2009年05月13日
選手の根っことクラブの発展
このところ雑誌などの記事を読んでいろいろ感じたことがありました。 何を書きたいのか考えがまとまらないのですが、とりあえず感想を並べてみます。 ひとつは、(大伍が「J2の星」というコーナーでとりあげられているのが目当てで買った)サッカーai6月号に載っていた柏の菅沼実・石川直樹両選手の「同級生対談」でした。 智樹と同じ年で柏ユース出身のこの2人。 特に菅沼実くんは高校2年生からトップに帯同してリーグ戦にも出ていて、ユースのころ目立っていた選手でした。コンサとの絡みで言えば、彼が愛媛にレンタル移籍していたときに「コンサとの試合で大活躍した嫌な選手」としての印象が強いですけどねw ところが菅沼くんは、トップに昇格してプロ選手になった1年目、最初こそスタメンで出てあっという間にA契約になったものの、その後は全く試合に出られなくなったそうです。
プロ1年目の年、菅沼と石川は、サテライトリーグでも練習試合でもメンバーにも入れず、他の選手が練習試合をしている横で別メニューをやっている状態で。そのうえコーチからは「まだ若いんだから次がある。やめるなら今だ。」と言われる始末だったそうで。対談のテーマは、そういった苦しい時期を経て、菅沼はブラジルへ行ったり愛媛に行ったりし、石川は柏に残って、それぞれの道を切り開き現在は2人とも柏の主力選手としてプレーしているという立身出世(?)物語だったのですけれど。
私がこの中で印象に残ったのは、プロ1年目の終わりに菅沼と石川が「将来レイソルを背負うのは僕たちだ。だから絶対に帰ってくる。」と誓い合って泣いたというくだりでした。
「将来のレイソルを背負うのは僕たちだ」
その自負というか、愛着というか、そういう気持ちを根っこに持っている選手で構成されるチームっていいなあ・・と羨ましく思いました。
と同時に、この対談を愛媛サポの目には触れさせたくないような気の毒な気持ちにもなりました。だってこのストーリーでは、菅沼にとって愛媛でのプレーはあくまでも柏の選手として成長するための過程に過ぎないという扱いなんですもの。愛媛所属の選手として愛して応援していただろうサポとしては、分かっちゃいても切ないじゃないですか。
柏サポ的目線も、愛媛サポ的目線も、どちらも我が身に置き換えて感情移入できるだけになんとも複雑な思いでした。
さらに、「将来レイソルを背負って立つ選手になる」との希望を抱いていただろうにそれがかなわなかった柴田くん(この2人と同期ですね)や堀田くんの心情まで想像して、胸が締め付けられたりして。(←これは余計なお世話?)
そういうナイーブな心境でいたものですから、水戸に関するこの記事→ 水戸、強化費8000万円チームの奮闘 貧乏クラブの好調を支えるもの も、本来のテーマとは違う部分で心に残りました。
記事の要旨は、理想と野心あふれる木山監督が率い、水戸で活躍することで選手として大きく羽ばたく希望に燃える選手たちが、魅力的なチームを作り快進撃の原動力となっている・・ということなのですが、水戸の成功例(?)を伝えている反面、その裏側には「成長して水戸を出て行く選手たち」が前提となっていることの切なさを感じてしまったのです。
水戸に移籍したコータのインタビューでも、コータは若い選手たちに「水戸にとどまっている選手ではいるな」(←正確な言葉は違ったかも)と話していると言っていました。水戸でがんばって試合に出て、活躍して。コータはその「出て行く先」については「たとえば代表とか、」と話していて、あからさまに他チームへの移籍を指さないような配慮はしていましたけれども。
水戸の予算規模からするとそれはやむを得ない話で、それがいやならクラブの規模自体を大きくするしかないのだから当たり前の話ではあるのですけどね。
でもサポの立場からすると「こういう予算規模のクラブだから応援しよう」と選ぶわけじゃなし、好きになったクラブがたまたまそういうクラブだったという人が多いでしょうから、わかっちゃいても悲しいものは悲しいもの。
