2007年10月29日
【第48節 愛媛FC戦】攻守のバランス
愛媛戦は久しぶりのアウェイと言うこともあり、ゴール裏から声をからしての応援となりました。ゴール裏からの眺めは、普段見ているサイドからの視界とはまた違って新鮮です。 おそらく土曜日の試合を、愛媛の人たちは五分五分の試合、まぐれの事故で札幌が偶然拾った試合、と考えるでしょう。シュート数などは確かにまったく互角です。しかしゴール裏か見ると、札幌と愛媛には大きな確かな違いがありました。 一つは札幌の方がボールの動く振幅が大きいこと。右から左、後ろから前、あきからに2割増で札幌の方が大きくボールが動いていました。 この大きなボールの動きは柳下さん3年間の遺産だと思います。 もうひとつ目を見張ったのは守備の落ち着き。相手が攻め込んだように見えて、しっかりとシュートコースを塞いで前進を阻んだかと思うと、そのスキにきちんとカバーが入り、いつのまにか、可能性の少ないシュートを打つか、ボールを戻すしかない状況を、流れ作業のように札幌は作り出しました。 シュート数は10対9と互角ながら、ゴールキック数が札幌9に対して愛媛は19なのですね。これは愛媛のシュートやセンタリングがキーパーの手に渡る前にたたき落とされていることを示しています。 こうしてみると札幌の守備は、攻め込まれて守っている、というよりも、自らの懐に相手を誘い込み、わざと前がかりとならせて、相手ゴール前にスペースを作るという高度な誘いのように思えます。おそらくそうなのだと思います。 このように札幌の試合を何試合も見てきたはずの私でもあらためて舌を巻く札幌の守備ですが、攻撃の方はあまり誉められたものではありません。何というのか、最後の最後のフィニッシュに迫力を欠く。 肝心なところでパスしてしまう、スルーしてしまう、上げてしまう、そらしてしまう。または下げてしまう。「お上品」という言葉につかわしい攻撃でした。 しかし札幌の攻撃だけを取り出して見ても意味がないのでしょう。札幌で攻守は一体で、絶妙な守備の裏側にお上品な攻撃があり、お上品な攻撃の裏に鉄壁の守備がある。だからウエイトが攻撃に傾くと守備が不安定になります。攻勢を強めた後半は、確かに前半よりも危うい場面が増えました。 三浦サッカーの神髄は、鉄壁の守備のように語られますが、核心はやじろべえのような攻守の絶妙なバランスにあるのだと思いました。 チームとしての個々の力の合計は昨年と変わらないか、フッキがいないことを考えると低下しています。それなのに現在首位ということは、これ以上行くと攻撃偏重になり、これ以下だと守備的になりすぎるという、ギリギリのバランスを追求することに成功したということなのかと思いました。 昨年までの札幌のように、攻撃が70で守備が30のウェイトでは、大勝ちもあるけどれどこぼす試合も多い。一方、守備が70では、受身になりすぎて、結局、こじ開けられてしまう。個々の力の強いチームだと、守備と攻撃のバランスの幅が大きいけれど、力のないチームだと、ほんのわずかな幅しかない。 しかし、札幌はそのわずかな幅の中に攻守を収めることに成功した。それが現在首位にいる理由なのかなと、試合を見ながら思いました。 (続く)
posted by Hibari |23:34 | 試合の感想 | コメント(1) | トラックバック(1)