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2006年11月20日

【小説】居酒屋こんさどおれ 第十一話

この物語はフィクションであり、実在の人物、団体とは関係ありません。

居酒屋こんさどおれ
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第十一話 お客さんを増やす方法

「さとみちゃん、CVSお疲れ様でした。これはサービスね」

ゲンさんはそういうと、さとみちゃん(第三話参照)の前に焼き鳥2本を置いた。
さとみちゃんは昨日の試合で今年のCVS仕事が終わったのだ。微妙にゲンさんはさとみちゃんに優しい。

「今年一年CVSやってみてどうだった?」とゲンさんはさとみちゃんに聞く。

「うん、楽しかったよ。でもやっぱりねえ、お客さん減ってるって実感するよね。CVSのメンバーもなかなか集まらなくなってきたから、決して仕事がラクになったとかそういうことはないんだけどね」

さとみちゃんはいつもだいたい冷静だ。

「なんとかお客さん増やす方法考えないといけないよね」

そういうさとみちゃんの言葉にゲンさんも腕組みをして考える。

「そうだなぁ、招待券とか、格安チケットとか、そういうことは一通りやったしなぁ。あと何をしたらいいかな。一番簡単なのは今のサポが一人ずつ知人を誘ってスタジアムにいけばすぐに倍増。その人がさらに知人を誘えばすぐにその倍。札幌ドームもあっという間に4万人だ!」

「それはただのねずみ算でしょ」

相変わらず冷静なさとみちゃん。

めげずにゲンさんが言う。

「じゃあ、やっぱりタレントとかゲストに読んで集客するのは?」

「安易だなぁ。だいたいそういうのって、一過性で終わると思うんだよね・・・でもそのタレントがコンサを好きになってくれれば意味はあるかもね。例えばインタビューなんかでコンサドーレが好きだとか言ってくれれば大きいよね。ま、そもそも集客力のあるタレントがウチの試合に来てくれるかな。ゲンさんは誰が来たらいいと思ってるの」

さとみちゃんに聞き返されてゲンさんは答えに詰まる。単に思いつきでタレントって言っただけだったのだ。

「えーと・・・うーん・・・やっぱり道産子がいいんじゃないかな。例えば・・・・北島三郎とか」

「ゲンさんまだ四十代でしょ。ここで北島三郎が出てくるかねぇ、普通」

「古すぎるか。じゃあ、松山千春」

「却下」

「なんで?」

「私が嫌いだから」

「そりゃないっしょ。えーと、あ、そうだ。札幌に女の子4人のバンドあるでしょ。なんて言ったかな・・・」

「ZONEでしょ。でも、もうとっくに解散してるよ」

「あっそうなの。じゃあ・・・」

次々とさとみちゃんにだめ出しをくらってゲンさんは苦笑い。
店には他にお客さんはいない。
さとみちゃんは広くもないこの店をぐるっと見回してから、半分笑って、そして半分真剣な表情で言った。

「あのね、ゲンさん。コンサドーレの集客よりもこの店の集客考えた方がいいんじゃない?なんか最近私が来るときいっつもお客さん私一人なんだけど。まぁ、ゲンさんと二人きりで話するのも楽しいけど、このままじゃやばいんじゃないの。私がなんとか考えてあげようか」

現実には全然笑えない、深刻な話なのだが、ゲンさんの表情はニヤけていた。

posted by たじ |10:15 | 小説 | コメント(0) |

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