2008年01月23日

融資と減増資とマスコミ

このブログの2008年最初の記事がマイナスな話題と言うのもウチらしいといえばウチらしいですが。

最初に断っておきますが、私はサッカーも経営も政治もマスコミも素人です。
ただ、マスコミ勤務やHFCに近い知人や、旅先でよく会う道職員もいます。で、仕事は現在経理です。ですが、以下は具体的資料にあたって書いているではないので、以下のエントリーには色んな間違いがあると思いますが、大まかに捉えていただきたく、枝葉末節が違うというご批判はどうかご勘弁ください。

某全国紙で報じられたコンサドーレの融資問題ですが、報じている内容は概ね事実だと思います。HFCの社長と専務が地元紙の云々は、ちょっとばかり本心が出てきて勇み足だと思います。あの一文がなければ「良いまとめ記事」と見受けられます。決して「特ダネ」ではないですが。

まぁ報じている新聞社が、プロスポーツ界(特に野球)においていかに多大なマイナス影響を与えているか、などということは議論のすり替えでしかないのでこの際脇へどけましょう(書いちゃったけど)。

道と市から融資を受けている10億円について、利子だけ払って原本をまったく返していないことが極悪のような書き方をされていますが、このこと自体はそんなに悪いことではありません。私の勤めている会社も、銀行から融資を受けていますが、もちろん返済期限があります。ただその期限に全額返しているかというとそうでもありません。

例えば10億円を年利1.1%で1年間、3/31まで借りている場合、3/31に一旦全額返して、即日10億円の融資を1年間受けることになります。つまり帳簿上は3/31に10億1,100万円を会社の口座から銀行へ支払、銀行から逆に10億円が振り込まれます。しかしながら実際には預金残高は1,100万円しか減っていません。つまり借り入れ利息だけ支払った形です。
もっとも相手が銀行ですから無担保というわけでもないですし、当座の取引上も上記のプラス・マイナスが記載されますからカタチの上では、融資終了+新規融資ということになります。
不良債権が問題化したときに、銀行がいわゆる「貸し剥し」と呼ばれる手段で多くの中小企業を倒産させたのは、このスパイラルを融資終了で終わらせ、新規融資をしない、とした方法を多用しました。バブル期に銀行が無理やり貸し付けた融資が担保価値低下で不良化したことから、貸し剥したので、銀行の責任はどうなるという意見もありました。


10億の融資を返済期限に一旦返金して利子だけ払って借り直すことは自転車操業にも見えますが、必ずしもそうとは限りません。会社を運営していくと入金と支払がありますが、このタームは必ずしも一致しません。その間に必要となるのが運転資金と呼ばれるお金です。融資額≒運転資金の場合は、自転車操業に近い状態ですが、融資額<運転資金となっているのであれば、融資の金利にもよりますが自転車操業とはいえません。
無借金経営というのは聞こえはいいですが、裏返せば銀行からお金を借りる(担保を含めた)信用がウチにはありません、という可能性もあります。なので、普通の企業の場合は、ある程度の融資を受けつつ会社を運営しています。

今回のケースで問題となるのは、HFCに返済金額をそろえることができないということです。現状では融資額>運転資金という状態になっています。HFCと北海道もしくは札幌市との契約がどうなっていたかはよくわかりません。ただ2003年から道の融資の期間は5年となっていたようですから、少なくとも2004年以降、利払いだけだったと非難される筋合いはないと思われます。融資契約に返済方法として、「毎年1億ずつ返済」となっていれば別ですが、大新聞の記事を読む限りはそういう条項もないようです。

今回の記事の中で、融資について問題となるのは「期限が来たのに返せない」「無担保融資」「優遇された低金利」ぐらいかと思います。「返せない」というのはHFCの経営陣が負うべき責任(=貸主への説明義務、元が税金だけに、究極的には道民市民への説明)ですが、「無担保」と「低金利」は融資契約をした双方に責任(それもどちらかといえば貸主の責任が重い=借主が条件をよくしようとするのは自明の理)があるわけで、一方的にHFCが悪であるという記事の論調は書き手の記者の理解不足(取材不足)、および新聞社としての見識を疑わざるを得ません。

また、こういう記事を書く場合は、当事者であるHFC社長にコメントを求めるのが通常ですが、「コンサドーレは道民の財産で、つぶしてしまえば大きなマイナス。チーム存続がまず第一」という今回の記事に対してか定かではないコメントが書かれています。現社長は新聞社出身ですし、現役記者だったころはかなりのやり手だったそうなので、あるいは意図的にコメントを取るのを避けたのかという疑いも抱いています。

正直なところ、HFCという会社はかつてからマスコミ対策というか広報というものに対する展開が下手で、結果的にマイナスになっている部分があると思います。近年、ここのブログなど場合によっては他のサッカー運営母体企業より進んでいる部分もありますが、これとて外部から持ち込まれたものであり、HFCから出てきた話ではありません。
金がないのは判りますが、広報というものは金がなくても出来ることは沢山あります。プレスリリースなんてタダで出来る宣伝という見方も出来ます。そういうものはどんどん活用していくことが、いざという時に大きな資産になる可能性があることにもっと注目して欲しいと思います。せっかくマスコミ出身のトップがいるのですから。

posted by tristar |12:58 | コンサドーレ周辺 | コメント(2) | トラックバック(0)

スポンサーリンク

トラックバックURL
このエントリーのトラックバックURL:
http://www.consadole.net/tristar/tb_ping/110
この記事に対するコメント一覧
Re:融資と減増資とマスコミ

はじめまして。
とても分かりやすい解説ありがとうございます。
関心がありましたので助かりました。
ファイターズやレラカムイも応援、観戦してる身には
コンサドーレの広報は物足りません。
昨年スタートダッシュに成功したにもかかわらず動員増となりませんでした。
全国紙のとった手段について私は気にしませんでした。
弱味を小さくすることが先に思えて。
税金とソノ利息は無駄なく使って欲しいと常々思ってます。
公共財だとサポーター以外にも認めてもらえるように
HFCのやる気の「見える化」希望です。まずは。

posted by ぷらせぼいそふらぼん| 2008-01-24 01:49

Re:融資と減増資とマスコミ

>ぷらせぼいそふらぼんさん
読みにくいエントリを読んでいただきありがとうございます。
今回の件は、ある程度は大新聞がHFCのことをよく判ってない、いや双方のコミュニケーション不足という感があります。一方的にネガティブキャンペーンを張られたカタチで、記事からはHFC側の関係者の心情はまったく感じられません。
道内マスコミと違って全国紙は数年毎にに担当記者が異動してしまうので難しい面もあるのですが、マスコミと上手く付き合えば、プラスになる部分は多いと思います。
要は「しっかりしてください、HFC」が率直な感想です。

posted by tristar| 2008-01-24 12:44

コメントする