2007年11月21日
減増資の説明の続き
私は会計の専門家でもなんでもないので、1つ前のエントリーを書いた際は、かなり、おっかなびっくりでありました。コメントお知らせメールが届くたび「あー、間違いを指摘されてるんじゃなかろうか…」と、不安になっておりましたが、コメント欄で補足説明までいただいて、ありがたかったです。 # コメントいただいたみなさま、ありがとうございました。 せっかくなので、1つ前のエントリーのコメントで触れていただいた昨日(11月20日(火))の日本経済新聞(北海道経済面)の記事についても、またまた話を単純化させて説明してみます。《コンサドーレ 債権株式化の要請検討 道・札幌市に、計2-3億円》という見出しのついた記事です。 ※今回も、話をわかりやすくするために、あえて正確な説明を省略したところがあります。ご容赦ください(また、詳しい方には、コメント等で補足していただければ幸いです)。 ■債権株式化(デット・エクイティ・スワップ)って? (日経記事から引用) 道と市はHFC支援で、それぞれ約五億円を貸し付けており、今年度末に返済期限を迎える。そのうち、それぞれ約一億-一億五千万円の債権を株式に交換する「デット・エクイティ・スワップ(DES)」の要請を検討する。 (引用ここまで) 「要請」の中身を平たく言うと「借りているお金なんですけど、いつになっても返せそうにないので、貸していただいたのではなく、出資していただいたことにしてもらえませんかねえ?」ということです。 これはずいぶん厚かましい話で、貸したほうからすれば「はぁ?返してもらう日が遅れるぐらいなら仕方がないけれど、出資ってことは、こちらには返ってこないってことですよね?そりゃいくらなんでもないでしょ」と反論したくなる。そう言われたら「おっしゃる通りです…でも、お願いします」としか返しようがありません。 デット・エクイティ・スワップ(DES)が認められた場合、会計上(帳簿上)は、借入金の残高を減らして、そのときの減少額と同額だけ、資本金を増やす措置がとられます。お金を貸していた側にとっては、融資額が出資額に替わるので、貸金(債権)が資本金(株式)と交換されたことになります。 HFCの側からみた場合は、帳簿上の資本金だけが増えて、実際に使えるお金は不変、ということになります。すなわち、このときの資本金の増加分はもともと借入金であって、その借入金はすでに使ってしまって手元にない(だから返せない)のだから、実際に使えるお金が増えることにはなりません。 ■そんなことできるの? もちろんできます。よくあること、とまでは言いませんが、ものすごく珍しいことでもなく、資金繰りに窮した企業でこうした手段が使われることは少なくありません。 ■「株式化」の部分を、もう少し詳しく。 (日経記事から引用-上の引用箇所の続き) 道と市はすでに、それぞれHFCの株式約六%を保有、第四位の大株主となっている。DESに応じても筆頭株主にならないよう出資額を調整するとみられる。 (引用ここまで) 上で説明したように、DES後も実際のお金が増えることはありませんが、帳簿上は資本金が増えるので、新たな株式が発行されることになります。仮に1000万円の借入が資本金に振り替えられる(=1000万円のDESが行われる)として、1株あたりの価格が5万円だとすれば、DESが行われることによって、(1000万円÷5万円=)200株の株式が新たに発行されることになります。 もともとの大株主である道や市からの借入を資本金に振り替える場合、借入の全額を資本金にしてしまうと、道や市の保有する株式数が大きくなりすぎて、サポーターズ持ち株会の保有株式数を上回ってしまう可能性がある、だからDESの金額を調整する、というのが、日経の記事の言わんとするところだと思います。 ■いいことならば、さっさとやればいいのに。 DESが実施された場合、何が起きるのか?を考えると、実現可能性と、関係する問題点がみえてきます。 HFCにとっては、使えるお金の額は変わらないものの、借入金が減るのですから、大歓迎です。 道や市にとっては、いずれ返ってくると思っていたお金が返ってこなくなるのですから、歓迎できることではありません。道や市のお金は、最近はやりの言葉を使えば「道民、市民の血税」ですから、その一部をコンサドーレに渡してしまうことには、やはり(私にとっては残念ながら、ですが)、反対する人も出てくるでしょう。それほど大きなムーブメントにならないうちにこっそり決めてもらえちゃえばいいんですが(<そんなダメだって^^;)、そうもいかんでしょう。 他の既存株主にとっては、歓迎できる部分と、そうでない部分とがあります。 まず、この措置によってHFCの借入金が減ることは、HFCにとってはよいことですから、その点では、既存株主にとっても、よいことです。 一方で、全体の株式数が増えることは、既存株主の持つ株式の価値を低下させてしまいます。今は(経済的には)何の価値もないHFCの株式ですが、今後、大きな利益を生み出して配当を生んだり、株式公開して市場で売買されるようになったりした場合(そんなことは現状では考えにくいですが)、株式数が多ければ多いほど、一株あたりの利益(配当)は小さくなってしまいます。 通常の増資であれば、株式数が増えて既存株式の価値の低下が生じても、HFCが実際に使えるお金が増えるのだからと思えば、既存株主も納得せざるを得ません。しかし、今回のケースでは、HFCの財布が潤沢になることはまったくないので、もし借入金の返済期限が延ばせるのであれば(=その場合は借入金がHFCの財政に与える影響は不変なので)、借入金を減らすための増資(=株式数の増加)は、既存株主にとっては、損をすることはあっても得をすることはまったくない施策になってしまいます。 結局のところ、「J1昇格のため」が、これらすべての免罪符になるのでしょうか(<それがよいかどうかはおいといて、そうせざるを得ないのが現状なのだと思います~ここは私の意見です)。 ■経営責任? (さらに日経記事から引用) ただ経営責任を明確にしないままでの減増資案には、既存株主の反発も予想される。 (引用ここまで) これは、1つ前のエントリーでは、あえて触れなかった点です。 ここまで説明してきたように、減資や増資によって、既存株主の持つ株式の価値は低下します。株主に泣いてもらうのだから、経営者サイドも血を流します、というのは、世間一般では、よくある話です。 この点については、私は、自分の意見は控えます。現在の経営陣やクラブのスタッフのみなさんには、大変にお世話になっており、また、それをご存知の方もいらっしゃるでしょうから、誤解を招くことを避けるため、意見表明は一切しません。
posted by issey11 |07:48 |