2012年10月13日
浦和戦勝利から続く「もやもや」感
浦和戦の選手語録から。 「相手についていって、うまく守れたし、思い切りやれた。優勝争い中のレッズだったし、うれしかった」(前) http://www.hokkaido-np.co.jp/news/consadole/410078.html (【道スポ】J1初勝利経験のDF前 残り6試合も熱く!)
●宮澤裕樹選手 「チーム全体で、高い守備意識を持ってやれていた。DFラインを細かくあげようとしたけど、スタジアムの歓声で声が通らないのと、相手のフォーメーションを考えてもなかなか上げられなかった。でも、自陣で体を張って守れたのはよかった」 高い守備意識 相手のフォーメーションを考え Q:悔しい思いをした後の勝利は? 「素直に嬉しい。アウェイで初めて勝てたし、見に来てくれた人に勝利を見せられてよかった。アウェイで1勝することもそうだし、浦和は竜二さん(河合)がいたところだったので、勝たせようという声が出ていた」 ●岩沼俊介選手 「お金を持っているとか持っていないとか関係なく、サッカーはどっちが勝つか分からないからおもしろい。ここから残り試合、来年のため、自分のためにやっていきたい」 お金を持っているとか持っていないとか関係なく、サッカーはどっちが勝つか分からないからおもしろい Q:石崎監督の退任が決まった後の試合だったが? 「石さんは自分を初めて使ってくれた監督だし、恩返ししたいという気持ちがある。成長を見せたいし、残り試合も今日くらい気持ちを入れて戦いたい」 ●古田寛幸選手 「この前で降格が決まったので、残り試合を悔いなく戦いたいし、まずは一戦一戦全力で戦うという気持ちで臨んだ。J1で戦える喜びを感じながら、成長するために戦いたい。いろんな経験ができているので、それを無駄にしないというモチベーションで残り試合を戦いたい」 Q:5バックで守ることが多かったが? 「相手はウィングバックがすごい高い位置にくるので、5バックになるのはしょうがないと割り切っていた。シャドーの僕や岡本さんが相手の3バックのサイドにプレッシャーをかける形ができたし、うまくみんなで守れた」 5バックになるのはしょうがないと割り切って Q:先制点を振り返ると? 「キャプテンの竜二さんからいいボールが来たし、たまたま前にこぼれて、利き足じゃない右足だったけど、思い切ってほとんどゴールを見ずに振り切った。すごいところに飛んだ(笑)。思い切りのよさが点につながってよかった」 キャプテンの竜二さんからいいボールが来た Q:2点目は落ち着いていたが? 「今季けっこうゴール前で焦って外す場面があったので、それを課題として練習後にスタッフの方に手伝ってもらって、GKと一対一をトレーニングしていた。いろんな人の支えがあって取れた。自分が得点できたことよりも、チームとして勝点3を取れたことがうれしい」 Q:今日勝てた要因は? 「降格が決まったチームが残り試合で勝ち続けるというのがよくある。自分のなかでも、みんなのなかでも意識はしていなかったけど、何かいい意味で「なるようになる」という気持ちで力を抜いて戦えていた。石さんがいつも言っているけど、頭は冷静に心は情熱的にというのができたのが今日勝てた要因だと思う」 頭は冷静に心は情熱的に http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00144949.html (【J1:第28節 浦和 vs 札幌】試合終了後の各選手コメント) http://www.jsgoal.jp/news/jsgoal/00144953.html (J's GOALニュース 吹っ切れた札幌はアウェイでうれしい初勝利)
選手コメントの中に、いくつかのキーワードがある。 今後のコンサ、残る選手は来季のコンサに繋がるキーワードのような気もするし、かなり以前からのキーワードでもある気がしている。 原点回帰のような浦和戦を終えて、なぜか「もやもや」感が増幅してきている。 「もやもや」のいくつかは、キーワードの中にある。 特に「成長」というキーワード。 J1で勝利をつかみながらの「成長」でないと、本当の意味での「成長」とは言えない(J1で通用する選手に、という強化計画上)というもやもやだ。 上記の選手コメントは、試行錯誤(というかほとんど挫折)の中たどり着いた境地なのだろう。 ではなぜもっと早く戦術的にこういう戦い方に意思決定できなかったのか。チーム全体で組織的に意識改革ができなかったのだろうか。 出来ない事を意地を張ってやり続けたのは「成長」のためだったのか。 結果が出ないサッカーで、サポーターに「成長」を認めろというのは無理がある。 堅守速攻カウンター志向派は、バックパスを嫌う。 ポゼッション・パスワークで崩すバルサ志向派は、タテポンを嫌う。 もちろん、相手、状況に応じて両方必要ではある。 戦術の好き嫌いの溝もあるが、それを起点に「活躍している選手、していない選手」の評価すら変わってきたりもする。 監督に与えられたミッションを黙々こなしていても、最終的に得点に繋がらなければ観客は湧かない。得点無くして勝ち点無し。 