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2005年11月13日

めざせカッチャン甲子園

福岡に来たならば、やはり博多のラーメンは食べておかねばならない。
そう思い立ち、地下鉄福岡空港駅で地下鉄の一日乗車券を購入し
天神の向こう、赤坂に赴いた。
福岡の地下鉄一日乗車券は札幌で言うところのドニチカきっぷより
若干値段は張る(600円)が、初乗り料金が札幌の1.25倍なので
お得感で言えばこっちの方が多分あるのだろうか?
と思ったが、計算してみたら大した違いも無かった。残念。

閑話休題。

赤坂駅をおりると、よく解らん城址っぽい堀がある。
木々は色づき、秋の訪れを東京よりも強く感じる。
(すいとうとう。せからしか。よかろうもん。なんばすっとね。とんこつ。)
道行く人の会話から、色々な方言が耳に入ってくる。こういう事も遠征の楽しみだ。

10分も歩けば元祖ラーメン長浜屋に到着する。
店の前の駐車場には、普通の車に混じって
明らかにサイズオーバーな一台のコンボイ(上から排気する奴)が駐車されていた。

ガラガラ・・ カタ。 みっつ。ズズズ バリカタで。ふたつ。
 ガラガラ・・・ 玉。ズズ 半分ね。 ガラガラ・・・

店に入ると謎の言葉以外は全く会話が無い。完全なるアウエー。
テーブルはビールケースを積み上げた上に板を乗せたようなもの。
予め独特の注文の仕方(脂の量、麺の固さに独特の呼称がある)を学んできたし、
東京には二郎がある。ヤサイマシマシニンニクアブラなどなど。
まさか精神的に負けることもなかろうと思ったが
予想以上にハードでブルージーな店内の雰囲気は俺の心を折るに十分だった。

「す、すいません、麺柔らかめで・・・」

明らかに場の雰囲気が変わった。
(なんね。「麺柔らかめで」て。なんかきさん。他所モンとね。すかーん。ホークス。)
店員は「・・・ヤワで?」と聞き返してくる。
「あ・・はい」
もう最悪だ。机に突っ伏して自らの情けなさに頭を抱えていると、
向こうのテーブルのヤクザっぽい恰幅のいいオッサンが近寄ってきた。
「兄ちゃん、このストラップ、なんね?」
完全アウエーで失態を演じた上に、携帯電話につけていたコンサドーレのストラップを発見されてしまった!!
(こいつ札幌やと。なんかこいつ。九州独立。ジョージア。ありみつ。)
今や長浜屋は昼前とは思えないヤバすぎる雰囲気だ。
オッサンは替え玉をバリカタで注文し、尚も俺の隣の席で睨んでいる。
死を覚悟したその瞬間、オッサンの顔、まさに破顔一笑。
焼け過ぎて硬くなった皮膚に刻まれた年輪が、ますます深くなるほどに
それほどに頬を上げ、目じりを下げ、笑っている。呆気に取られる俺。

「今夜はよか試合にしような」

オッサンはそう言うと、脊椎がどうにかなる程の強さで俺の背中を叩いた。
鼻からヤワ麺を出し、咽こむ俺。緊張が解けた涙と咽こんだせいで顔はまたベトベトだ。
オッサンは替え玉を持ってきた手鍋をそのまま店員から引ったくり、丸呑み。
口をモゴモゴしながら、やや店内を振り返りつつ、不器用なウインクをして去っていった。

物凄い音と共に一台のコンボイが駐車場から走り去る。その音、まさに山笠(聞いた事ないけど) 

ここは博多。人情の街。
敵は強大だが、負ける訳にはいかないなと、俺は思った。

※斜体部分はフィクションです。 

元祖ラーメン長浜屋


posted by アラブの旅人 |11:04 | 妄想日記 | コメント(0) | トラックバック(0)

2005年11月13日

早朝の話

福岡行きの朝は早い。早いなんてもんじゃない。超早い。
何せ日が昇ってない。ヤバすぎ。植物すら光合成できないなんてヤバすぎる。
何せ鶏も鳴いてない。街に響く音は
仕事に向かう暴走ダンプカーの走行音ぐらいのものである。
フジテレビは試験電波で、テレ東は深夜映画のクライマックスぐらいの時間。

そんな寝静まった街を、一人でかいバッグを抱えて電車で移動する。
周りは酔客や釣りに行くおっさんなどカオス極まりない。
今日は決戦だ。血で血を洗う血戦だ。
隣でいちゃつくカップルにやられつつ、テンションをあげていく。
負けるわけには行かない。

羽田に到着し、挫けそうになる自分に気がつく。
畜生、負けちゃ駄目だ。
今日は、いや今日に限らないが、ともかく今日は絶対に勝たなければならない。
勝てればいい。じゃない。マストだ。マストに行きマストだ。照瑛だ。筋肉番付だ。
絶対に勝たなければいけない試合がそこにあるのだ。

そう思っていると、不意にあの歌が口をついた。

バモ札幌 行こうぜ 我らと共に 自らの力信じ 熱い気持ち見せて戦え

止まらない。
バモ札幌 行こうぜ 我らと共に 自らの力信じ 熱い気持ち見せて戦え
段々大きくなってきた。
バモ札幌 行こうぜ 我らと共に 自らの力信じ 熱い気持ち見せて戦え
もう止められない。
バモ札幌 行こうぜ 我らと共に 自らの力信じ 熱い気持ち見せて戦え

搭乗待合室の人たちは何事かと俺を見る。
空港警備隊の屈強な男二人が走ってきて俺を取り押さえた。
だが止める訳にはいかない!潰れる喉でなおも歌い、叫ぶ。
大男に組み伏され、涙と鼻水と血反吐で汚れなおも歌う俺。
しかし喉を押さえられては声も出ない。
もう駄目かと思ったとき、誰かが歌った。

バモ札幌 行こうぜ 我らと共に 
     自らの力信じ 熱い気持ち見せて戦え

それは、徐々に人数を増やし、大きな輪となり、雄大に羽田を包んだ。
ふっと俺を抑える力が抜けた。
警備員に迷惑をかけた事を謝り、一般客に頭を下げる。
余りに感動的な光景に、俺は搭乗を許可された。
搭乗待合室の一般客と共にWe are SAPPOROコールを繰り返し、搭乗。

羽田を発つ。轟音に包まれる機内で、俺は自然と敬礼していた。
勝って帰って来ます。
差し込む朝日は涙で歪んでいた。 

※斜体部分はフィクションです。 

羽田発6:30



posted by アラブの旅人 |08:53 | 妄想日記 | コメント(0) | トラックバック(0)