ま、そうは言いつつ私も、鶴ちゃんにはいずれ、もっと好待遇と注目が受けられる他チームへ請われて移籍するような活躍をして欲しいと願っているわけですけれども。
そして、今週号のサッカーマガジンに載っていた「札幌がコロンビアに目をつけたワケ」という斉藤宏則さんの記事も考えさせられるものでした。ダニルソンの獲得を例にしてHFCのクラブ事情を書いたものです。
HFCがブラジル以外の国の選手に着目するようになったのは、ブラジルの経済事情でブラジル人選手の獲得費用が高騰していることと、相対的に資金がない札幌が資金力のある他クラブと伍していくための道は他が未開拓な分野への進出であるというポリシーの2つの理由からだと記事は結論づけていました。
他のクラブが目をつけていない埋もれた素材の発掘という方針は、すでに国内での新人獲得においてHFCが実行していますもんね。その海外版なんだなあと納得しました。そして「お金がないなら知恵を絞る。(労力とか誠意とかも)」を実践している三上強化部長ほかスタッフの努力に、改めて敬意を表したい思いになりました。
でも、その後しばらくしてふと思ったのです。
こうやって「新しい努力」をするにも、最低限の初期費用はかかります。再々例に出して失礼ですが、たとえば水戸とかの予算規模であれば、外国人選手獲得のためにコロンビアに何度か飛んで選手を見たり交渉したりする余裕もないかもしれません。
そう考えると、コンサの歩んできた道は、まだまだ始まったばかりのこれからのチームではあるものの、それなりの積み重ねもしてきてもいるんだなあと。
身の丈を考えない多額の費用をかけて外国人選手を獲得し、多くの失敗も重ね、巨額の赤字を出したけれど、それでも初期の段階でそれだけ赤字を出せるほどの出資をしてくれた人たち(会社や自治体や団体や個人)がいて、それを食いつぶしてもさらに資金投入する人たち(サポ含む)がいて。
それがあって今がある。
けっこう恵まれた立場からのスタートだったんだと思いました。
「自分たちが将来のコンサを担う」と思ってくれているだろうユースの選手やユース出身の選手がたくさんいる今。
下部組織をクラブの宝として大切にできる環境にある今。
お金以外にも提供できる材料をもって好素材の発掘に力を注げる環境にある今。
コンサで花開いた外国人選手をみすみす不利な条件で手放さなくてもすむような、いろんな知恵を蓄積しつつある今。
「上を見たらきりない。下を見てもきりない。」とは、昔子供のころに祖母がよく言っていた言葉でしたが、コンサの立ち位置もそんな感じだなあと思い、ささやかな幸せを実感しています。
でももちろん、だからこのままでいいってことじゃないですからね。
えびちゃんが言うように、10年後はJ1で優勝するチームになっているように、チームやクラブと一緒に歩んでいきたいと思います。
posted by あきっく |09:09 | コンサ周辺のいろいろ | コメント(4) | トラックバック(0)
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この記事に対するコメント一覧
Re:選手の根っことクラブの発展
アルシンド(笑)なんか、一番高くついた買い物だったでしょうね。
posted by フロ固定 | 2009-05-13 10:33
Re:選手の根っことクラブの発展
つい最近、何かの拍子に
サッカーって、ひとに生きがいを与えるものなんだなぁ、とふと思ったんですよね(^^ゞ
まぁ、他のスポーツなどもそうなり得ると思うんですけど。
菅沼くんたちのエピソードはやはり、切ないものがあったりもしますけど・・・
将来チームを背負って立つ選手になる!って気持ちにはやっぱり、グッと来ますよね♪
http://www.consadole-sapporo.jp/teamdata/player2009/24yokono.html
↑今年のプロフィールでただひとりだけ、そうゆったニュアンスのことを書いてる純貴くんの心意気にもやっぱり、グッと来ます♪♪
そして、ほんとに
>10年後はJ1で優勝するチーム
をめざして、今のツラさや苦しさを乗り越えてってもらいたいなぁ、と☆
