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菊地具也(キクチトモヤ) 1985年生まれ 北海道在住 中、高、大、野球部所属。 趣味はスポーツ全般の観戦。

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Jリーグ Division2 2007 第2節 コンサドーレ札幌 ― サガン鳥栖

2007年07月19日

   札幌の開幕戦は、監督が昇格のための柱と考えている、組織的で安定した守備の未完成さを露呈する形で幕を上げた。攻撃もロングボール一辺倒で、得点の絶好機が相手のミスなしでは訪れないような、悲惨な内容だった。

   それから一週間を経て、チームにどのような変化が見られるだろうか。前節は攻守に明らかな問題点が数多くあった。短い時間で修正するのは簡単な作業ではない。今節は今シーズン三浦監督に課せられる、1つ目の試練といえる。

   ディフェンスだが、前節に見られた問題点のいくつかは解消されていた。一番大きな変化は、プレスの掛け方とラインコントロールだろう。
   
   前回指摘した通り、相手にプレッシャーを掛けることは自らが主導した守備をするために不可欠な作業だが、この日はある程度その作業ができていた。前節と変わり大塚と西沢がボランチ、右サイドバックに入り、彼らが的確な判断力で相手のパスコースを読み素早くプレスを掛けることによって、それがチーム全体の積極的なプレス意識につながった。

   プレスは単発では効果がないに等しい。逆に、1人が仕掛けに行って、別の選手も連動して仕掛けに行けば、チーム全体にその積極性が伝わって全体の意志となり、一丸となった守備となる。相手にとってはすべてのパス供給候補先に選手が待ち構えていることになり、判断に窮する。加えて、自身にもプレッシャーは掛かってきて、プレーの余裕は削られる。相手がなす術なくバックパスをするシーンを度々見かけるが、それは相手のプレスディフェンスがチーム一丸となって機能しているケースが多い。

   1人だけが単独で仕掛けに行けば、その逆になる。選手みながプレスを仕掛けるべきか迷い、または仕掛けるべきタイミングをつかめず、後ずさりをし始める。前節の札幌はこの悪いケースだった。それが今節は、大塚と西沢の影響も大きく、ある程度うまくいっていたと言えるだろう。

   しかし、まだまだプレスの質が十分とは言えない。
   
   プレスが有効なのは、ボール保持者(以下ホルダー)のパスコースを限定したり、接触することによってプレーそのものをしづらくしたりできるからだが、それゆえ、相手との距離をとったプレスは意味をなさない。今節の札幌はプレスを仕掛けに行くものの、そのタイミングが一歩遅く、相手がトラップしてパスを出すほどの余裕を与えてしまっていた。このレベルでのプレスでは、その有効性を確認できず、チームのプレスを仕掛ける意志に迷いが生じ、積極性が鈍ることになる。今節、試合を自分たちのペースで進めきれなかったのは、このプレスの質に大きな問題があったと言える。今後は、より相手の攻撃を読み、的確に素早くプレスを掛けて行く能力が求められるだろう。

   このプレスの有効性を大きく左右するのが、ディフェンスラインからトップまでの距離だ。

   この距離が長ければ、その間の選手の密度も薄くなり、相手が自由に動き回れるスペースも広くなり、パスを受けるために動くということも可能になってくる。その分守備側はその動きへの対応を強いられるが、この場合相手に一瞬の余裕を与えてしまうことが多い。相手の動きに合わせて付いて行くのだから、動きが後手に回るのは当然とも言える。

   逆にこの距離が短ければ、相手の動けるスペースも限定され、相手を視野に捉えやすくなり、どのタイミングでプレスを掛ければいいのかもつかみやすくなる。選手個々がそれを感じ、チーム全体の意志統一も容易になり、連動したプレスディフェンスが可能になる。

   この点では、札幌はうまくやっていた。トップが敵陣でプレスを始めれば、センターライン、ディフェンスラインも連動して敵陣にスライドして近づき、全体をコンパクトに保ち、相手のパスに備えることができていた。加えて前述のプレスの質が高まれば、ボール奪取の確率は増え、相手の好機は減るだろう。

