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2017年06月13日

『黙示録 Apocalypse』  池上永一

CVS仲間の野風さんから お借りしました。
作者は 「テンペスト」 で有名な池上永一ですが、彼の作品は今回 初めて読みました。
漫画家の池上遼一とは一字違いですが、出身地も年齢も異なっており、何も関係は無いようです。

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タイトルは 「黙示録」。
黙示録というと 「ヨハネの黙示録」 や 「地獄の黙示録」 などがイメージされ、終末ものなのかと思いましたが、全く違いました。
黙示録は、ギリシャ語では 「アポカリュプシス」 といい、「ベールを外す」 とか 「覆いを外す」 といった意味だそうです。この小説では、主人公・蘇了泉の一生を描く中で、長年隠されていた 「月しろ」 のベールが取り除かれ、その謎が明らかにされるのですが、そういう意味での このタイトルなのでしょう。 

この本の商品説明には こうあります。
18世紀前半の琉球王国。数奇な運命の下に生まれた少年・蘇了泉は、病身の母のため、立身出世を目指して舞踊の頂点を極めようとするが…。天才の 「天国」 と 「地獄」 を描く一大叙事詩。

主人公の蘇了泉は最下層出身のダーティヒーローで、自分が生き残る為にはどんな卑劣な事でも平気でやってしまいます。時には不快に感じる場面もあります。
その彼が、一度は高みに上りながら、自らの慢心により底辺まで叩き落され、更にそこから這い上がり、やがて伝説に昇華していく物語は まさにスペクタクル、一大叙事詩でした。

登場人物の中で、蔡温 (1682年~1762年)、清の徐葆光 (1671年~1723年)、組踊の祖・玉城朝薫 (1684年~1734年)などは実在の人物です。その頃の琉球を舞台に、史実も含めながら、琉球舞踊をテーマにした壮大なドラマが描かれます。
江戸幕府や島津藩と 清朝との間で 微妙なバランスを取りながら生き残りを図る琉球王国。その為の駒として使われる 舞踊家、楽童子たち。それぞれのキャラクターが、それぞれの思惑で、それぞれに波乱万丈な生涯を送るのですが、それもまた丁寧に描かれていて なかなかに面白く、作品に厚みを与えています。

かなりボリュームのある作品で、前半と後半の印象は ずいぶんと異なるものでした。
中には 何人かとんでもないキャラクターがおり、それはさすがに行き過ぎではないかと感じる部分もありましたが、全編を通して読みごたえがあり、十分に堪能させていただきました。

生き生きとした描写により 次々と映像が浮かんできます。
ただ、この作品のポイントは 「舞踊」 なのですが、琉球舞踊だけでなく 能や 歌舞伎も重要な位置にあり、その舞踊のシーンを映像化するのは至難の業。
そこが上手く表現出来ないと この作品の良さが伝わらない訳で、現実的には無理でしょうね。


posted by aozora |23:23 | 本の話 | コメント(1) | トラックバック(0)

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この記事に対するコメント一覧
Re:『黙示録 Apocalypse』  池上永一

最初の100ページ位までは読み辛かったが、だんだん慣れてきてその後は一気に読みました。
Y田さんはかなり苦戦したようです。
「テンペスト」は私的にはもっと面白かったです。オススメします!

「忍びの国」の件で夜電話します。ニンニン!

posted by 野 風| 2017-06-14 13:08

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