2008年04月11日
1話
「ピィィィィ!」 タイミングを見て駆け上がったオレは、手を挙げて線審へアピールすると同時に旗を確認する。 よし、上がってる。マイボだ。 時計を確認すると後半15分を経過していた。・・・のこり半分。 前後半1点づつ取られて2点を追いかけなければならないウチは、ここにきてほぼ無意味なロングボールを散発的に相手陣内へ放り込むものの、楽々と相手ディフェンダーに攻撃の芽を摘まれていく。 「きちー・・・」 腰に手を当てながらケンが歩いてくる。 そりゃそうだ。北海道とはいえ、7月の突き刺さるような日差しと勘弁願いたい気温の中、俺ら3人のディフェンスは繰り返し右へ左へ走らされているのだ。 攻撃がまともに機能していないため、すぐに相手ボールになってしまう。そしてすぐにまた右へ左へ・・・。 「岸中の10番やっぱやべえよ・・・。」 確かに。 ウチの隣の中学である札幌市立岸平中学校のサッカー部には、日本全国各地区のトレセンから選抜されたナショナルトレセンまでいったヤツがいる。簡単に言うと世代の日本代表クラスだ。対してウチ、こと札幌市立丘豊中学校はせいぜい小学校時代の地区選抜が一人くらい。ちなみにそいつのあだ名は「センバツ」。このあだ名のミクロな所をとってもレベルの差は歴然だ。事実、今日の2点は共に相手の背番号10番にエグいドリブルでやられたものだ。 「相手も疲れてるんだし、こっからだこっから。」 ボールを上手く動かしている岸中は、相手の攻撃に振られまくって右往左往しているオレらと違って、どうみても体力的に余裕がありそうだった。ちらりと横を見るとスタミナには自信を持っているコウタも顎が上がってきている。だが、そうでも言わないと心が折れそうになる。 「オゥンハァァァ・・・」 返事と萎えまくりのため息を同時に吐きながらケンが自分のポジションに戻る。 だいたいトレセンレベルの選手ならよほどの強豪校でない限り、クラブチームや地域のプロチームの下部組織に所属していることが多い。特にサッカーが強いとはいえない地区の、しかも公立中学にナショナルトレセンクラスがいること自体がイレギュラーだ。しかも同学年。 そいつに引っ張られてか、ここ数年岸中はレベルが高く全国にも行った。隣の中学校である俺らは、練習試合や公式戦で対戦する度にチンチンにされてきた。だから、先輩達の代からオレ達の代になってもずっと「転校しやがれ」という捨て台詞が受け継がれている。 ボールをセットして出しどころを捜す。 だれも受ける気ねえ・・・。 目の前のボランチなんかケツ向けてやがる。一番近いお前がそれでどうする。フォワードの後輩もロングフィードを待つでもなく、ただ突っ立っているだけだ。 ちくしょう。絶対にこのまま終わるのは嫌だ。何せ中学生最後の大会なのに、2回戦で岸中と当たるのはバッドラックとしか言いようがないが、隣の中学校にスイスイ地区を勝ち上がられるのは面白いわけがないし、それにオレは今までよりもさらに練習してきた自負もあった。 考えろ。どうすればいい・・・。 http://novel.blogmura.com/
posted by sweeper |11:25 | ブログ小説 | コメント(1) | トラックバック(0)
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posted by magazinn55 | 2008-04-12 20:49
