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2010年10月20日

浅田真央の挑戦

いよいよ今週末からフィギュアスケートのグランプリシリーズが開幕。今年の初戦は例年と異なりNHK杯からのスタートです。

このNHK杯、現世界チャンピオンの浅田真央が出場します。本来ならばこの大会の優勝候補筆頭なはずなのですが、どうも今回に関しては必ずしもそうとは言えないようです。先日のジャパンオープンでの真央はジャンプが失敗に次ぐ失敗、演技全体も伸びを欠き、自己ワーストのスコアを記録してしまいました。それから3週間ですから、その時の状況から急激に状況が良くなっていることを期待するのは少々難しいかもしれません。真央のグランプリシリーズ最低成績は昨シーズンのロシア杯での5位でしたが、今度のNHK杯もそのくらいの苦戦は覚悟が必要だと思います。

いったい彼女に何が起きたのでしょうか?

これは浅田真央の新しい挑戦のスタートなのです。目標とするゴールはソチ五輪の金メダル。彼女にとって唯一手にしてない勲章は五輪の金メダルだけです。バンクーバー五輪終了時点からソチへの思いを語っていた浅田真央。彼女は自分に足りないもの、克服すべき課題を十分に分かっています。そして、その課題を克服するためには辛抱強く時間をかけて取り組まなければならないことも。その課題とは

ジャンプを一から作り直すこと

真央は2年くらい前からジャンプに苦しんできました。15歳ころのような軽やかなジャンプが跳べなくなっています。それは体型の変化等による感覚のズレというのもありますし、ルールの度重なる変更に対応しきれていないということもあります。少しジャンプの具体的な説明をします。

彼女は以前はルッツ(Lz)を跳んでいましたが、昨シーズンはルッツを封印していました。それはルール改正によりジャンプの踏切エッジ判定が厳格化したことによります。真央のルッツは踏み切る時エッジがインサイドになる癖があります。正しくはアウトサイドエッジでの踏切です。この癖を矯正するのに非常に苦労して、結局昨シーズンはプログラムから外すことになりました。また、彼女のコンビネーションジャンプのセカンドジャンプはループ(Lo)が得意だったのですが、回転不足に対するダウングレード判定が厳しくなり、3-3のコンビネーションジャンプのセカンドがほとんどダウングレードされてしまうため、結局昨シーズンは3フリップ-3ループ(3F-3Lo)を諦め、3F-2Loに変更しました。このことにより、ジャンプの得点源をトリプルアクセル(3A)に頼らざるを得なくなってしまいました。コンビネーションジャンプも3A-2Tをショートプログラムにも取り入れ、合計3度の3Aという快挙も実際には苦肉の策とも言えるものでした。ただそれは、オリンピックシーズンで自分の持てる最高のパフォーマンスを発揮するためには必要なことで、そこから逃げずに挑戦したということは本当に立派だったと思います。

昨シーズンが終わった時点で、真央は現状の問題点を克服し、より高いレベルの演技ができるように取り組む決心をしました。それが「ジャンプを一から作り直すこと」です。ルッツとフリップというジャンプは表裏のような関係で、これを両方正確に跳び分けられる選手はそう多くはいません。そしてルッツが苦手の真央がルッツの矯正をすると今度はフリップの調子が崩れてしまうというような関係にあり、現にジャパンオープンではフリップもかなり崩れていました。これを克服するには相当な時間を要すると思います。又、今季ジャパンオープンではトリプルサルコウ(3S)にも挑戦していました。このサルコウも以前から真央の苦手ジャンプでしたが、この克服にも取り組んでいるようです。

現状はこれらのジャンプの練習に多くの時間が取られ、おそらくは3Aもそれほど練習できていないのではないかと思います。したがって現在実戦で自信を持って跳べるトリプルジャンプは3Tと3Loの二つだけです。あとは2A。そして、ジャンプの練習に時間が取られるゆえ今季のプログラム全体についてもまだまだ完成度が上がってこないのではないかと思います。この状態ではやはりNHK杯での好成績を望むのは厳しいと思います。
実際のところ、このNHK杯ばかりではなく、今シーズン通して厳しい状態が続くのではないかと私は見ています。ジャンプの矯正は今シーズン全部を通して、或いは来シーズンにかけて2年がかりくらいで徹底的にやるつもりなのではないかと思います。

ではなぜ、真央はそんな苦しい思いをしてまでジャンプの矯正に取り組んでいるのでしょうか。既に現世界チャンピオンなのですから、現状でできることを確実にこなすだけでも世界のトップレベルであり、今シーズンも金メダル争いをするのは間違いないところです。しかし、彼女は決してそこに満足することなく、より高みを目指しチャレンジすることを止めません。それがフィギュアスケート界の至宝、浅田真央という人間です。昨シーズンまではバンクーバー五輪という一つの区切りがあったため、ジャンプを一から見直すという時間は無かったのですが、五輪シーズンが終わった今、今まで出来なかったことに取り組む決心をしたのだと思います。

だから今シーズンの成績については私はあまり気にするつもりはありません。
浅田真央の挑戦はまだ始まったばかりなのです。

posted by たじ |17:14 | コメント(3) |

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この記事に対するコメント一覧
Re:浅田真央の挑戦

'07~'08シーズンの安藤選手もエッジ矯正に苦しみました。
彼女の場合は真央ちゃんとは逆でフリップジャンプの踏み切りがアウトエッジに乗ってしまうものでした。

たじさんの仰るとおり、エッジの矯正は簡単なものではありませんから
ファンは過度な期待をし過ぎないようにしたいですね。

posted by min| 2010-10-20 18:30

Re:浅田真央の挑戦

今この時期しかありませんからね、苦手の克服。
この壁を乗り越えた真央ちゃんの演技を見るのが楽しみです。
きっと彼女なら乗り越えてくれるはず。

posted by 小僧| 2010-10-20 19:23

Re:浅田真央の挑戦

目先の成績は別に気にしなくてもいいとしても、故障だけは心配です。選手生活に支障を来すようなトラブルだけは起きないよう祈りたいです。ま、それさえなければソチでは素晴らしい演技がまた見られるものと思いますけれどね

posted by kaz8| 2010-10-21 02:27

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