   ただ、個人のディフェンス能力の問題もある。1対1で相手と敵対したとき、相手に競り負け突破されるシーンも少なくなかった。1人が抜かれるとそこから組織にほころびが生じ、統一されたプレスもし難くなる。そんなシーンで札幌は、例の後ずさってラインが下がる悪癖が出ていた。その結果、エリア付近で外国人選手のミドルを浴びるといった危険なシーンが生まれていた。1対1の勝負で負けている限りは、今後もこのようなシーンを見ることになるだろう。今後の大きな課題だ。

   次にオフェンスに関して。

   今節は早い時間に相手の退場者が出たこともあって、シュートシーンは多く見られた。しかし、確実に点が取れそうだという好機は数えるほどしかなかった。後半、相手は同点に追いつこうと前がかりになり、敵陣には大きなスペースがあり、基本的な技術やドリブル能力の乏しい札幌攻撃陣にとっては、技術以外のスピードや動き出しの質で勝負できるやりやすい環境だったが、それでも得点できなかった。なぜか。

    主因は、余裕の無駄遣いと攻撃イメージの欠如である。

   例えば、自陣で相手のボールを奪い、カウンター気味の攻撃の際、敵陣4対4で、ホルダーの前には大きなスペースがあった。しかしホルダーは全力でゴールへ向かうのではなく、スピードダウンして味方の上がりを待った。そして安全にパスを通せるタイミングになって初めてパスを出した。
    このプレーのまずさは、相手の立場で考えるとわかりやすい。もしホルダーがスピードにのって、ドリブルを仕掛けてくるような気配を示していれば、ホルダーの動きに注意を払わなければならず、他の選手への注意力も散漫になるが、それがない場合、パスでくるだろうと予測ができ、その分他の選手の動きの予測、実際の動きへの対応もずっとしやすくなる。

   このことは、ホルダーと対面している選手だけに言えることではなく、守備側のチーム全員の選手に言えることだ。ホルダーより後ろにいる選手はホルダーのマークをやめ、上がって行く選手をマークしようと考える。ホルダーの前、横、後ろ、それぞれの位置で同じことが起こるから、攻撃はしづらくなる。スピードダウンすることで、相手が自陣に戻る余裕も与えてしまうことにもなる。仕掛ける姿勢のなさが、これらのデメリットを生んでしまう。マイボールになった瞬間、間髪入れずトップスピードに入り、相手が息つく暇もなくパスを出したりドリブルでしかけたり、そういった迫力、スピードが必要だ。

   札幌の選手は、自分から動いてこんなボールが欲しいとか、自分のその瞬間の理想のプレーを他選手に要求をすることが少なすぎる。オフェンスでもディフェンスでも、味方の動きの様子を見て、合わせようとし過ぎている。その間、躊躇は相手の余裕を生み、味方のためらい、ぎくしゃくした流れを生む。それぞれの選手が要求し、ホルダーがその中から有効な選択肢を選ぶという形にしないと、勢いやスピード、迫力のある攻撃にならないし、相手の予測を上回って好機を生み出すことは難しい。

   前節の戦評で個人間の連携プレーの重要性を述べたが、それ以前に、流れの中の一瞬一瞬の理想のプレーを描いていないことが大きな問題だ。

   どこに動いてどういう受け方をすればフィニッシュにもって行ける、あるいは他選手が走り込むスペースを自分が走ることでつくってパスを出してやろうといった、好機をイメージする力が希薄だと言える。このイメージする力、動きの質は、技術に並びオフェンスで最も必要とされる能力であるが、簡単に身に付くものではない。欧州で活躍するようなそういった能力に長けた選手を観察し、イメージを膨らませる必要があるだろう。

   今節では守備にある程度の改善が見られたものの、どうやって得点するのかという課題は、より深刻になって浮かび上がった。前述のようなオフェンス能力の向上は、監督の指導にも期待しなければならないが、大事なのは選手個々の問題意識化だろう。個々が能力の不足を自覚し、自ら研究し、向上に努めなければ、大きな課題である得点力向上は望めない。


post by 菊地具也

22:01

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