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菊地具也(キクチトモヤ) 1985年生まれ 北海道在住 中、高、大、野球部所属。 趣味はスポーツ全般の観戦。

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Jリーグ Division2 2007 第3節 徳島ヴォルティス ― コンサドーレ札幌

2007年07月22日

   第2節はホームで1-0の勝利を収めたものの、選手個々のプレスの質、オフェンス時のイメージ不足、好機を見分けて仕掛ける能力、姿勢の物足りなさなどの課題が浮き彫りになった試合であった。特にオフェンス面の課題と、そこから生じる得点力不足は深刻なレベルにある。今節で何かしらのいい傾向が見られるのか、注目される。

   まずはディフェンスに関して。

   札幌のディフェンスは整備されたフォーメーションから仕掛けるゾーンディフェンスだが、このディフェンス方法で重要なのが、前回まで指摘したように意志統一されたプレッシングとラインコントロールであるが、今節では前節に引き続き、ラインコントロールはうまくできていた。最終、中盤、前線の各ラインがプレスを掛けやすい適度な距離を保てていた。こちらは試合を重ねる度に安定感が増している。各ラインが引きすぎることなく、前線の選手がプレスを掛け始めればそれに呼応してラインを上げる、といった作業ができていたことで、相手が自由にプレーできるスペースが少ない状況を作り出せていた。

   次にプレスの質だが、前節よりも相手と接触するくらいに積極性が増した。特に芳賀は、パスやこぼれ球がどこへ来るかを事前に予測し、それに応じたポジショニングをして早い出足で激しくプレスを仕掛けていた。実際にボールを奪うシーンもいくつかあり、他の選手のお手本になるプレーを見せている。西沢は予測する能力に長けていて、相手に自由なプレーをさせていなかった。

   藤田や西谷なども芳賀に呼応するように、激しく相手を追い回す姿勢が見られ、前回述べたような相手のプレーの幅を狭める効果がある程度期待できるプレスの質であった。しかし彼らの場合、実際にボールを奪うことはまだまだ少なく、プレッシャーをかける程度の効果に留まっている。相手にボールが入った瞬間に当たれるような出足の鋭さや、相手と対峙してボールを奪えるようなディフェンス能力のよりいっそうの向上が必要だろう。

   個人レベルではある程度の質の向上が見られるものの、チーム全体としての質はそれ程向上していない。相手が次にどんなプレーをするのかを予測する高い能力を全員が有し、鋭い出足でプレスを掛けられるようになれば、相手ホルダーにとってはどこにパスを出しても直後に槍が飛んでくるような感覚になり、非常に攻めづらくなるだろう。ラインコントロールが安定し、プレスを仕掛けやすい状況は作り出せているだけに、その質の向上がより一層の守備力の向上につながる。

   次にオフェンスに関して。

   前回、課題として余裕の無駄遣いと攻撃イメージの欠如を挙げた。今節3点を奪ったが、そのうち2点は前者の改善が直接結びついた得点だった。その得点シーンを分析してみたい。

   この2得点は西谷がフリーで運んで行くリプレイのように似た得点だったが、これらの得点の前は札幌がリードしていたため、徳島は前がかりになっていて敵陣には大きなスペースがあった。札幌は自陣でボールを奪い、西谷へつないだ。パスを受けるなり西谷は前を向き、トップスピードでボールを運んだ。ハーフラインからペナルティゾーン付近まで全速力でボールを運び、ゴールへと向かった。その間、徳島の選手は全速力で西谷に注意を払いながら全速力で戻り、札幌の選手も中でボールをもらおうと、ペナルティエリアへと走った。西谷がトップスピードのままエリアに差し掛かった頃には、追いかけている徳島の選手4人ほどがみな、西谷のいる左サイドに寄って、彼の動きに全集中力を傾けていた。そして、札幌の選手がゴール前へ2人、完全にフリーの状態で駆け込んできた。西谷は丁寧なゴロのパスをそのうちの1人に送り、簡単に得点を挙げた。

   この得点は、西谷の全力の運びが全てだったと言える。彼が全力で走ることで、相手選手も全力で自陣へ戻ることを強いられる。加えて、西谷が全速力のまま中央へ切り込んでゴールへ向かうといったリスクに備えるために彼にかなりの注意を払わなければならなくなる。

