2006年08月28日

ダラスの熱い12日間⑨

コンサドーレ札幌U18 ダラススーパーカップ遠征紀行

4月11日(火) 第5日目

 今日は我々スーパーグループの試合がない日である。初めてのオフだ。午前中に軽い練習をして、午後は観光というスケジュールになった。観光といってもダラスのJ.F.ケネディ博物館しかないのであるが。まずはまた2台のバンに分乗、ジョージさんとミゲールさんの運転で出発だ。今日はまた練習会場が違うらしく、地元のクラブチームが使うサッカー場を使わせて頂いた。この練習場は左側にも右側にも道路が行き交う、比較的町の中心部に位置していたが、やはりフェンスがなかった。まったく、普段危険なことは起きないのだろうか。そこはフルピッチのグランドが5面はあったが、芝は誉められたものではなかった。一番コンディションの良いピッチを選んで練習が始まった。

 炎天下のボール拾いは忙しく、きつい。ボール拾い係りは練習中には主立った使命がない団長とレオさんしかいない。特にゴールキーパーの練習はプレーヤーがゴールに向かってバンバン打ち、キーパーはそれを跳ね返すので必ずボールは飛び出す。二人で必死に追いかけるがどうしてもボールがコロコロと道路に飛び出してしまう。車が走る中まさに命がけである。2回ぐらい急停車をくらった。基礎練習から始まった練習を終え、最後のメニューである10分の紅白試合が始まった。これが終われば昼食。今回初の日本食が食べられる。そろそろ全員日本食に飢えていたのだ。

 突然だった。大きな悲鳴がピッチの中央から聞こえた。一人の選手が倒れ込んでいる。特段ひどくぶつかりあったわけではない。おそらく交わそうとして足でもひねったのか、大声で「痛い、痛い」と叫んだ。どうやらただ事ではなさそうだ。すぐにMトレーナーが氷で膝のあたりをぐるぐる巻きに湿布する。よほど痛いのか、本人は「すみません。すみません。」と言いながら顔をゆがめて傷みをこらえている。靭帯を切ったのだろうか。いずれにせよ病院に連れて行かねばならず、本部に連絡、病院の手配をし、患部を氷で冷やし、それでもまず昼食を取るレストランに向かった。けがをした選手は仲間の肩で支えてもらいながら全員レストランへ向かい、皆の表情も暗いままおにぎり、てんぷら、みそ汁等をたっぷり食べた。本人も少し落ち着いてきたらしく、にこやかになってきた。昼食後レオさんが本部のスタッフに出迎えをお願いし、病院へ直行した。

 我々は複雑な気持ちになりながら、ダラス市内のJ.F.ケネディ博物館へと向かった。今日もとても熱い日で、近くの駐車場から狙撃したとされる古い倉庫のようなビルまで歩くだけも長く感じた。入り口で日本語のイヤホンを貰い、各自エレベーターで6階の狙撃現場へ上がる。そこから日本語案内の音声を聞きながらケネディ氏の生い立ち、暗殺、犯人逮捕、謎の黒幕の状況証拠まで、きめ細かく約30分間見学した。自分はこの出来事をまさに日本で経験しているだけに、歴史の重みをしかと受け止められるが、選手たちは果たしてどう感じたのであろうか。当然彼らはまだ生まれていないわけで、良く理解できなかったかもしれない。

 選手たちは我々歴史体験者よりもサッサと早く出て、土産物を買い込んでいた。外に出ると炎天下の中ケネディ氏がちょうど狙撃された場所へ案内される。現在もちゃんとした道路として使われているが、狙撃されたとする場所にポイントマークが描かれていた。そこをバックに記念写真を撮る観光客で道路はごった返し、しばしば車の渋滞が起こる。単なる街の風景だが、ここから歴史が大きく変動したと思うと、来た意味は多いにあったのかもしれない。

 ホテルに戻って、選手たちは各自ホストファミリーに分かれ帰っていくが、けがをした選手の状況がまだ一向に判らない。病院に行ったままだ。当然レオさんも戻っていなかった。彼らが戻ってくるまで夕食を取らず待つことにした。20時半ごろレオさんがようやく戻ってきた。靭帯の損傷らしいが詳しくは帰国しないとわからないらしい。本人は松葉杖をついてホストファミリーの元へ帰ったそうだ。ホストファミリーもびっくりしていたが、松葉杖を買ってくれ、その後もずっと病院に付き添ってくれたと聞いた。診察には6時間程待たされたが、結局たったの3分で診察が終わったとか。しかも600ドルもかかったそうで、いかにアメリカの医療費は高いか目の辺りにしてしまった。幸い患部の腫れは治まり、どうやら大きな症状ではなさそうだ。まずまずホッとした。

 今夜も遅い夕食となった。車で近くを走っていると日本語の「神戸ステーキ」という看板が気になった。早速レストランに入ってみると日本人はいない。日本人的な顔をしていても全然日本語を話せない。どうやら韓国人らしい。英語のみが通じる日本食レストランだった。しかしFコーチはすごい。良く食べる。以後彼は我々の残りを引き受けてくれるようになった。

posted by kadowaki |09:13 |

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