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2017年09月08日

『NO.6 #1~9、beyond 』 あさの あつこ

 先日、あさのあつこの 『ミヤマ物語』 を読んだ後で この 『№6』 の存在を知り、面白いかどうか判らないので、とりあえず #1を古本屋で買って読み始めたのですが、読みだしたら止まらない、ハマりました。#8までは古本屋で買いましたが、その後は探し歩くのももどかしく、#9と beyondは いつもの紀伊国屋書店で新刊を購入しました。
 児童文学と大人向けの小説の中間、ヤングアダルト向けのライトノベルといったところでしょうか。本編だけで9巻ありますが、1冊1冊は薄くてすぐに読めるので、マンガのコミックを読んでいるような感覚です。中村文則の 『掏摸』、『王国』 の次に読んだので、余計に軽く感じた部分はあるかもしれません。

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 この作品は 近未来を舞台とした SF&ファンタジー&サバイバル小説です。
  (近未来と言っても 設定は2017年なのですが・・・・。)

 舞台は都市国家 「№6」。
 世界は大きな戦争により破壊され荒れ果て、人間が生活できる限られた僅かな土地に建設されたのが都市国家 №1から №6なのですが、「№6」 はその中でも最後に建設され、全ての生活環境がきちんと管理され、理想的な聖都市と呼ばれます。しかし、実態は 高い外壁で守られた厳しい管理社会、格差社会で、情報統制が徹底され、息が詰まるような社会です。また、外壁の内と外では更に大きな 天国と地獄のような格差があり、外壁の外は日々の生活もままならないような状況です。

 主人公は 紫苑(しおん) とネズミという2人の少年です。
 紫苑の12歳の誕生日に、暴力的な台風の中で治安局に追われて傷ついたネズミと呼ばれる同い年の少年を助けるところから物語はスタートしますが、本格的にストーリーが展開するのは4年後、2人が再開するところからです。「№6」 から 「凶悪犯罪者」 と呼ばれる2人が、外壁の外で生活しながら 「№6」 の隠された裏側、欺瞞を暴き、崩壊させるまでが本編。 Beyondでは その後日譚が語られます。

 紫苑とネズミは 光と影。
 作者は当初、「№6」 に象徴される国家というものを描きたかったそうですが、すぐに2人の少年に魅せられ、2人とその仲間の活躍、戦いが主になったそうです。
 全く違う世界で生活してきた異質な2人が、お互いを知る中でお互いに惹かれ合い認め合う存在となっていき、力を合わせて 「№6」 に立ち向かいます。信頼、友情、勇気、愛、言葉に書いてしまえば陳腐ですが、純粋な少年の成長物語にはやはり心惹かれるものがあります。
 詳しいストーリーは書きませんが、単純に面白いです。
 SF小説を書いてもやはり、あさのあつこは あさのあつこでした。


 自分たちの意見に合わない意見や情報は無視し、都合の悪い情報は出さない。
 こうした姿勢は 右も左も、日本もアメリカも変わりません。中国やロシアはもっと徹底しているのでしょう。
 国家やマスコミによる情報統制や情報操作は怖いですが、もっと怖いのは 情報統制や情報操作をされている事に気付かないこと。また、自ら自分に都合の良い、自分の意見を肯定してくれて 気持ちの良い情報にしか接しようとしないこと。
 この小説でも 「知らなかったこと」 や 「知ろうとしなかったこと」 を恥じる場面が度々登場しますが、自分で情報を集め、選別し、自分で考え、判断し、自分の言葉で自分の想いや意見を表現することを止めてしまうと、知らず知らずのうちに自分の感情まで誰かに操作、支配されるのではないかという恐怖を感じます。


 ネズミは 自分が飼っている子ネズミに名前を付けていませんでした。
 「名前はこの世で一番短い呪(しゅ)」 (陰陽師/夢枕獏著) と言われますが、名前を付けた途端に自分にとって特別な存在に変わってしまい、その為に危険に晒される事が怖かったのかもしれません。
 ネズミが本名を最後まで明かさなかったのも、紫苑に災厄を及ぼさないようにしたい、そうした想いからなのかもしれませんが、紫苑にとっては 「ネズミ」 が既に名前ですから、意味は無い気がします。


 2003年10月に #1が発売され、2011年6月に 最終巻の #9が発売されて完結しました。完結してすぐにマンガ化、アニメ化もされているそうですが、北海道では地上波の放送は無かったようですし、近年はテレビのドラマやアニメはあまり見ないので、その存在も知りませんでした。
 まぁ、特に観たいとも思いませんが。


 巷ではBL小説とも言われているそうなのですが、僕はBL(ボーイズラブ)とは全く感じませんでした。
 BLと呼ぶ人は どのシーンを読んでBLだと思うのでしょう? 

posted by aozora |23:23 | 本の話 | コメント(0) | トラックバック(0)

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