だったらどうしたらいいのか、というのが全く見えてこなかった。 石さんはパスミスを繰り返してもパスで崩すことにこだわった。大敗を繰り返してもやり続けたのは確信犯だと思う。フロントに思い知らせる部分もあっただろうし、フロントもそれを是とした。だが観客は正直だ。勝利への渇望を失ったサッカーは、サポーターからJ1残留へのモチベーションを奪っていった。残留とは勝ち点計算に他ならない。残念ながら勝ち点は伸びず片手で数えられるほど。一向に増える事はなかった。 「J1で通用する選手を育てる」という強化五段階計画に沿ったものなので、石さんは正しかったのかもしれない。 だが、石さんの4年が「選手育成」に繋がったかどうかという評価では意見が分かれると思う。出来ないパスワークにこだわりすぎて肝心の「勝利への執着心」が感じられなくなったからだ。勝利への執着心をチームから感じられなくなった。 戦術が変わらない事を評価する人もいる一方、やれることをやりきっていなかったと評価する人も少なからずいる。 もう一つ。 第2の砂川、第2の芳賀、第2の河合を育成できたのかということ。 リーダーシップのある選手、背中で引っ張れる選手を育成できたのか。 技術以上に、そういう選手が若手から出て来ないと…。 宮澤、岡本、櫛引、奈良…。金の卵はいるのだけれど。 浦和戦の勝利は、最終的に石さんが目指すサッカーだったのだろうか。「もやもや」はそこにもある。 「石さん退任」による一過性のモチベーションだけなら長続きはしないだろう。 昔から思い入れのある浦和戦、しかもアウェー。この勝利によってJ1での石崎サッカーの印象はかなり良くなったのは事実。サポーターの記憶、語り草とはそういうものだ。 埼スタだから、熱狂的な客が多いからというモチベーションならまだプロ選手としてなんとかなるかもしれない。 前線の選手がシュートまでいけなかった事、ボランチとトップ下でボールが収まらなかった事、サイドから展開した後にフィニッシュに持って行けなかった事。J1で負け続けた要因は沢山ある。 1トップひとつ取ってみても、期待通りにはハマらなかった。 トップ下もシャドーも思うようにシュートできなかった。後ろから来るボールがあまりにも少なく、前線の選手が不完全燃焼に終っていた。 例えば内村は前を向いた時に、潜在能力を発揮する。ところが1トップだと相手ゴールに背中を向ける時間帯が多くなり、結果シュートを打てなくなる。J2で輝きを放った内村がJ1では鳴かず飛ばずだったのは、非常に悔しいし残念である。 ベンチを含めた戦力を総合的に考えての戦術だったのだろうか。J2の時からシュートが極端に少なかったが、それが今後継続する札幌スタイルで良いのだろうか。ゴールこそがスタジアムの華、百歩譲ってシュートがスタジアムの華。客が喜ぶサッカーをこの4年でどこまで構築できたのかということ。勝ち点の少なさも残念だが、ここ2年のシュートの少なさは嘆かわしかった。 監督もサポも「パスミス」を数えるより、むしろ「シュート数」を集計してもらいたい。シュートの少なさから分析したら、戦術は完全に失敗ではないのか。それは選手のスキル以前の問題だと思う。コンサの長所をチーム戦術として束ね切れなかったのではないだろうか。 前俊はボールをキープできるが、周りと連携して得点を量産するまでに至らなかった。ハモンも同じである。 組織全体のボール回し、パスワークのリズムとアタッカー陣のリズムが合わなかった。これは戦術の大きな落とし穴であった。 違う監督に交代していたら「出来ない事」をここまで継続しただろうか。すぐに堅守速攻に舵を切ったのではないだろうか。 J1残留しないとJ1定着の足掛かりはつかめない。J1残留への執着がフロントにあっただろうか。 成長のための戦術というのは「パスワーク」で繋ぐことだけに固執することなのだろうか。若手育成が「パスワーク」だけに特化されすぎていなかったか。そして、繋ぐ意識とパスへの執着が、それ以外の選手の特長までも奪っていったように思えてならない。 コンサドーレの伝統は何か。たったの17年、されど17年。今までスタジアムを熱くさせてきた「コンサらしさ」が見られなかったのはなぜなのか。 相手のフォーメーションや実力差を考慮して、できるだけ90分「互角に戦っているように見せる」事も重要だったのではないか。 「もやもや」の理由は、選手が一定の成長を見せている一方、それがいくつかの点になり線になり、コンサのスタイル(図形)として見えてこない事にある。 勝利という結果を求めなければ、前述のような選手コメントは出てこない。結果に裏打ちされたものでないと、選手自身もサポーターも納得しないのだ。 「負けて当たり前」言った瞬間、コンサドーレの誇りはどこかに吹っ飛んでしまう。 いまサポーターが出来ることは、選手の「成長」から次の一手を見出すことにある。 その前提はJ1であろうがJ2であろうが、勝利への飽くなき執念なのである。 観客増を目指すのに王道は無い。「勝てるサッカー」を追究するしかないのである。 …なんて事を書いたら少しは「もやもや」は晴れてきた。
posted by odo |21:02 | データファイル2012 | コメント(1) | トラックバック(0)