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2010年03月04日

バンクーバー五輪女子フィギュアのこと(4)

事前の格付けや場の空気というものが点数に影響を与える、それが採点競技の現実だと思います。今回実は採点に大きく影響するファクターがありました。カナダ代表ジョアニー・ロシェットの母親がショートプログラム2日前に急死したのです。娘の応援にバンクーバーに駆けつけた母親の急死。あまりにもショックな出来事であり、ロシェットは大会を棄権するのではないかと心配されました。しかし、気丈にも彼女は出場することを選択しました。
憔悴しきったロシェットはショートプログラムを滑り終えたと同時にリンク上で涙が溢れてきました。二日後のフリーの演技のあと彼女は天国の母に向けてキスをしました。私もその姿に号泣してしまいましたし、多くのスケートファンが同じように泣いたことでしょう。
ロシェットは地元カナダ代表であり、昨年世界選手権で銀メダルを取るという実力者ですから、元々有力なメダル候補でした。しかし、母の急死という不幸な事件があってなお一層ロシェットを後押しする声援が大きくなり、ロシェットの演技の時は何か特別な雰囲気になりました。心情的にも深い悲しみを乗り越えて良い演技を見せたロシェットにメダルを取ってほしいと思うのは人間として全く自然な事です。そしてジャッジも人間ですから、やはり「ロシェットにメダルを取らせたい」という場の空気を読んだ採点になってしまいました。

ショートプログラムでロシェットの71.36点という高得点に対して、おそらくロシェットと銅メダル争いをすると予想されていた安藤美姫やアメリカのレイチェル・フラット、長洲未来らライバルの点数は63~64点程度に抑えられました。さらにフリーではロシェットの前に滑った安藤とフラットはかなり厳しい採点でした。フラットのフリーは117.85点でフリーだけの順位は8位、安藤は124.10点で同じく6位。ロシェットが滑る前なのでこの二人に対してはあまり高い点数をつけるわけにはいかなかったようです。そしてロシェットが小さなミスはありましたが見事に滑りきり、ほぼ銅メダルを確実にしました。残るは最終滑走者長洲未来。未来は安藤やフラットよりもほんの少しだけ得をしました。すでにロシェットは滑り終わっているのだから、ジャッジも未来に対してはそんなに低く抑えなくても、ロシェットを超えない範囲で良い点数を付けることができたのです。結果は長洲未来はショートの6位から二つ順位を上げて最終4位となりました。
私にはロシェットもフラットも安藤も未来も、さらにはレピスト(フィンランド)も鈴木明子もみなよい演技をしたように思います。本当はハイレベルで甲乙付けがたい大接戦の銅メダル争いにになるはずでした。しかし、大会直前でのロシェットの母の急死というファクターは採点競技にはあまりにもインパクトが強すぎたと言うべきでしょう・・・銅メダルは大差でロシェットが獲得することになりました。

長々と書いてきましたが、これがフィギュアスケートの現実です。事前の格付けで点数が付いたり、その場の空気で点数が付いたりしても、それだけでは不正なジャッジとはいえません。いわゆる暗黙の了解というやつでしょうか。これではもはやスポーツとは言えないのではないか。そういわれても仕方のない部分はあると思います。でも、私はフィギュアスケートが大好きなのです。競技ではなくてショーを見れば良いではないかと言われるかもしれませんが、技術の向上は競技があってのものだと思いますし、ショーにはない魅力が競技にはあるのです。例えば競技ならではの緊張感。張りつめた、凛とした空気の中で最高レベルの演技を競う。ショースケートは観客を楽しませるものだと思いますが、競技スケートは観客の心を揺さぶる、そんな感じでしょうか。だからこれからもずっとフィギュアスケートを見ていきたいし、心躍る、ワクワクする、感動する、涙する、そんなフィギュアスケートであってほしいと思っています。今回のバンクーバー五輪は男女ともに今後のフィギュアスケートあり方を考えさせられるものとなりました。ルールは変わっていくものです。そのルールが今よりももっとフィギュアスケートを素晴らしいものにしてくれることを願って止みません。(了)

posted by たじ |08:19 | コメント(1) |

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この記事に対するコメント一覧
Re:バンクーバー五輪女子フィギュアのこと(4)

久しぶりにコメントをさせていただきます。
スケートに関する記事、共感いたします。
今回のオリンピックは、選手は素晴らしい演技をしたのにも関わらず、採点においてあまりにも露骨に出来レースを証明するような結果になってしまい、残念に思っていました。フラット選手、安藤選手、すごくよかったと思ったのですが、上位選手とのあまりの点差に心が痛みました。
ただ、ファンとしては、スケートを見るのが苦しいという気持ちにもなりつつも、やはり良い方向に向かっていいと願うことしかできないと考えると、これからの好きであり続けたいと記事を読み改めて思いました。ありがとうございました!
ちなみに私は浅田選手のファンです(*^_^*)

posted by 将子| 2010-03-06 01:59

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