みんなで焦らず、コツコツがんばってこ~ぅ!!な感じです(笑)
posted by はりぃ| 2009-05-13 12:59
帰属意識と、選手/クラブの生きるコスト
このために、こないだのやり取りがあったのか、と思いました。いや、一本の芯で通ってますよ。典型的ゲマインシャフトとゲゼルシャフトのせめぎ合いです。こう言っている本人がほとんど忘れたんですが…。
結論から言うと、どんなに頑張っても30前後で引退する職業である以上、「じゃぁ今の処遇を無理強いできる?」となるとまぁちょっとねぇ、と口がごにょごにょしちゃうサポが(うちに限らず)多いと思うんですよ。もっと厄介なのは無形の財産、例えば「オシムがほしいって言っているんだけど」とかだとグラグラするのが普通だし。直感だけど一般化した今現在のJリーグの経営って、選手の頑張りに依存しすぎるきらいはあるとおもう。
ただ、北海道って帰属意識が沖縄の次に強いんですよね。失業率とか、そういう外的要因含めて就職の傾向を見ると、明らかにそうとしか説明できない。だからこのエントリの地下水脈レベルで、あきっくさんの感情は僕が持ち得ないけど、よくわかる。
そういう個々の善意が、さすがにガンバ、ジェフ、サンフという化け物ユースは別だけど、移籍金商売は難しくなったその上で、金銭と違った形でサポが潤うユースになった、これは間違いない。
あと、逆にこういう例も成り立つと思うのです。
「清水出身の野々村さん、北海道をキャリア最後のクラブにして、ましてやめた後東京一本でなくて根城を築いてくれて、ありがとう」
posted by さいとー@横浜| 2009-05-14 00:00
Re:選手の根っことクラブの発展
>フロ固定さん
私はアルシンドの時代はリアルでは知らないんですけどね。
でもあれは「コンサ初期の無駄遣い」の象徴的な出来事ですよね。
実はそれ以後のあれやこれやもっと無駄なことがあったのではないか・・というのはほじくらないことにしますw
>はりぃさん
もしコンサとサッカーに出会わなければ、私は今ごろどうしていただろう?と思うことがあります。
さぞや無味乾燥で平板な毎日だったのではないかと。穏やかと評する人もいるかもしれませんがw
コンサが大好き!コンサのためにがんばる!って思ってくれている選手は多いと思いますが、中でも純貴はそれを全身で表してくれているところが何とも愛しくて。
そう言われちゃうとこっちもメロメロになってしまいますよね。
純貴の夢であるコンサでJ1優勝!
その日を楽しみにするのが、私にとっても生き甲斐になります。
>さいとー@横浜さん
前にも話したことがあるかもしれませんが、選手とチームにかける思いは、私の中で以前と変わってきた部分があります。
昔は、チームの構想外じゃないのに移籍してしまう選手には「捨てられた」と恨めしい思いだけが募ったりしました。
でも今は、選手ひとりひとりに対する思い入れが深くなったせいか、現状のコンサでは収まりきれなくなってより広い世界に羽ばたいていく選手がいたら、寂しいながらも喜ばしいような思いを感じる部分もあります。注意深い方ならお気づきになったかもしれませんが、実は過去のエントリでも、一生涯コンサの選手でいることを前提としない表現をしている選手もいます。
その羽ばたく先はできれば海外のチームであって欲しいと思いますけれども。
ノノさんとか健作とか、北海道出身ではないにもかかわらず、ふとした縁から深い絆を築いてくれて、ここを終の棲家のような活動をしてくれている人には、ほんと感謝以外の言葉はありません。
愛してくれてありがとう。という気持ちです。
堀田くんにしろ、優也にしろ、カズやヤスくんにしろ。
縁あってコンサに所属してくれた選手はすっかり「うち」のエリア内にある存在ですが、一方で菅原康太くんとか田中康平とか、高校生時代から知っている選手は「北海道出身だから」と勝手に身内意識でくくってしまったりして。
まさに「お前のものは俺のもの。俺のものは俺のもの。」というジャイアン状態ですなw
posted by あきっく| 2009-05-14 01:13