2006年06月30日
繋がり行くもの
24日の朝、9時40分頃に家を出て、東室蘭駅へ向かう。 薄く曇っていた空が徐々に晴れ上がり青空が広がって行く様を見て、何故か思い出したのは、初めて試合に行った日の事。 そう言えば、あの日も凄く良い天気だった。 あまりの天気の良さに、本当は高速バスを使うつもりだったのに思わず自走で札幌まで行ってしまったぐらいだった。 初参戦は1999年5月2日。 厚別開幕となったヴァンフォーレ甲府戦。 結果は6-0の圧勝。 ただ単に久し振りにJRで札幌まで行くから、あの日の空とダブって見えただけかもしれない。 それでも、こんな日にその事を思い出すのは、何か不思議な符号の様にも思えるもんで。 まぁ流石に6-0は無理だろうけれど。 でも、3点か……4点とか取ってくれたら嬉しいよな。 そんな事を取り留めも無く思う。 まさか約6時間後に、現実になるとは思いもしなかった。 ゴール裏の声が勢いを失う事は無く。 バックスタンドの手拍子も鳴り止む事は無かった。 応える様に選手達が走り続け。 その背を押す様に一層声が大きく響く。 互いの思いを互いに受け止め。 2つの螺旋が絡み合って高みを目指す様に。 託す者と受け取る者、その2つの手が違える事無く繋がるのなら。 必ずそこには生まれる力がある。 翌日25日。 初めて、宮の沢でサテライトの試合を観た。 去年観に行った試合は6月5日の、入江でのFC東京戦。 その時と良く似た、何処か穏やかな雰囲気の試合だった。 周りを見渡せば、親子連れや年齢が高めの方が目に入る。 それに、圧倒的に私服の人が多い。 トップの試合とは違うんだなぁ、とちょっと驚いた。 試合中の雰囲気もトップに比べればのんびりしていて。 ミスに対して上がる声も、決して非難めいた物ではなく。 しょうがないな、と頭を抱える事さえも楽しんでいる様な、そんな穏やかさがあった。 トップの試合に出る事を目指して頑張る者達と、それを応援する者達と。 そこにも確かに繋がり合う想いを感じて。 後半に上里くんがFKを蹴る。 一瞬、入ったと勘違いしてしまう程、本調子ではない筈のその弾道には十分な威力があった。 その軌跡に、三原さんの最後のFKを思い出した。 この試合が、上里くんの復帰戦だった・と知ったのは、少し経ってから。 三原さんの最後の試合と、上里くんの最初の試合。 想いを残して行った者と、想いを受け止めたであろう者。 この2つの時間が繋がる気がした。 今までこういう事は無かった気がする。 個人的に親しかった選手同士が想いを託す事はあったかもしれないけれど。 誰かが立ち去り際に技術を残し、誰かがそれを引き継ぐと言う事は。 10年の時間の後に生まれた、初めての『継承』。 過去を未来へと繋ぐ事が出来て初めて現在は意義を持つ。 24日の試合が終わってから。 ゴール裏に挨拶をした選手達が立ち去ろうとした時。 沸き起ったコールに、池内くんが駆け戻って来て。 そして、ゴール裏からタオルマフラーを受け取っていた。 受け取ったばかりのそれを高々と掲げて見せる。 そこにも確かに感じた、繋がる想い。 どれだけ思っていても、勝利を望んでいても。 結局、私達はあのピッチに立つ事は出来ない。 だから、想いを託す。 あのピッチに立つ11人に。 私達の『代表』に。 躍進と歓喜の6月が終わり。 新しい月が始まる。 7月はどんな月になるのだろう。 僅かばかりの不安と、それをかき消す圧倒的な期待。 この喜びを次の月へと繋いで行こう。 6月で時間を途絶えさせない様に。