり狙った選手に合わせるのではなく、ひたすらマークがごちゃごちゃになるよう工夫すれば、ゴールの可能性は高まると思った。

   今季の展望だが、まだ開幕戦を終えただけ、この試合に限って開幕前のパフォーマンスができなかったのかもしれない。しかし、そのことを差し引いても昇格圏内へ向けて多いに不安の残る内容だったといわざるを得ない。個人の力量では東京Vや京都などにはとても及ばないことは明白だ。札幌はやはり、まずはゾーン&プレッシングディフェンスで堅固な守備力を身につけ、カウンターや遅攻での個人間の関係を見直し、個の力以外で勝負をすることを考える必要がある。

   ここからチームがどう改善されていくのか。まずは次節、注目したい。


post by 菊地具也

00:55

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