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2017年10月20日

『みかづき』  森 絵都

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本屋大賞 2017の 第2位です。
森絵都は直木賞受賞作の 「風に舞うあがるビニールシート」 を読んで以来、8年ぶりです。

「大島さん。私、学校教育が太陽だとしたら、塾は月のような存在になると思うんです。太陽の光を十分に吸収できない子どもたちを、暗がりの中で静かに照らす月。今はまだ儚げな三日月にすぎないけれど、かならず、満ちていきますわ」 (25頁)

かつて 千葉県内の小学校の用務員室で、授業についていけない子供たちに勉強を教えていた用務員・大島吾郎の一代記であり、彼の妻や義母、娘、孫たち、家族4世代の物語でもあります。
昭和30年代から現代までの千葉県内の学習塾業界を舞台に、大島吾郎とその家族の物語が展開されるのですが、当然ながら多くの苦労や挫折、栄枯盛衰があります。家族は 皆それぞれに個性的で、熱い情熱を持っており、それぞれが教育に関係した仕事をしているのですが、それぞれの立場や性格により 教育に対する考え方や情熱、関わり方が異なるのは当然。それぞれの物語に 戦後間もなくからの教育行政のあり方、文部省と学習塾の対立、業界内の足の引っ張り合い、社会情勢などが 上手く絡められ、これが滅法面白い。50年ほどの歴史を1冊に詰め込んでいるので、時には結構な期間を端折った部分もありますが、そのきっぱりとした思いきりも気持ち良かったです。

「常に何かが欠けている三日月。教育も自分と同様、そのようなものであるのかもしれない。欠けている自覚があればこそ、人は満ちよう、満ちようと研鑽を積むのかもしれない、と」 (464頁)

結構厚い本なのですが、本当に一気に読み終えました。
面白さでは 本屋大賞第1位の 「蜜蜂と遠雷」 にも負けず劣らずだと思います。


posted by aozora |23:23 | 本の話 | コメント(0) | トラックバック(0)

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