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2010年07月06日

ザ・コーヴ

福島ではやってない映画「ザ・コーヴ」を見るために、仙台に行って来ました。(ややネタばれです)

和歌山県・太地町のイルカ漁を取り扱っているため、上映させるのさせないのと言う時点で既に話題になりましたが、見るなと言われると見たくなるのが人情ってもんです。
第一、誰かが映画を見る権利を勝手に奪っていい法はありません。
やっぱり見てから考えたいと思いました。

映画の中心を流れるのは、元イルカの調教師で、日本でも大いにはやったアメリカTV映画「腕白フリッパー」のフリッパーも調教したリック・オバリー氏のイルカに対する気持ちです。
日本では、映画中のイルカ漁のことだけに焦点が集まっています(確かに一番のインパクトです)が、おそらく彼が映画に載せたいメッセージは、太地町に限らず、世界中のイルカを自由にしたいと言うことです。

彼は、調教師としてイルカとつきあううち、囲いの中でイルカを飼うことには無理があると考え始めたんですが、解放運動に向かう引き金になったのは、フリッパー役のイルカのうちの一頭が、鬱状態になり、最期は、オバリー氏の腕の中で自殺した(意識的に呼吸~海上に噴気口を出して息をする~をしないと呼吸できない鯨類であるイルカが、意識的に呼吸しなかった)のを見たときだそうです。
彼は、フリッパーで儲けたお金でイルカを買い戻して解放すれば良かったのに、いい気になって車なんか買ってしまった、と自嘲的に話していました。

太地町では、彼を含む映画の製作者と、「この場所やこの場所には入らないで」とか、「イルカ漁に反対するのが目的ではないですか?」など一応、彼らに確認をとるのですが(一応いい返事)、もちろん彼らの目的は、なんとかイルカ漁の様子、特に、イルカを追い込んでいるところでなく、その中から水族館などに売るためのイルカを除いた食料となるイルカをと殺する現場を撮ることです。
そのために集めたスタッフが凄腕揃い、映画の小道具専門家(カメラを岩に見立てた中に隠す)や、素潜りの名人、どんな凄い場所でも撮影してきたというカメラマンなど、一流の腕の人間が太地町に集まってきます。
当然、こんな大がかりな計画に、1つの小さな漁師町が太刀打ちできるものではないことは明らか、見つかったりしながらも、隠し撮りの撮影は成功しました。

映画を見る前に、どんなシーンでも感情的には見るまいと思っていました。
と殺の現場は、イルカでなくても、どんな食料とされる動物の場合も、それが見るに忍びないものであることは想像がつきます。
もともとは、それだって各人がやらなければ食べられない約束だったわけですし、ここで感情移入してはいけないと自制しつつ、それでも、血を噴きながら逃げようとするイルカが沈んでいくシーンなど、感情的にならずにおれないシーンもありました。
(が、それは同じ生き物として当然の感情でもあるわけですしね。)

ただ、この映画、私には、かわいそうなイルカを救おうと果敢に挑むヒーロー映画には映りませんでした。
やっつけるべき悪者不在の映画です。
イルカへの純粋な思いを語るオバリー氏にも、生活のためにイルカ漁をする漁師さんの側も、おそらく双方とも、根っこのところに悪気はない、それなのにぶつかり合わないといけないのは、見ていてつらいところです。

責める側も抵抗する側も、相手を間違えているような気がするんです。
映画のストーリーに悪者が必要なら、それはもっと別のところにいるような気がしてなりません。

オバリー氏(前に彼の本を読んだときにはあまり共感してなかったんですが。たとえば、水族館から解放したあとのイルカが野生で生き残れるのかと思うと、あまりに無責任に感じて)の側から言うと、彼のイルカへの純粋な気持ちには共感できるものがありましたが、それを映画にしようとするととたんにうさんくさいものもつきまとってくるものです。

太地町の側から考えると、日本の第一次産業で、国から何の補助も受けずにやっていける産業なんてないと思いますが、太地町の漁師さんも、そうだと思います。
昔、ホエールウォッチングを始めようとする町の役場の方とお話する機会があったんですが、ホエールウォッチングは始めたいけど、国(農水省)からの補助金がでなくなるような方向(反捕鯨とか)のイメージになると漁業を営む町としてはまずいという思いもあるようでした。
それに、正義を真っ向からぶら下げて来られたら、逃げ道なくなっちゃいますから、漁師さんたちの中には、意固地にならざるを得ない部分もあると思います。
(でも、漁師さんって一本気な、わかればとことん分かってくれるような人が多いんです。)

文化の違いもあると思います。
考え方や感じ方、交渉の仕方、互いが各自正しいと思ってきたやり方で真っ向勝負するので、混じり合うところを見失ってる感じがします。

映画の中では、イルカ肉の水銀量についてもインタビューがあっています。
イルカは食物連鎖のほぼ頂点にいる長生きの動物なので、補食する下位の魚の体内にある水銀が長年に渡って蓄積されるためです。
今日のニュースによると、そのインタビューをうけた准教授が、反捕鯨のために使われるとは思わなかったのでと、シーンの削除を求めているそうですが、それが圧力によるものなのか?データが間違っていたのか?どうして削除を求められたのか、理由が知りたいところです。
(本当にそのデータが正しいのなら、隠しておくような数値ではなかったんですから!)

どうも、とりとめない長文になってしまいました。
尻切れトンボですが、エネルギーがそろそろ終わりです。

posted by じゅうよっつ |22:59 | 映画 |