   自陣の守備が薄く、相手の攻撃のスピードが速い場合は、1つの判断ミスやポジショニングのミスがダイレクトに失点につながるため、ボールの出どころであるホルダーへの注意は欠かせないのである。その分、恐ろしいほどに他選手への注意力が散漫になることが多い。今回もその典型だった。こうした傾向はヨーロッパのビッグクラブで活躍する一流の選手でも見られる。J2リーグの選手ではより強くその傾向が出るだろう。

   このディフェンダーの特質とでも言うべき傾向を利用して得点するのには、特別な技術はいらない。ホルダーは全速力で、多少どこにディフェンダーを引きつけるのか考えて走り、他の選手はゴール前の十分に空いたスペースから、パスが受けやすく、得点しやすい場所を選び、走り込むだけでいいのである。技術力、スピード、プレージャッジ(プレー選択)能力、攻撃のイメージ、これらすべてが十分ではない札幌にとって、極めて有効な攻撃手段となる。自分たちの攻撃パターンだという意識を持ってチームに馴染ませる必要があるだろう。

   ディフェンダーの傾向についてもう1つ。ディフェンダーは、当然ながら、身体の向きを変えたり首をねじったりしなければ、正面180°程度の視野しかない。このことを利用した有効な攻撃というのが非常に多い。

   例えば、今節で札幌がピンチを迎えたシーン。徳島のホルダーが右サイドの比較的浅い位置にいて、中の様子を窺っている。中央にいる曽田、ブルーノは、クロスに備えてフラットな状態で待ち構えている。当然視野はホルダーに向いている。この状態で、中にいる徳島の選手が曽田、ブルーノの死角になっている背後から、斜めに彼らの後ろのスペースへと走り込んだ。その瞬間、ホルダーがクロスを走り込んだ選手へ向けて上げた。曽田とブルーノが慌てて後ろへと戻るが、加速した状態で走り込んだ選手は悠々とボールを受けることに成功し、好機へとつなげた。

   ディフェンダーの死角を利用して先に動き出すことで、一瞬の余裕が生まれる。そこに合わせて正確にパスを出せれば、確実にボールをつなげる。サイドからのクロスを頭で合わせた得点シーンを振り返ると、合わせた選手がディフェンダーの背後から走り込んでいることが非常に多い。この一瞬生まれる余裕を利用できているからだ。

   この一瞬の間が生まれる傾向はディフェンダーの質を問わず、どんな選手にも見られる。死角からスピードにのって走り込んできた選手に対し、視野に捉えてから対応しなければならないのだから、当然である。世界の一流選手はこの事実を意識的に利用することで、得点の確率、プレーの確実性を大幅に上げている。意識さえ出来れば使える技術なので、こうした事実も札幌の選手は一流選手に学び、利用すべきだろう。

   次に、定まったフォーメーションからの攻撃に関して。

   今節は、例えばダビがパスを受けて藤田に落とすといった、パターン化されたプレーが繰り返し見られた。このパターンで攻めれば大体確実につなげる、といった認識が、選手間にあるように見えた。実際、例のような繰り返し見られたパターンではミスが少なく、プレージャッジスピードも速かった。

   定まったフォーメーションからの攻撃のメリットとしては、ここに出せば誰がいる、といったイメージが容易になり、個々がその前提の基にオフェンスのイメージを描ける点にある。前回、オフェンスのイメージが不足していると指摘したが、その欠点をいくらか改善できる手段になり得るだろう。

   しかし、このことは同時に、相手もフォーメーションの認識をし、それに基づいた予測ができるデメリットも生むことになる。結局、攻撃を有効なものとするためには、選手個々が有効な攻撃のイメージができ、それに応じた動き出しが出来なければならない。

   総括としては、様々な指摘はしたが、守備がある程度安定してきたことで、堅実な試合運びができるようになってきたと言える。次節以降もある程度期待できる。得点能力は遅攻やセットプレーから得点する手段に欠けているので、選手個々がイメージを膨らます努力をする必要があるだろう。


post by 菊地具也

20:57

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