2010年04月14日
将棋界のパンドラの箱:人間対COM.
情報処理学会が日本将棋連盟に「コンピュータ将棋」で挑戦状 社団法人情報処理学会からの挑戦状 コンピューターの将棋プログラムと女流棋士の清水市代が対戦します。 なんだかとても芝居じみたこのやり取りは正直ちょっと笑えます。 将棋に興味のない方にはどうでもいいような話題と言えばそうなのですが、この方面の人々にとってはこのニュースは結構重大だと思います。 ここで、コンピューターと将棋の関わりについて簡単にその流れを説明することにします。 1997年、チェスのコンピューター「ディープブルー」が当時のチェス世界チャンピオンのカスパロフに2勝1敗3分で勝利しました。これは史上初のことで、当時は世界的に大きな話題になったと記憶しています。 この当時、将棋のコンピューターソフトの実力は一番強いソフトでもアマ初段あるかどうかというレベルでしたが、「いずれは将棋でもプロのトップに勝てる日が来るのでは」ということを暗示させる出来事でした。 その後将棋ソフトの棋力向上はめざましく、数年でアマチュアの高段者レベルまで達し、アマ強豪を度々倒すソフトも登場してきました。こうなるとプロ棋士とコンピューターとの公式な対決を望む声も大きくなってきましたが、2005年、日本将棋連盟は棋士に対して「無断でのコンピューターとの対局」を禁止しました。 コンピューター側からするとこれは残念な決定です。なんだかコンピューターに負けることを恐れてプロ側が逃げているような印象を受けます。もちろんそういう側面はあるのですが、将棋連盟にはもう一つの思惑がありました。それは「人間対コンピューター」の対決をイベント化して収益に結びつけたい、ということです。 その後一度だけコンピューターとプロ棋士との対局が実施されました。2007年、渡辺明竜王とコンピューターソフト「ボナンザ」との対戦です。渡辺明は「竜王」という「名人」に並ぶタイトルを持つトップ棋士で、またコンピューター将棋にも明るいこともあり、この段階では両陣営とも渡辺竜王の圧勝を予想していましたが、実際に対局が行われると大熱戦、渡辺竜王が辛くも勝利しました。まさかコンピューターがトッププロをここまで苦しめるとは、と多くのことが驚き、コンピューターがトッププロに勝つのも時間の問題と思われるようななりました。 そして今回の企画。清水市代は女流棋界に君臨する第一人者ですが、その実力はアマトップレベルや下位のプロ棋士よりやや弱いというレベルです。正直、2007年の渡辺竜王に善戦した時から3年経ってるわけで、コンピューターは更に強くなり、清水市代では歯が立たないのではないかと思います。 もし仮にコンピューターが清水に勝てば半年から1年ごとに対戦相手をランクアップして、最終的には名人・竜王というトップ棋士と対戦する予定だといいます。もしコンピューターが順調に勝ち進めば2~3年でトップ棋士まで辿り着くのではないでしょうか。 ある意味今回の清水市代は時間稼ぎのための捨て石と言えるかもしれません。それを知っててこの役を引き受けたのも清水市代のプライドでしょう。あと、現女流名人の里見香奈(18歳の天才美少女棋士:将棋界内部比)に傷を付けたくないという配慮があったのかもしれません。 2005年に封印された「人間対コンピューター」というパンドラの箱が今年ついに開けられることとなりました。 その底に「将棋というゲームの将来への希望」は入っているのでしょうか。 注目です。
posted by たじ |12:37 | コメント(0) |
スポンサーリンク
スポンサーリンク