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2006年02月13日

リアル/バーチャル

常々ネットをやってて年に一度くらいどっかで大論争になってるのが

「ネットはリアルかバーチャルか」

というネタ。

このところネットの片隅で再燃している「リアルとバーチャル論」だけど、そのネタ元は「ウェブ進化論 ほんとうの大進化はこれから始まる」の発売に刺激を受けた(自分もその一人)からなんだろうと思うけど。

ネットにおけるコミュニケーションは不毛だとか、現場で顔をあわせるコミュニケーションこそが至上でネットにおける意味などないとか、そういうことが延々と語られたり反論されたり罵倒されたりしてきた。そうしてネットの立場は毎回「リアル」の前に沈没させられてきたけど、このごろちょっと風向きが変わってきたのかな、ということを感じている。Blogの普及がそのひとつ。誰も彼もがネットでの言論空間(という言葉がカッコよすぎるのなら、「人に見られるチラシの裏」とでも言おうか)を持つ事によって認知され、大衆化されてきた。つまりは、「バーチャル」という言葉の持つ旧時代的なイメージがやっと変化して「大衆メディア」としてのカオになってきたのだろうか、と思う。これはこれで、善悪ふくめて、言葉と時代に沿ったいいカンジのものになってきたんじゃない?

つまり、前時代的な「リアル」「バーチャル」の持つ一面的なイメージは駆逐されつつある。

一言で「バーチャル」と言ってしまうと有史以来人間が生み出したコミュニケーションツールやメディアぜんぶがバーチャルになってしまうのであって、それは昔で言うところの電報だったり電話だったりテレビだったりするのだ。これらが新たな「リアル」の時代を作り出した。そうして、今まで僕らがやってきたコミュニケーションや、見聞きしたもののなかに、「お前はリアルじゃない」と前時代的「リアル」どもに蔑み罵られてきた「バーチャル」がこの時代の層に加わった。テレビやラジオに代わる、新たなメディアというチカラ(←こうやって朝日新聞風にカタカナで「チカラ」って書くとこっ恥ずかしいというのを今身をもって経験した(笑))がバーチャルとリアルの境目にいる状況が現代だ。確かにネットはまだ完全ではないが、ネットの進化はある程度予測できても(Web2.0とかね)完全性などどこにも見えないものであり、見えてくるものでもない。けれども確かにネットでこうやってブロガーたちが発信するものは紛れもない「リアル」である。

それに対する「現場主義」という考え方も否定しないではない。だって自分も現場(リアル)の真っ只中にいたんだから、その良さと面白さだってわかってる。でも最近思うのは「現場の多様化」ということだ。リアルは一面だけじゃない。限りなく球体に近い多面形で、人それぞれの思いも行動もある。それを現場の限られた一場面だけでひとくくりにしてしまうのは、とても危うい感じがする。あまりにも前進主義でありすぎて、次を求めることしかしなさすぎて、その急進的な感じが怖い。オプティミズムが時代を動かすとは限らないんじゃないのか、と思う。今だからこそ、ちょっと足を止めて自分たちの立ち位置を考えてみるのも悪くないんじゃないか。

ところで昔流行った「バーチャルリアリティ」という言葉がある。極論すればバーチャルを用いてリアルをそのなかに取り込む、という意味だ(本当に極論だな)。ただ、この言葉が語られた(あるいは一人歩きした)イメージはカクカクしたポリゴンでどう見てもかわいくなんかない「美少女」が画面の中を動いてプレイヤーに告白する、みたいなイメージが先行して植えつけられてしまって、結局この言葉は「オタクっぽい」の一言でゴミ箱に投げ捨てられた。でもこの言葉をもう一度拾いなおしてみてみると、今の時代になぜかしっくりくる部分だってある。時代が「バーチャルリアリティ」という言葉が概念的に目指していた方向へと向かっている、気がする。

ネットはリアルの一部に食い込んでいるし、もうネットがリアルかどうかなんて議論こそ不毛そのものに他ならない。コミュニケーションの一手段として、メディアのひとつとしてもうちょっと考えてみてもいいんじゃないだろうか。「お前が逝け」「いやお前が逝けよ」と掲示板で罵りあったり、現場では「逃げんじゃねえ」とすごんだ奴のブログのエントリに説明を求める他のブロガーのコメントやTBを「うざい」とか「名前出せ」だので振り払った挙句に炎上するなんてのは「リアルの忌避」に他ならないし、世界が広がっていることを知らないという事こそが新しいインターフェースに対応できないが故の「逃げ」であり「罪」なんじゃないかと思う。

だからこそ今、世界という無限大の多面体の一側面を、ネットはもう果たしていることに、その一面に、目を向けるべき時代なんじゃないだろうか。


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posted by ishimori |21:47 | miscellany | コメント(1) | トラックバック(1)